ウワサ
(昨日はいろんなことがあったな ... 。)
父の過去やアスカとの約束。ソラは私の誕生日を祝うっていってくれたし。
(そういえば ... )
この村では、誕生日を祝われた者は日々の感謝の意をこめて家族や友人にプレゼントをするしきたりがある。
(しばらく会えなくなるだろうから、何か特別なものをあげたいけど ... 。)
しかし、フウの頭の中では、他のことがずっと駆け巡っていた。
(父様の過去の事件に関わっていた少女って ... ?もし、自分も同じような目に合ったら ... ?)
アスカを完全に信用したわけではない。
もしかしたらその少女はアスカかもしれない。
フウは今さらながらに、アスカが何者なのかを聞こうとしなかったことを後悔していた。
( ... でも、自分で決めたことなんだし後はなんとかやってみよう!)
それよりも、プレゼント ... と頭を振ったとき、誰かの話し声が聞こえてきた。
父が帰ってきたのだ。
(あれ、この声って ... )
その時、リビングに父と一人の男が入ってきた。
(あぁ、やっぱり。)
「こんにちは、ユウヒさん。」
その男、ユウヒは私を見ると、
「お邪魔しますよ、フウ殿。」
と言って笑った。
(この人、何考えてるのか分かりにくくて苦手なんだよな ... 。)
と、フウは思わずため息をついた。
ユウヒは、父に一番忠実な側近であり、親友だ。
彼の実家もまた、代々、村長に仕えていた。
ユウヒの一族の者は大体、「火」の力を持っていて、ユウヒもそのうちの一人である。
時々、ユウヒはこの家を訪問する。
村長の側近としてなのか、はたまた親友としてなのか。
「この前の議題についてなのですが ... 」
と、ユウヒは丁寧な言葉使いで父と話始めた。
(仕事の話しっぽいし、プレゼント考えなきゃ ... )
と、フウは部屋に戻った。
(そろそろ、ユウヒさんも帰ったかな)
と、覗いてみるとちょうど帰ろうとしているユウヒと出くわした。
「フウ殿。これからどこかへ行かれるのですか?」
「いや、別に。」
「そうですか。」
と、ユウヒは言って「では」、と立ち去ろうとしたとき、何かを思い出したようにピタリと動きを止めた。
そして、
「そういえば、ここ最近、精霊が行方不明になる事件が何件かおきているそうです。まるで神隠しのように ...。フウ殿も気を付けてください。」
と言って立ち去った。
(神隠し ... ?)
フウの頭に一瞬、消息不明の父の親友のことがよぎったが、
(さすがに違うよね ... ?もう何年も前のことだし。)
と、気に止めなかった。
このとき、フウは、この事件が後に大事件へと発展していくことは知る由もなかった。
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ここは、ソラの部屋。
部屋の中央には奇妙なマークがかかれていて、ソラはそこに立っていた。
足元には火のついた一枚のメモ。
それには、「大火事、計画、誕生日、力」と書かれていた。
「私もそろそろ動き出さないとね ... 。」