決意
「私は ... !」
フウはそれでも行きたい、と言いかけて、やめた。
人間の世界に行って後悔することはないか。
もしひどい目にあったら、父はどう思うだろう。
ソラは悲しむかもしれない。
考えているうちに、不安がフウの心の中で膨らんでいった。
(行くのは、やめようかな ... 。)
そう思った時、
「さっきの話はあくまでソウの体験であって、お前が絶対にそうなるというわけではないよ。」
と祖母が言った。
「もしかしたら、お前はソウとはまったく違う体験をするかもしれない。そのこともふまえてよく考えるんだよ。」
それを聞いて、フウの心の中にかすかな希望があらわれた。
(もし人間に危害を加えられなかったら、人間は安全だって証明できるんじゃ ... !)
その希望は不安をいつのまにか消し去っていた。
(そうだよ。危険な目に会いそうになっても"力"を強化して強くなればいいんだ!)
ここで言う「力」とは、非科学的な力のことを指す。
「力」には二種類あり、精霊が生まれつきもっている「精霊力」と、「精霊力」を利用して元々「力」を持っていない生物でも使えるようにした「魔力」があり、父は「魔力」は精霊を苦しめると信じているため、それを持つ人間を特に敵視している。
また、「精霊力」を使っていろんなことをすることができ、それにはいくつかの「型」がある。
基本となる「型」は水、火、風、土、雷の五つあり、だいたいの精霊がそれらのどれかを持って生まれる。
ちなみに、フウは名前の通り、「風型」である。
しかし、たまに五つのどれでもない「型」を持つ者もおり、そういう場合、同じ「型」を持つ者が極わずかなため、「力」の内容を知らないものが多い。
ソラもそのうちの一人で、「空型」の「精霊力」を持っているらしいが、「空型」は今はソラしかいないため、本人しか内容を知らない。
「力」は使い方によって効果がまったく違う。
恵みを与えたり、身を守ることができる一方で、他者を攻撃することもできる。
特に、「魔力」は攻撃に特化しているため、人間の世界に行くためには、とりあえず防御力を上げなければならないのだ。
「おばあさま、私、人間の世界に行くよ。」
祖母はそれを聞いて少し驚いた様子だったが、苦笑して言った。
「お前ならそう言うと思ったよ。」
そして、
「お前の生き方はお前が決めればいい。」
と言った。
「うん。」
フウは覚悟を決めた顔で頷いた。
次の日、アスカと約束した場所で会った。
「アスカ、私、人間の世界に行ってみることにしたの。」
「本当に ... ?」
「うん。前から、いつか人間の世界に行ってみたいなと思ってたの。」
「そっか ... 。」
アスカは少し考え込んだ様子でしばらく黙っていたが、
「 ... いいよ。連れていってあげる。」
と言った。
「本当に?!」
フウは本当に喜んだ。
二人がはしゃいでいると、
「人間の世界に行くの?」
と、言いながらソラが近寄ってきた。
「なんでここがわかったの?!」
「知ってたから。」
「え?」
(知ってたって ... 昨日、また顔にでていたのだろうか?)
「っていうか、いつからいたの?」
「ついさっきだよ。それより、人間の世界に行くって本当?」
「うん。もう決めたの。」
「そっか ... 。いつ行くの?」
「う~ん。アスカ、いつなら行ける?」
「 ... 一週間後とかは?」
「じゃあ、そうしよう!」
フウとアスカの会話を聞いて、ソラは、
「一週間後か ... 。アスカさん、一週間後じゃなくて、八日後でもいいですか?」
と言った。
「いいけど、なんで?」
「一週間後はフウちゃんの誕生日なので ... 。せめて誕生日だけでもお祝いしたいから。」
フウはとても嬉しくなった。
「ソラ、ありがとう!」
ソラは
「ううん。」
と言って笑った。
「じゃあ、フウちゃん。八日後に黒髪の女の子を遣いに出すから、その子に付いてきてね。」
とアスカは言った。
「え、アスカは?」
「少し用があるの。ごめんね。」
「そっか。じゃあよろしくね。」
アスカはフウたちに手を振って別れた。
「フウちゃん、ついに決意したんだね。」
「うん。夢を現実にするって決めたの。」
「そっか、じゃあ私も夢を現実にするために頑張ろっかな~。」
「そういえば、ソラの夢はなに?」
「 ... ふふふ。内緒~!」
「え~!教えてよ~!」
二人は笑いながら歩き始めた。
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ここは、真っ暗な闇の中。
そこに、何者かの話し声が響いていた。
「???。準備はできているか?」
「はい。これで最後の一匹です。」
「影」に???はこたえた。
「そうか ... 。くくく ... もう少しだ、もう少しで ... 。くくく ... はっはっは!」
暗闇に「影」の笑い声が響いた。
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