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もし、精霊が人間と出会わなかったら  作者: 檸檬セレナ
出会いと旅の始まり編
4/18

父の過去と思い

途中から、主人公(語り手)がソウになっています。

「本当に!?」

 フウは驚いた。

「正確に言えば、行こうとした、っていうのが正しいんだけどね。」

 いつも、人間との関わりを禁止しているのに、まさか父が人間の世界に行こうとしていたなんて。

 何か心変わりするきっかけでもあったのだろうか。

「少し長くなるけど、静かにお聴き。」

 そう言って、祖母は父の過去を話し始めた。


「ソウ、本当に行くのか?」

「当たり前だろ!」

 ソウは親友であるコウキと喋りながら、人間の世界に行く方法を考えていた。

「バレたら、ソウは親父さんに怒られるんじゃないか?」

「だからこそ、今計画を立ててんだろ。」

 その時、二人のもとに一人の人間の少女が表れた。

 そして、少女は

「こっちの世界に来たいの?」

 と二人に尋ねた。

「そうだけど ... 。お前何者だ?それに、"こっち"って ... ?」

「私は人間。さっきの話聴いてたよ。人間の世界に行きたいんでしょ?」

「お、お前人間なのか?」

「そうだよ ... 、そんなことより人間の世界に連れていってあげようか?」

「「えっ!!」」

 初め、少女の言葉に半信半疑だったが、少女の話を聴いているうちに、二人は少女を信用することにし、

 三人で毎日会うようになった。


「じゃあ、今日なら、俺たちは人間の世界に行けるんだな?」

「そうだよ。どうする?行く?」

 少女の問いに、二人は

「「もちろん!」」

 と、間髪いれずに答えた。

「じゃあ、着いてきて。」

 と少女は言って、歩き始めた。

 二人は言われた通りに、少女の後を付いていった。

 歩き始めてしばらくたった頃、少女は突然立ち止まった。

「 ... ?」

 二人はどうしたんだろうと思いながら辺りを見回した。

 いつのまにか、森の奥まで来ていたようだ。

 日も落ちて、辺りは満月の光だけが頼りな状態になっていた。

 少女はふりかえって言った。

「着いたよ。」

「「!?」」

 二人はもう一度辺りを見回してみた。

 やはり、どう見ても森の中で人影らしきものは見あたらない。

「何もないじゃないか。」

「まだ、人間の世界には着いてないからね ... 。ここにあるのは、人間の世界に繋がる入り口だけだよ。」

「入り口?」

 辺りを見回しても、扉も穴のような抜け道も見当たらない。

 強いて言うなら、大きな木があるだけだ。

 その時、少女が小さな声でなにかを呟いた。

 すると、目の前にある木の幹に真っ黒な穴が浮かび上がった。

「この穴を通れば、人間の世界に行けるよ ... 。」

 二人はためらった。

 穴の中は真っ暗で、どこまで続いているのかがわからない。

 ここまで少女についてきたものの、本当に信用でき、安全なのかもわからない。

 しかし、ためらいよりも人間の世界への好奇心のほうが勝った。

 そして、二人は穴の中に飛び込んだ。


「まだ、続いているのか?」

「 ... 。」

 穴の中は思っていたよりもずっと広かった。

 穴に入ってから何十分も時間が経っているように感じる。

 そして、真っ暗なために、足元が見えない。

 何か、固いものが足に当たり、何度も転びそうになった。

 そうして歩き続けていると、前方にかすかな光が見えてきた。

 やっとたどり着いたのだ、と思い二人は足を早めた。


「何だ、これは ... ?」

 光の中にあったのは巨大な檻と鉄の物体だった。

 そして、檻の中には、

「おい、あれ ... !」

 たくさんの()()()()()()()()()が山積みになっていた。

 二人が驚きと恐怖で動けなくなった時、

「やっと気づいたの?」

 と、少女が笑いながら言った。

「最初からあんたたちを人間の世界に連れていく気はない。あんたたちは私たちの()()のために連れてこられたんだよ。」

 最初から、二人は少女に騙されていたのだった。

「コウキ、逃げよう ... !」

 二人が逃げようとするも、行く手を阻まれてしまった。

(どうしよう ... !)

 ソウが悩んでいると、コウキが、

「ソウ、お前は次期村長だろ!俺が囮になるから逃げろ!」

 と言った。

「でも、」

 とソウが言いかけると、コウキは

「俺の決意を無駄にしないでくれよ。」

 と言って、笑った。

「じゃあな。」

 と、コウキは少女の方へ走っていった。

「 ... っ!」

 ソウはコウキの背を見届けて、無我夢中で走り、気づけば村にたどり着いていた。


「それからしばらくして、ソウは若くして村長になり、人間との接触を禁止したんだ。コウキの消息はいまだに不明のままなんだよ。」

「そんなことが ... 。」

 きっと、父はフウに昔の自分やコウキの姿を重ね合わせてしまったのだろう。

 自分が体験したからこそ、フウがいなくなるのが怖いのだ。

「それでも、お前は人間の世界に行きたいかい?」

「私は ... !」

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