014. アンの目的
(まずは下手に動かないで、相手の様子を見ること ... 。そして、一旦距離をとる ... 。)
フウがアンを警戒心むき出しの目で睨む一方、アンは余裕そうな顔でにやにやと笑っていた。
「なにがおかしいの?」
「ワタシに勝てるとでも思ってんのかなぁ。あはは、キミ、何もわかってないんだね。今がどういう状況で、キミがどんだけ不利なのか。」
(あんなに余裕そうってことは、むこうには何か策があるのかも。 ... でも大丈夫。あれだけ特訓したんだからきっと勝てる。)
フウが一歩踏み出した瞬間、アンが一瞬でフウの目の前へ現れ、手をかざした。
(!?はやっ ... 、)
すると、突然視界が真っ暗になり、フウは地面に押さえつけられた。
(これ、精霊力じゃない ... 魔法?何も見えない。それに ... 苦しいっ!)
「ん~、どうしよっかなぁ。殺すなって言われたしなぁ~。つまんな。」
アンはそう言って、少し力を弱めた。
「それにしても、キミはアレを持ってると思ったんだけどなぁ。そろそろ解放されてもおかしくないんだけど。」
("アレ"ってなんのこと?)
「けほっ、 ... あ、あなた、さっき殺すなって"言われた"って言ってたけど、もしかして、仲間がいるの?」
「ん~?どうしよっかな~。言っちゃおっかなぁ?」
「はっきり言いなさい! ... ううっ、」
「キミ、ワタシがキミのことをいつでも殺せる状態にあるってわかっててそんな態度とってんの? ... あは、まぁいいや。ワタシは優しいからねぇ、特別に教えてあげるよ。そう、ワタシには仲間がい~っぱいいるよぉ。そして、ワタシには主がいる。ワタシはあの方のところにキミを連れていくんだ、あの方はキミの"力"を必要としているから。」
「私の精霊力を ... ?」
「ん? ... あはは、違うよぉ。 ... 別の"力"。」
そう言ってアンは、にぃっ、と笑った。
(別の力 ... ?それって何?)
その時、
「ああ、そろそろ時間だねぇ。お話はここまで!そろそろ行こっかぁ。」
「どこに?」
「言ったでしょ、キミをあの方のところに連れていくって。 ... だから、ちょっと眠っててねっ。」
そうして、フウの目の前は真っ暗になった。