009. 真犯人
「犯人はユウヒさんだ ... !」
「 ... でも、どうやって"力"を使ったの?あんな能力は聞いたことないよ。」
「それは、ユウヒさんに聞いてみないとわかんないけど ... 。」
フウたちはこのことを伝えるため、父のところへ駆け出した。
「お前たちの言い分はわかった。だが、なぜユウヒだと断言できるんだ。」
と、父は言った。
(どうしよう ... 。ソラの能力のことは言えないし ... 。)
「 ... 私が責任をとります。もし、犯人がユウヒさんじゃなかったら、"土地還り"をします。」
「「 ... !」」
"土地還り"はこの村で一番重い刑罰で、この刑を受けた精霊は"精霊としての形"、つまり体をこの地に還さなければならず、死んだも同然の状態になる。
「だから、お願いします。私たちを信じてくれませんか。」
「ソラ ... 。」
ソラの真剣な様子に、父は驚きつつ、
「 ... わかった。」
と言って、フウたちを連れてユウヒの元に向かった。
「 ... つまり、あなたは私よりもフウ殿たちを信じるということですね。」
「そういうわけではない。あくまでも私は中立な立場だ。だが、互いの意見を伝えあうことも大事だろう。」
「 ... ユウヒさんはあくまでも、自分はやってないと言いたいんですね?」
「もちろんです。」
(これじゃ、いつまでたっても真相に近づけないままだよ ... 。)
そのとき、
「あの ... 頼まれていた調査の結果が出たので、報告に来たのですが ... 。」
と言って一人の精霊が入ってきた。
「ああ ... ごくろう。結果は ... ?」
父がそう尋ねると、その精霊は緊張した様子で、恐る恐る、
「 ... その、発見された石から検出された精霊力が ... ユウヒさんのものであると判明しました ... 。」
「ユウヒ ... 、自分はやっていないと言っていなかったか?」
「それは ... 。」
「 ... どういうことか説明してもらおうか。」
父がそう言うと、
「くくく ... 。えぇそうです。私がやりました。やっと気がついたんですか。」
と言って笑い始めた。
「 ... なぜ、あんなことを?」
「なぜ、か ... 。特に理由はないです。強いて言うなら、あなたへの復讐ってところですかね、ソウ。」
「復讐?」
思いがけない言葉に思わず私は聞き返した。
「あぁ、フウ殿とソラ殿は知らないかもしれませんね。 ... 私とソウには幼いころ、とても仲の良い友人がいたんです。しかし、その友人はソウと共に人間の世界に行こうとして失敗し、行方知れずになりました。私たちは懸命に探した。しかし、ソウは村長になってから捜索を切り上げました。」
「「 ... え?」」
「あれは ... 」
「ええ、わかっています。村長が一人の精霊を探すために何十年も時間を費やすわけにはいきません。 ... でも、あなたには諦めないでほしかった。探すのを諦めるということは、あの友人を忘れるということだから。」
「 ... しかし、なぜ今になって ... 。」
「それは、本当に理由はありません。ただ、あの場所を現場にすることで、思い出してもらうためにこの事件を起こしました。」
と言って、ユウヒは牢へと連れていかれた。
父は呆然とその背中をただ、見つめていた。
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事件から数日たったある日、ソラはユウヒの元へ訪れていた。
「ユウヒさん。事件を起こした動機はあれだけじゃないですよね。」