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セイレーンが犯人の可能性は?

「結界ねえ。あくまで通さないのは攻撃魔法だけなんだろ?

 だったら、ウィッチが壁をすり抜ける魔法を使ったって可能性も……」

「無理無理! そんな魔法使えないから!」

 コボルトとしてはそんなリザードマンの推理に同調するつもりはなかったが、確認のために疑問を呈した。

「だが、使えないことの証明は不可能だろう?」

「そりゃそうだけど、ボクが攻撃魔法以外の魔法を使うところなんて、みんな見たことないでしょ?

 まあ、他の魔法が全く使えないわけじゃないけどさ。

 それでもボクを疑うのであれば、他のみんなが魔法を使えた可能性も疑うべきなんじゃない?」


 これ以上は悪魔の証明というやつか。

 ウィッチが特定の魔法を使えないということは、彼女自身や周囲の証言を信じるほかないだろう。

「待てよ……? 攻撃魔法でなくても、室外から魔王様を殺害できる奴がいるじゃねえか!」

「なんだと? 他に誰がいると言うんだ、リザード」

「セイレーンだよ、セイレーン!

 あいつの死を招く歌なら、魔王様を自害させることだって可能だったはずだぜ!」


 なるほど、死の歌に操られ魔王様が自ら魔法の刃を生み出し、自分の胸を刺したとすれば、現場の状況に矛盾はない。

 コボルトはしばし思案したあと、ロボット娘に訊ねる。

「そもそも魔王様は用がなければ誰もこの寝室に近付くなと命じられていたな……。

 近頃は小さな物音にも敏感になられているご様子だった。この寝室は防音加工がされているのではないか?」

「確かに防音加工はされていますが、換気のため扉の下にはやや隙間があり、そこから音が漏れるロボ。

 というか、そもそも外の音が全く聞こえなかったら、扉の横に取り付けられたドアベルを鳴らしても気付かないロボ」

 そのドアベルは部屋の外で紐を揺らして鐘を鳴らすタイプのものだ。室内で音が鳴っているわけではない。

「……念のため、セイレーンにアリバイを聞いておく必要はありそうだな」


 セイレーンは半人半魚であり陸では生活できない。

 そのため、中庭(――と言っても屋根もある室内だが)の大きな池に彼女は棲んでいる。

 コボルトはリザードマンともに、魔王様の寝室にロボット娘とウィッチを残して、中庭を訪れた。

 そして彼は近くに置いてあった棒で、池の水面を揺らす。それがセイレーンを呼ぶときの合図なのだ。

 それから数秒後、彼女がおっとりとした表情で水面から顔を出した。


「あらあら~、コボちゃんにリザちゃん。わたしに何か御用かしら~」

「魔王様の死についてだ。貴様ももう事件のことは知っているだろう?」

「ええ……、おかわいそうに、魔王ちゃん……」

 セイレーンは指先まですらりとした美しい右手を頬に当てながら、亡き魔王様を悼んだ。

「率直に聞くが、貴様のアリバイはあるか?

 犯行時刻は今からおよそ2、3時間前というところだ」

「アリバイも何も……。わたしはここから自力では動けないから……」

「まあ、そりゃそうだな……」

 言われてみれば、納得としか言いようがない。

 彼女は誰かに運ばれなければ移動すらままならないのだ。


「ここから寝室までじゃ、さすがに歌声も届かねえだろうしな」

 魔王様の部屋にはスピーカーの類もなかった。

 いずれにせよセイレーンの単独犯という可能性は低そうだ。

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