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状況確認

「おや……、コボルト様、リザードマン様。

 おふたりは城外で見張りをされていたのでは?」

「見張りはデュラハンとミノタウロスに任せてきた。

 それより第一発見者は貴様か、ロボ。状況を教えてくれ」


 コボルトは寝室に着くなり、魔王様の死体の傍らにいたロボット娘から現場の状況を聞き出した。

 その証言によれば、この部屋の扉は発見時まで施錠されており、密室だったことになる。

 そして、ロボット娘は魔王様の死体発見後、すぐに自身の身体に内蔵された警報を鳴らしたらしい。

 その後、それを聞きつけたハーピーとメドゥーサに事情を話し、城内のモンスターたちに魔王様の死を知らせてもらったのだという。


 コボルトが魔王様の死体に目をやると、胸に刺し傷と多量の出血の痕が確認できた。

 魔王様は大柄な男性だ。頭に牛のような角が生えていることを除けば、普通の人間と変わりないように見える。

 さらに魔王様の装束の胸元を探ると、そこから寝室の鍵が出てきた。

 その鍵の持ち手には装飾品として宝石が両側に取り付けられている。そのため鍵としては少々重く、厚みもあった。


「魔王様は寝汗をかかれるほうだったか?」

 コボルトがそう訊ねると、リザードマンとロボット娘は続けて答えた。

「確か近頃寝つきが悪いって話だろ?」

「聞いた話によれば、ウィッチ様に調合してもらった睡眠薬を常用していたロボ」

 その回答に半ば納得いかないという風に、コボルトは呟いた。

「ふむ、確かにどうも装束が湿っているような気がしたが……」

 これが寝汗だとすると、あまりにも胸元に湿り気が集中し過ぎではないだろうか。


 そんな疑問が残るが、コボルトは気を取り直して別の質問をすることにした。

「ロボは発見時から今まで、ずっとこの寝室にいたのか?」

「はい、犯人が現場に戻ってきて工作する可能性も考えられたので、ここで監視していたロボ」

「そうか。いい判断だ」

 つまり"密室の解除後に"魔王様の死体に駆け寄り、そっと胸元に鍵を忍ばせるという古典的トリックは使えなかったということだ。

 ……尤もそれはロボット娘が犯人でも共犯者でもないことが前提のうえでの話だが。


 改めてコボルトは寝室内を見回した。すると、廊下につながる扉とは別に2つの扉があることに気が付いた。

「あの扉から外に出られるわけではないのだな?」

「寝室の見取り図によれば、外に出られる扉は1つしかないはずロボ。

 左のほうにあるのは浴室の扉で、右のほうにある扉はトイレの扉ロボ」

 ロボット娘がその鋼鉄の指で扉を指し示しながら答えた。

 そして彼女が浴室の扉と説明した扉の脇には剣を持った鎧の置物があった。


 それを確認すると、コボルトは続けて訊いた。

「この城には今、何人のモンスターがいる?」

「ロボも正確には把握していないロボが――」


 狼のような姿で人型のコボルト、トカゲのような姿で同じく人型のリザードマン。

 そして、全身鋼鉄の身体だが、まるでメイド服を着てカチューシャを付けているかのような装飾がされているロボット娘。

 彼らを除けば、今この魔王城には少なくとも以下のモンスターたちが棲んでいるはずだという。


 スライム、半液体で自在に身体を変形させられる。

 ゴブリン、手先が器用で武具や道具の作製を得意とする小鬼だ。

 ゴーレム、全身が石でできている巨体の持ち主だ。

 ウィッチ、魔法を使ったり薬品の調合ができたりする。見た目は人間と変わらない。

 ドラゴン、巨大なトカゲのような姿で鋭い牙を持ち背中の翼で空を飛び回れる。

 ハーピー、半人半鳥で同じく空を飛ぶことができ鳥のような爪を持つ。

 デュラハン、自身の頭を小脇に抱えた鎧の騎士だ。

 ミノタウロス、牛のような姿で人型であり怪力自慢でもある。

 メドゥーサ、しばらく見つめた相手を石化させる能力を持つ人型の女性だ。

 セイレーン、半人半魚で呪いの歌により死を招くことができる。


 この城の見張りには決して隙はなかったはずだ。

 故に、勇者が城に入り込んだとも思えない。

 しかし、そうだとすると、このモンスターの中に犯人がいるのか……?


「妃様は今も別宅で暮らしているのだったな?」

「はいロボ。妃様にもすぐこの事件の知らせを――」

「いや、それはあとだ。その前に魔王様を殺害した犯人を見つけ出す」

「おいこら、この犬っころ! さっきから探偵気取りか? 何しきってやがる!!」

「少なくとも貴様がしきるよりはマシだ、トカゲ男。文句があるなら助手をやれ」


 もしも魔王様を殺害した犯人を取り逃がすようなことがあれば、魔王軍の威信は地に落ちるだろう。

 この事件の謎を解き明かさなければ、魔王軍に先はないのだ。

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