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事件の真相①

魔王様を殺害した犯人は誰?


1:コボルト

2:リザードマン

3:ロボット娘

4:スライム

5:ゴブリン

6:ゴーレム

7:ウィッチ

8:ドラゴン

9:ハーピー

10:デュラハン

11:ミノタウロス

12:メドゥーサ

13:セイレーン

14:魔王様(自殺・事故など)

15:妃様

16:勇者

17:それ以外




 数分後、コボルト、リザードマン、ロボット娘は居住区の一室の前に立っていた。

 寝室からここまで、お喋りなリザードマンですら口を開かなかった。

「それで? この先に一体誰がいるってんだよ、犬っころ」

「この先はメドゥーサ様の自室ロボ」

「ロボ、もし奴がドアベルを鳴らしても出てこなかったら、貴様のマスターキーでこの扉を開けてくれ」

「……かしこまりましたロボ」

「じゃあ、メドゥーサが犯人ってことかよ!?」

「余計なお喋りはなしだ。いくぞ」


 コボルトが扉の横のドアベルの紐を揺らし音を鳴らすと、やがてゆっくりと扉が開いた。

 その扉から髪の毛が蛇の形になっている艶めかしい女性が顔を出す。

「おや、何かあちきに御用でありんすか?」

「単刀直入に訊こう。貴様の事件時のアリバイについてだ」

「"事件時"とは一体いつのことでありんすか?」

 メドゥーサは慎重に言葉を選ぶように答えた。しかし、コボルトの目にはそれが逆に怪しく映る。

 まるで口を滑らせてはまずいことがあるかのようだったからだ。


「犯行推定時刻は朝の6時頃だ」

「あちきはまだ眠っていた頃でありんすね。

 ただ、アリバイがない者は他にもいると思うでありんすが?」

 メドゥーサの反論にも似た質問に、リザードマンとコボルトが応える。

「俺とコボルト、それからドラゴンは見張りをしていた時間だがな」

「付け加えるならば、城内を忙しなく動き回っていたロボにも犯行は不可能だろう」


「それで? 今は当てずっぽうに尋問して回っているところでありんすか?」

「いや、すべての手掛かりはすでにそろっている。

 まず第一に、寝室に入っていく怪しい人影を見たとの目撃証言がある。

 文字通り人型の影だ。魔王様よりずっと小柄のな」

「であれば、それはロボ娘でありましょう」

 コボルトの追及にもメドゥーサは努めて冷静であったが、ロボット娘はさらにゆさぶろうとする。


「ロボは扉越しに会話することはあっても、寝室に入ることはなかったロボ。

 室内の清掃は魔王様自身が行っていましたし、それに――」

 かねてより妃様は、魔王様の不倫を疑っていたと、ロボ娘は言った。

 そして、魔王様がこの寝室を増設することにして、その鍵を妃様にも渡そうとしなかったことで、妃様の疑惑は確信に変わったのだという。


「魔王様は、俺様たちにこの寝室には急用以外では近付くなと命じていたが……」

「それは愛人との不倫を隠すためだったというわけだな」

 例外としてロボット娘が食事の際に魔王様を呼びに来ることはあったが、それは概ね決まった時間のことである。

 不倫をするのはその時間を避けていたと考えられる。


「妃様はロボにだけは不倫疑惑について話してくれたロボ。

 誰にも漏らすなと命じられていましたが、もはやこの際、黙っているわけにはいかないロボ」

「まさかその愛人があちきであると? そんな証拠がどこにありんすか?」

「寝室からつながっている浴室で、女性もののマニキュアを発見した。これが証拠だ」

「あちきはそんなもの知らないでありんす。ウィッチあたりの持ち物では?」

 そんな言い逃れをコボルトは決して許さず、激しく追及する。


「残念ながらそれはない。ウィッチは薬品を取り扱う関係上、手に化粧品をつけることはないのだ。

 また、ロボは見ての通り、指先まで鋼鉄の身体だし、ハーピーは人間の爪をしていない。

 セイレーンは常に水中で生活している以上、化粧品などつけても洗い流されてしまうだろう。

 そして、このマニキュアは、寝室に入ったことがない妃様のものでもあり得ない。

 つまり! マニキュアを使うような女性は、貴様しかいないのだ!!」

「それだけでは、根拠としては弱いでありんすな」

 そう強がったメドゥーサの指先はわずかに震えていた。


「しかし、妥当かつ必然の推理だ。今もちょうど、その指先にマニキュアが塗られているようだが?

 私の推理がでたらめだと言うのならば、貴様が持つマニキュアを見せてもらおうか!」

 ここでもしメドゥーサが「今は持っていない」と答えたならば、おかしな話だ。

 マニキュアを持っていないのに、どうやってその爪に色を塗ったと言うのか。

 あるいは予備のマニキュアを持っているかもしれないが、それをメドゥーサが持ってきたなら、浴室で発見されたマニキュアと見比べてみればいい。

 同じ種類のものであれば、コボルトの推理が裏付けられる。いずれにせよ、この状況での誤魔化しは難しい。


「い、いや……、思い出したでありんす! 実は昨日廊下かどこかで落としてしまって……!

 きっとそのマニキュアは魔王様が拾ってくれたものでありんす!」

「くだらん言い訳はやめろ、メドゥーサ!

 貴様は先程『そんなもの知らない』と言ったのだぞ!

 第一、もし魔王様が落とし物として拾ったのならば、わざわざ浴室まで持っていくものか!

 これは事件以前に、不倫相手が浴室にいた証拠に他ならぬのだ!!」


「あ、あ、あ、ありんすぅーーー!!!」

 その咆哮とともにようやくメドゥーサは観念したらしい。頭の蛇たちまでぐったりとうなだれていた。


「つまりこいつは、魔王様に招かれて寝室に入り、魔王様を殺害したってことだな!?

 よーし、覚悟しな、メドゥーサ! 俺様が今ここで引導を渡してやるぜ!」

 気が早いリザードマンは腰に身につけた剣を今にも抜こうとしながら、メドゥーサに近付いていった。

「ま、待つでありんす……!

 確かにあちきは犯行推定時刻に魔王様の寝室にいたけど、決して殺害などしていないでありんす!」

「なんだと!? てめえ、まだ言い逃れを――」

「落ち着け、トカゲ男。私もメドゥーサを魔王様殺害の犯人だとは考えていない。

 こいつは事件の、目撃者、……そして共犯者だ」


「ど、どういうことだよ!?」

「つまり真犯人は他にいるということだ。メドゥーサに魔王様殺害の動機はない。

 それに、計画的犯行だったのなら、マニキュアを残していくという致命的なミスをしたとも思えん」

「……そこまで分かってしまうのでありんすね。

 そうでありんす、魔王様はあちきの目の前でっ……!」

 メドゥーサの目には涙が浮かんでおり、その姿はとても演技をしているようには見えなかった。

「せ、説明して欲しいロボ! 一体誰が魔王様を殺害したロボ!?」

 そこでコボルトは一呼吸置いて言った。


「魔王様殺害の犯人は、スライムだ」

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