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飛竜

「イーレットさん、結構厳しいな」

「やっぱり評判通りの人なのかもな」

イーレットは若干17にして上級魔法を早くに習得した、いわば天才だ。難関と名高い魔術師試験に一発合格し、30にして国を脅かすほど強力な魔人をも葬ったほどの実力者だ。

天才であるが、女性でありながらも童顔なので周りの人間からは舐められやすい。

しかし、一度彼女になめた態度をとると彼女はそれを許さない。なぜなら一々許していると世間に魔術師イーレットは舐めてかかっていいヤツだと思われてしまうからである。

彼女も魔術師になってこの世界に少しでも貢献したいと思い魔術師になったのだが、所々で舐められていれば魔術師としての職務を全うできないと考え、このような体裁を保っている。

彼女の得意技はバーンフレイムという技であたり一面を炎で覆いつくして完全に焼き尽くす技だ。

決して彼女のような外見からは想像できない技を持つ。また、17歳で上級魔法を習得し、今現在は32歳。

32歳ではあるが外見は20台前半といった感じで、いかにも大人になり切っていない様子だ。

17から32までの15年間で、彼女の魔法技術は格段に進歩した。メリーの使う多重魔法をも用いることが出来る。

多重魔法と言っても、メリーのような数百倍の力を常時発動という訳でもなく、数倍の力を一時的に発動するといった体裁だ。

されども多重魔法は並みの魔術師では決して使うことのできない代物だ。誰でもマネできるレベルでは決してないということは強調しておくべきだろう。

上級魔法習得後、何十年にも及ぶ日々の研鑽を積み、やがて一流の魔術師になる。その時に多重魔法を無意識的に使えるようになっている。そのような感じだ。

なので魔術師イーレットはそれをたった30歳で使いこなせるようになったのだから、まさに天才だ。

彼女はやがて魔術師だけでなく、魔術業界で働きたい、魔術師をこの手で育てたいと思うようになり、ここマキュール魔術学校の教授として働くことになった。

近年、魔術師志望の数は徐々に減少し、やがて右肩下がりのグラフに変化を遂げることになると言われている。

数十年前までは魔術師志望の数も時代の進歩と共に、右肩上がりに推移していた。

ところが近年魔王復活による魔族侵攻により、魔術師志望の数はずっと横ばい。

もう少しで魔術師の数が激減すると言われている。なぜなら右肩下がりに転じるからだ。

イーレットはその危機感を掴み、魔術業界教育部門に努めたいとの信念でここマキュール学校に勤めている。

ここマキュール魔術学校を筆頭に、レルゼンズ魔術学校、ジュサン魔術学園が共同で将来有望な魔術師志望を引き上げて、有力な魔術師を育成しようという企画がなされている。

企画には、魔術師イーレット、魔術師ガリオン、魔術師アピール、魔術師ビクトル、魔導士サイダーなどが参加している。

どれも超一流魔術師であり、世界に名だたる人物だ。彼らが企画するのだから、才能のサイクツは全国で進んでいく。

「じゃっ始めよっか」

イーレットは切り替えようと気持ちを強制的に入れ替えた。

「いきなりニコニコしだしたぞ」

「どっちが本性なんだ」

「私はこのイーレットさんだと思うわ」

学生らはイーレットの恐ろしさを再認識したみたいだ。

「突然ですが質問です。魔術師とは何でしょう」

突然イーレットは直球に質問を投げかけてきた。

「なんだ簡単じゃないか」

「俺だったらわかるぜ、これこれこれだろ」

「いいや、これこれこれだ」

「それはわかる」

「しかし明確な定義なんてあるのか?」

中々正確な定義は出てこない。

「じゃあ、メリーさん」

「へ?」

イーレットの獲物はメリーだ。はじめから狙われていた。

「私ですか?」

「はい!」

「ニコッ」

イーレットの笑みは悪魔の変顔とまで例えられるといううわさもあながち間違っていないと自覚する瞬間だった。

(なんでまた私なのよー。絶対に私に当てたいんでしょー)

「あなたの実力、分らせてもらうわ」

「受けて立つよ、せんせー」

もちろんメリーも受けて立つつもりである。

「バチバチバチ」

二人のはざまに火花のような音が疑似的に出現したようだ。実際は存在しないのだが、そちらの方が状況に適当だからだ。

「えー、魔術師ってなんでしたっけ?」

メリーは逃げることにした。質問で荒を出す可能性が高いのであれば、知らないとした方がいいと判断したのである。

「シーン......」

「よし、みんなの前で発表させて私をこの学校の一躍有名人に仕立て上げるつもりだっただろうけど残念でしたー!!・・・」

メリーはその時歓喜の時を過ごした。しかし世の中は甘くなかった。

(相手が悪かったですね。せんせー)

「すばらしい!!」

「え?」

「魔術師にはこれといった定義はないのです。普通は魔術師の定義を自分の解釈に基づき、いい加減に言うところをあなたはまあ!」

この時の彼女の心はイーレット畜生である。

(絶対私を追い込むつもりなのね、せんせー)

(でも私だって負けるつもりはないですよ)

「皆さん、イーレットの名に懸けて、メリーさんのすばらしさを証明します」

彼女は一度咳ばらいをする。

「オッホン!」

「えー、メリーさんはこのマキュール魔術学校の入学試験において、学力試験、実技試験ともすばらしい成績でした」

(これ以上言われては困る)

彼女はちょっとした魔法を行使し状況を打開しようと考えた。そのために今、魔法をかけた。

「あー、イーレット先生の授業聞きたいなー」

「早く再開してくれないかなー」

授業から逃れられるの出ればこれほどメリーの望むことはないと考えるメリー。

「ちらっ」

「えー、メリーさんは......」

イーレットはとことん追い込んでいく。彼女に妥協という文字はないのかもしれない。

「駄目だ、うんともすんともいわない。こうなったら」

「グピーーーー!!」

一匹の飛竜が校舎の前の校庭に降り立った。体長は数十メートルほどもある大型だ。

「なんだなんだ」

「まさか飛竜じゃないのか?」

「えっあんな魔物がなぜここに」

学生らは窓を開けて飛竜を観察した。

「ガラッ」

「ほんとだ」

「イーレットさん、飛竜ですよ!」

「お待ちください!」

一人の学生が手を挙げた。


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