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探偵団の存在意義

「メリー。イーレットのこと何かつかめた?」

ネヨはイーレットの不可解な様相に不安の念を募らせる。

「何か隠していることはわかったんだけど細かくは......」

ネヨとメリーは既にイーレットの企てに気づいていた。二人は対抗するため事前に話し合っていたのだった。

「私もわからなかった」

結局イーレットの企みを明らかにすることはできずに次の機会を待つことになった。

「でもネヨちゃん。いつからイーレットさんの怪しい行動に気づいていたの?」

「私たちに特殊な追跡魔法を施していた時から」

ネヨは真っ先にイーレットの行動を疑った。追跡魔法は学生に施すものではない。そこで彼女の企みは常識をはるかに超えていることを悟った。

「よく気づいたね。何も気づかなかった」

しかしメリーは一切気づかなかった。

「メリーは案外足元は見ないタイプなの?」

「自覚はないけど」

「そう」

「これからも彼女の追跡を続けようと考える。ついてきて」

ネヨは探偵団としての責務を果たすべくメリーと共に問題解決に取り組む。

「もちろん!」

「ありがとう」

ネヨはメリーが意欲的に受け入れてくれてテンションが上がる。

「昔から脈々と受け継がれていた探偵団の秘密をあなたに共有する」

そこでネヨはメリーを信じて自分の秘密を伝えることに決めた。

「ほんとに!?」

メリーは初めてネヨから秘密を教えてくれて嬉しかったようだ。

「メリーは私たちの仲間。守るべき友達。そしてこれからは戦友となる」

「そこまで大げさに考えなくても」

「私が決めた」

ネヨは他人と関係なく主体的にも個人主義的に物事を考える癖がある。その前提のもとに初めて信頼が生まれるとネヨ自身は考えている。

「そうね」

ネヨの喜びの隠せない顔を見ながらメリーは相槌を打つ。

「私も頑張るから。メリーもイーレットの情報、何かわかれば私に」

メリーはこの際ミズを探偵団に入れることが出来るのかもしれないと考え、ミズを入れることをネヨにお願いした。

「ミズを誘いたいんだけど」

「まだメンバーには入れない。3名のメンバーで動いていく」

「3名?」

「この学校には探偵団と呼ぶクラブや団体が8つほどある。そのうちの一つが私とメリーがいる団体」

「そしてこの探偵団にはずっと受け継がれたあるものがある」

ネヨはなぜ探偵団に所属しているのか。なぜ団長なのか。その理由は探偵団の存在意義の根幹にかかわる重要な問題である。

「あるものとは?」

「秘密にしたいが共有する約束があるから言う。あるものとは......」

ネヨは秘密をメリーに伝えることに努める。

「とは?」

「やっぱりメリーでも言うのは私でも躊躇う」

しかしネヨはこれまでに誰一人として秘密を公開しておらず慣れていない。

「無理に伝えなくても結構よ」

ネヨはようやく自らの秘密を自供した。

「大丈夫。あるものとは助手のことなの」

秘密の一つ目とは、ネヨには助手がいることである。助手は探偵団を後ろで支える重要な役割を担っており、探偵団の裏方的存在だ。

「助手って私の部屋に来てくれた時、ノートを取ってくれていたのは誰なのかなとは気になっていたんだけど、助手がとってくれていたの?」

「そう。助手は私の相棒であり友達でもある存在。助手はメリーに次ぐ2番目に信用できる人」

「できればミズさんも信用してもらいたいんだけど」

メリーはミズにどうしても探偵団に入ってほしい気持ちを必死に伝える。

「難しいものは難しい」

「ミズにもきっと入りたい理由があるのよ。一度話してみたら」

「ミズは毎日のように授業中に話しかけてくる」

「そうなんだ」

「あの人、私に興味があるみたい」

愛情や信頼と同じように依存も人の特性である。ミズはネヨにある意味依存しているのだ。しかしネヨはこの探偵団にはそぐわないと念を強く打つ。

「頼むから探偵団に入れてくれない?」

「まだダメ。時期が来たら歓迎する」

「ありがとう」

「そうでもない」

ネヨの独特な返しは会話を一時的に中断させるような特効薬のようなものだ。

「メリー。もしかしてミズの事、好き?」

「そんなわけないじゃない!」

「メリーわかりやすい。面白い」

久しぶりにメリーの羞恥心を逆なですることに成功したネヨ。恥じらいはネヨの得意分野である。

「面白いから助手に今から会わせてあげる」

機嫌の良しあしはメリーにネヨの助手を紹介することにまで発展させた。

「ほんとに?」

「私は嘘をつかない派」

「そう」

「助手は探偵団の事務所にいる」

「その事務所はどこにあるの?」

「私の寮の部屋」

「そんな偶然あるの?」

「探偵団は受け継がれる仕組み。私が前の団長から受け継いだ」

ネヨはますます秘密を打ち明けたいと思うようになり、自分の事をひたすらに伝えようとした。

「今から行く?」

「うん」

「わかった。ついてきて」

「助手は奥の方にいる。呼んでくるから待ってて」

奥の方から出てきた助手はネヨと同じような恰好をしている。背丈背格好が双子のようにがっちりと似ている。

ネヨは奥から助手を呼んできてメリーの前まで案内した。

「呼んできた。こちらが助手のミリ。仲良くして」

「ミリです。よろしくお願いします」

「私はメリーと言います。こちらこそ」

二人は仲良く握手をしてから、お互いネヨの方を向いた。

「呼んできたのは良いものの、伝えることがない」

「......」

「じゃあ私はお暇しましょうか?」

メリーは気まずい雰囲気から逃げ出そうと試みたがネヨの制止された。

「ダメ。呼んできたからはすぐには帰さない」

「私の探偵団の仕事を教える」

「この探偵団は名前は決まっていない。でも私はネヨ少女探偵団という名称でやっている」

ネヨはすかさず説明を入れる。

「この学校の他の探偵団もわかりやすい名前で学校中に通っているらしい。でも私は詳しいことは知らない」

「へえ」

メリーは相槌を打つ。

「それでこの探偵団は他の探偵団よりも規模が小さい。他の探偵団は大体10名から30名ほどで構成されている」

「少ないのね。募集はかけないの?」

「ここは中途半端な人では絶対に危険。やっていることが極端すぎる」

「極端なのね。でも極端でも危険だとは言えないんじゃない?」

「違う。絶対に危険。普通の人が深入りしないところまで調べるからよく危険に遭遇する」

「ちょっと気になったんだけど、なんでここは危険な調査を担当しているの?」

メリーはそろそろネヨ少女探偵団の恐ろしさについて理解するところとなる。

「それがこの探偵団の存在意義だから」

「存在意義?」

「前の団長はとても責任感が強い人で、私にこの探偵団を存続してくれとお願いされた。私は断りたくなかったから承諾した」

ここまでの情報でネヨ少女探偵団というのが名前に反してとんでもないところだというのが明かになった。メリーは引き気味に会話をこなす。

「へえ。そういう経緯があったのね」

「だからメリーが来てくれてうれしい。とても力強い仲間」

ネヨはどうしてもネヨ少女探偵団に引き入れたく、メリーを大歓迎した。

「そんな」

「力強い仲間―。力強い仲間―」

押して押しまくればきっとメリーを探偵団に引き入れることが出来る。そうしてこれまでこの探偵団が解くことが出来なかった謎を解くこともできるのだ。

「ちょっとネヨちゃん!」

ネヨはひたすらに媚びた。

「いきなりなんだけど私の一生のお願い」

「これから連休に入る。私と一緒にマキュール山脈に向かって我がネヨ少女探偵団の調査に同行してくれないか?」

この団体は危険なのだが、それがむしろメリーの感情に火をつけた。

「そのマキュール山脈は危険なの?」

メリーは興味本位に聞く。それに真摯に答えるネヨ。

「そこそこ危険。でもメリーなら大丈夫。私でも平気だったから」

「行ったことがあるのね」

メリーは自分の中で納得し、ネヨと同行することに決めた。彼女についていくと、つまらない生活が一変するような気がしたからだ。

危険に合わないとは決していえないのだが、謎解きをする関心の方が勝った。

「うん、何度も。バンパイアの巣の捜査依頼やゴブリンの生態系調査など」

「そう危険でもない調査も中にはあるのね」

覚悟を決めながらネヨの説明を律儀に聞くメリー。

「バンパイアの巣はマキュールでも恐ろしいモンスターとして語り継がれている。ゴブリンの生態系調査も何週間も調査する間にどのモンスターに襲われるのかわからない」

ネヨは見た目に反してプロハンターだった。彼女の護衛信頼度は高く、ほぼ安全に調査をおこなうことができる。

調査だけでなく、マキュール山脈は一度も出会ったことがないものに遭遇する確率は高い。メリーは好奇心に忠実なエルフなので、探偵団は適合職なのかもしれない。

「そうなの」

「だからメリーも油断しないで。いざとなったら私の後ろにいて」

「大丈夫よ。私もネヨちゃんの助けになりたいし」

二人はお互いに向き合う。中心には間違いなくコアのような不安定な何かがそこにあった。二人で一人だと解釈しても差支えがないような。

「心の友よ」

ネヨのその言葉は二人の探偵団の契約の一部に影響を与えたみたいだ。二人が決して自覚することのないコアのような何かがより濃くなっているのである。

約束の誓いは二人の契約をより強くさせ、そして二人をより結びつける。そして二人は契約上の役割を果たす存在にも、自らを置くようになる。

「じゃあ決定ということで」

『契約完了「メリー、ネヨ」現在18時14分』


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