光闇魔法
イーレットは昔から人前に出るのが苦手だった。しかし出てみたい願望は他の人よりもあった。
魔法を使えるようになってからは、人に自分の魔法を見せてあげたいと願うようになった。もし自分の願望が形になるならこれほどまでにうれしいことはないと。
幼い頃は大人に認められるために魔法を一生懸命に練習した。魔法があれば人前で堂々といてていいんだ。これがイーレットなりの愛情の示し方だったのかもしれない。
認められたくて練習した魔法。それが後に彼女が魔術師になるきっかけをつくったというのも過言ではない。
多彩な魔法を操るイーレットは、魔法使いといっても差支えがなかった。
たった一度の魔法がその場全員に感動を与えることを予期した者はいるのだろうか。紅い炎が場内のあらゆるところに離散して丸い塊となって待機する。
彼女が指を鳴らすと一斉に紅い炎が爆発して、数々の火の粉となり場内を明るく照らす。彼女は炎と他属性の魔法を使用して多彩な芸を披露することもできる。
火の粉で会場が照らされている内に、炎と水玉を出現させあたり一面に離散させた。
通常は炎と水は相性はあまりよくないので合成させるとお互いに消し合い
炎と水玉は消滅するはずなのだが、彼女は考えがあった。
水玉に特殊魔法をかけてから炎をそれに纏わせることで、合成したように見せる。イーレットの魔法は創意工夫に支配されているといっても不思議ではない。
会場に離散した炎の玉を中心に集めてから、一斉に上昇させてからそれらをぶつけてみた。数は100以上はあったような感じだ。
イーレットの計らいにより、見事炎と水で消し合いなにもオブジェクトらしきものは残らなかった。ただ上空には一面の青い空が広がっていた。
時を待たず彼女は空中に飛び立った。炎を体に纏わせると同時に、炎柱を場内各地に設置した。
炎を纏った体は炎柱をことごとくすり抜けていき、会場を盛り上がらせた。数秒後、彼女がすり抜けていた時にさりげなく仕掛けた巧妙な仕掛けが作動した。
一斉に炎柱を巻くような感じに炎が渦巻き状に描き、それが一気に上に噴出した。至る所に置かれていた炎柱が会場を赤色で彩った。
魔術師イーレットは炎だけを使いこなせるわけでもなく、他属性も一流魔術師に引けを取らない。
火属性、地属性、水属性、風属性、光属性、闇属性などの属性魔法が、地上及び地下世界で主に用いられている。
火属性はこの世界では最も一般的に用いられる魔法属性で、イーレットのほかに様々な実力者が使用することが出来る。
光属性の魔法は主に天界との繋がりを持った者が用いる場合が多く、魔術師ガリオンも使用することが出来る。
天界から降り注ぐエネルギーを申し訳なさげに少しだけもらうことで魔法として使用するいわば邪道魔法の一つである。
といっても神々が用いる魔法に比べて比べ物にならないくらいに微小で、戦力として用いることは難しく、魔法を使用することが困難な緊急時に用いる場合がほとんどである。
他にも光属性の魔法は闇属性除く他属性とは明確に異なる特質を持つ。それは目に見えないものを司る魔法。
火や水などはどこでも見ることができる極ありふれたものだが、それなら目に見えないものを扱う魔法は何なのかという疑問が出てくる。
目に見えないものという抽象的な概念である理由はまだ研究が進んでいないからである。光属性は使用する頻度が極端に低いので、研究材料が極端に少ない。
それに光属性魔法を操る人物に有名人がいない点も挙げられる。数々の一流魔術師は4属性を用いる場合がほとんどである。
その他2属性を用いることのできる一流魔術師は極一握りで探し出して聞き出すだけでも研究機関の一か月の予算に匹敵する。
もちろん見解はある。光属性魔法は神々の力を取り込んだものだとの見方をする研究者はいる。
反対に光属性は神々の干渉を受けないという見解も中にはある。彼らは光属性魔法を少しでも解明することが出来れば、世の中が大きく進歩することを信じている。
光属性絶対信仰という訳ではないが、光属性の有意義性は間違いないと信じているのである。
その他闇属性魔法というものも存在する。闇属性とは魔族の使用する魔法で、光属性同様明らかになっていないところが多い。
たとえば魔族はなぜ闇属性魔法のみを使うのかという理由を突き止めなければ、闇属性の有意義性を理解することが出来ない。
記録にはもちろん魔族史実の記載もあり、研究者はその史実を利用し闇属性に対する研究を行っている。
記録によれば、魔族は生命力をエネルギーにすることがわかっている。人間が魔族に触れた時に人間の活力が大幅に低下したとの研究結果もある。
数多くの魔族侵攻の影響で魔族の特徴についての情報入手に成功した者には巨額の報酬が与えられた。
そのため魔族に対するデータは膨大な数保管されている。しかし、危険な思想や悪用されるという恐れからか魔術関係者のみが閲覧することが出来る。
魔族が勢力を増しているとき、ちまたには魔族ビジネスという言葉が用いられていた。魔族の情報着手に成功した者は多額の報酬を得ることが出来るからだ。
特に上位悪魔の情報着手に成功した者は一億ドリルの莫大な金を手に入れる。その金で一生を満喫する。この手の流れが一種の成功ルートになっていた。
当時は生活に困っているものも多く、お金の欲しさに魔族に情報を聞き出すものも現れた。
中には魔族ビジネスで荒稼ぎした者もいた。彼らもお金に困っていたのだろう。目の前のチャンスを逃すわけにはいかないとビジネスを始めた。
魔族ビジネスは需要によったビジネスともいえる。不確定要素の強い魔族に対抗する手段を今一度つくらないと村や町を守ることはできなかった。
しかし倫理性に欠けていて、一般的に認められているものではなかった。魔族ビジネスを規制すべきだという団体も立ち上がり、一進一退の攻防が繰り広げられた。
しかし今でも魔族ビジネスはかつての言葉を無くしたが、言葉や形を変えて確かに存続しており、だから魔族に対する研究がなされている側面もある。
魔族研究の重要性は年々増している。しかし研究費は少しずつ減っているのが現状である。
故に闇属性魔法の有効性は光属性のものよりも少ない。闇属性を用いることが出来るもので一般的に知られているのはいない。
なぜなら魔族との繋がりがあるとわかれば世間からのバッシングは必至で居場所がなくなるのかもしれないからだ。それに犯罪に抵触する可能性もある。
2つの属性が特異的で他の4属性とは全く違うことは周知の事実だ。問題は踏み込んだ議論がなされないことにある。
しかし魔族に対抗するには魔族界隈との繋がりなくしてありえないとの見方もある。誰もが見たがらないものは先送りにされる現実がそこにはある。
一向に進まない議論。真実を見たがらない地上世界の者。それこそが目を覆いたくなるような事実だという皮肉。
だから闇属性は他の属性から孤立している。光属性を使えるものはいるが闇属性を使えるものは表舞台から姿を消している。
魔術師ガリオンは両方と繋がっているのだが、どちらにも決して繋がっていない純粋な魔術師のふりをしている。
魔族との交信をしている様子を生徒に見られたときもあったが、お小遣いを少し多めにあげて見逃してもらったことも過去に2度ある。
天然ッ毛な彼でおちゃめな部分を兼ね備えた彼だが、天界と地上世界と地下世界を交信するいわばコネクターの役割を担っているとの自覚はある。
真面目な人柄に惹かれ、様々な女性から誘われたこともあったのだが、丁重にお断りしている実績が彼にはある。
ガリオンにも夢というものがある。メリーの夢がスローライフであるのと同様に、ガリオンの夢は分断をなるべく弱めることにある。
僕がこの役割を担うことが出来れば分断というものをなくすことはできないにしても減らすことはできるのかもしれないと考えている。
分断の危険性は元々歴史家を目指していた彼は理解している。数々の帝国や
王国が分断により滅びの道を辿った。
普通では決して起こることのなかった戦争が、分断によって引き起こされた。天界、地上世界、地下世界における分断が当時の世界に影響を与えたのである。




