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魔法の実演大会1

「は?」

「まさか3学年の5組に勝てるやつがいるというのかよ」

「いつどんなクラスが勝ち上がってくるのかもわからない。単純に考えても先を見落とすことになるぜ」

「お前はカリフォルトを抱えるあの5組に勝てるクラスがあるとでもいうのかよ」

「まさか。勝てるクラスがあるとまでは言えない。しかし結果をもう決めてしまうのは軽率じゃないのか?」

「てめえ」

その人物の生意気な態度にカリフォルトのファンの心は逆立たれた。

「ジョルナーロさん、始めてください」

ガリオンと同様、彼女は掌を頭上にかざした。

「うう」

「うおおおおおおおおお!」

その後絶叫して会場をどよめかせた。

「はあっ!」

「バンッ」

爆発音が会場全体に響き渡った。

「おおっ、爆発魔法を披露しました」

その音は会場の声をすべてかき消すほど大きいものだった。学生らの歓声もかき消された。

「中位魔法だな。ガリオンには劣るが、講師にしてはいい出来だ。やっぱり5組だよなー」

中位魔法は魔術師の基本である。

「カリフォードがいるからって忖度しているんじゃない?」

確かにカリフォルトの存在はとても大きいのかもしれない。彼の存在が教師である彼女の株を大きく上げている。

「ふう」

「はあっ!」

「ああっと連続の、えっと下位魔法ですね。お見事です」

「すごい。下位魔法ではあるがあそこまで高頻度で連続して出すなんてただものじゃない」

「お前もみただろ。あの演技!」

時に期待や嫉妬、尊敬は人を狂わせるものになり得る。カリフォルトのファンの中にはこの部分が大半を占めている者も多い。

頼り過ぎることも人を狂わせる要因にもなるのである。

「ふっ」

「なんで笑ってるんだよ。カリフォルトさんに失礼だろ」

ファンの中には一方的な主張を通すものもいる。そのおかしさに腹を抱えてしまった者もいた。

「僕でも使える技だからピンと来なくて」

その返しを待ち望んでいたかのようにそのファンは提案をした。

「おおいい度胸じゃないか。今日校庭で俺に見せてみろ」

一方的なファンの気持ちを汲み取り、その人物は提案を飲んだ。

「いいぜ」

「じゃあ見せ合うということで、待ってるぞ」

「やってやるよ」

彼らが話しを交わしている最中、カリフォルトの教師が奥の手を公開するというので会場中の皆は注目した。

「おお、とっておきの技を披露したいとのことです。楽しみです」

「やっと見れるのか、あれが」

「あれ?」

「そう、あれが。どんな相手でもあの技があれば」

「そう、あの技だ!」

ファンの中には信者のような者もいる。彼らは奥の手を心待ちにしていた。

「おい、大丈夫か。おい!」

「おい!」

「ふううううううう」」

「!?」

会場にはどんよりとした雲がかかってあたり一面暗闇にかかった。

「はああああああああ」

「......」

「ブーン」

「ああ、5組の周りに黒いオーラが纏い始めた!」

黒いオーラが間違いなくカリフォルト周辺にかかっている。

「そしてカリフォルトさんは濃すぎて暗黒色になっている」

「なんだと!」

先程カリフォルト絶対信仰に疑問を呈していた人物に危機感が募った。間違いなく危ない感じを察していた。

「どうだ、あれが究極の必殺技、ドレインだ。エネルギーを吸収してわがものにすることが出来るのだ。これほど頼りになるものはない」

ファンはもう今自分が何を言っているのかわかっていない。自分がどこかに行ってしまったかのような感じなのだ。

「てめえっ」

「ははっ、驚くのはまだ早いぞ。これからが本番だ。

「エネルギーの吸収効率は100%だ。クラス全員のエネルギーを取り込むのだから莫大な戦力になる」

吸収効率以前に倫理上の問題を許してはならないという魔術学校の掟が守られていないことに彼は気づいていない。

「おお、ジョルナーロさん。手を上に」

「ブーン」

大きな水玉が頭上に溢れ、会場は静まり返った。

「はあああああああ」

「ビュー――ン」

「ドオオオオオオオン!!」

巨大な水玉は空中で大爆発した。

「おお、すごい!」

「水属性の上位魔法が炸裂。しかも威力が桁違いだ!」

「おおおおおおおお」

会場内に拍手音が宙を舞う。

「パチパチパチ」

「ヒュー」

歓声には拍手のほかにも口笛のようなものや罵声も含まれていた。

その会場の異様な雰囲気は間違いなくカリフォルトのファンや信者がつくりだしたものである。

「全然よくないわ!」

「お前の気持ちもわかる。でもな、この技がなければ魔族と対抗する手段はないのかもしれないんだぞ」

確かに魔族侵攻に彼女のような人物は十分な戦力になる。

しかし生徒から吸収するようなモラルのない者がいざとなった時に学校や学生を見捨ててしまわないのかはいささか疑問がある。

「でもあの講師がいざとなった時助けてくれるのかは分からないだろ」

このような世間に不信感を持ち、物事を客観的に判断するような者もいる。

「そうだろ?」

都合の悪い質問から目を背けようとする自称カリフォルトのファン。カリフォルトを本当に尊敬しているのか確信に欠ける。

「さあサイ。3人目が登場するんだってよ。見ろよ」

彼は明らかにその質問をスルーした。

やがて黒い雲が会場から消え去り、会場の異常な盛り上がりは見られなくなった。

会場が静まり返り、もう一度盛り上がりを見せたのはイーレットが来るという知らせを受けた時だ。

「なんだ?」

「イーレットか。この学校のトップをずっと張っているという」

イーレットも実はこの演技に参加することが決まっていた。

「なんだお前も知ってたのか。天才魔術師として有名だぞ」

「天才ってことだけどそんなすごいのか?」

イーレットは、学生らには好ましく映っているようだ。彼女はマキュール魔術学校の看板講師であるからだ。

「上位魔法を若年から使いこなすこともすごいが、本当にすごいのは技の多彩さにある。とにかくすごい」

学生らが彼女の株をお互いに上げまくっているところ上演時間が迫ってきた。

「さあ、3人目はいよいよお待ちかねのイーレットさんです」

「おおおおおおおおお!」

歓声は会場中に響き渡り、空を飛んだ。

「なんだお辞儀ばかりで謙虚だな」

謙虚な人間とは何なのだろう。彼女のように人前で取り繕っているのを謙虚というのだろうか。

「そう言えない噂があるという」

学生らが友人同士で会話をする。

「どんな噂だ?」

「とにかくかわいいとか」

一人の女子が彼女の知識を友人に広める。

「他には?」

議論を始めた者が質問する。

「優しいこととか?」

一人の男子がまじめに答える。

「他には?」

「ああうるせえんだよ。わざわざ言わせるなよ」

彼はイーレットに惚れていた。彼女のヘヤースタイルと顔が好みだったのだ。

しかし友人に自分の好みが知れ渡るのを恐れた。

「ないじゃないか悪い噂」

一人の男子は友人らの議論の中でイーレットは素晴らしい人物像であると思っていた。しかしそれを議論を始めた者は明確に否定する。

「俺が知っているわけではないが、確実に何かをしているという噂だ。余りモラル的にも認められていないことだったりとか」

「始めてください」


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