創造神ソルニトゥス
メリーはネヨと仲良く教師の実演大会を観賞している。今現在、マキュール魔術学校では大会が開かれていた。
魔術師イーレットを筆頭に様々な実力講師が集まり、魔法を見せあいながらも競い合う。
当人次第で解釈は異なり、ある人にとっては純粋な実演であり、またある人にとっては戦闘大会なのである。
実演者は番号順に呼ばれてから一人ずつ実演を行う。一人に一度だけの失敗が許容されている。2度の失敗は退場送りの厳しいルールも存在する。
講師は学生に授業するだけでは物足りず今すぐ戦いたい戦闘狂が大手を振って戦うことのできる場を買っている大会でもある。
また、学生にとっては講師が本気で見せ合う大会でもあり、胸が躍っている。あの講師の普段見せない姿をみられることを期待して舞台は大分盛り上がっているようだ。
もちろん講師にも生徒に実力を示すことが出来るチャンスでもあり、一定数否定的な意見もあるが大部分は意欲的だ。
大会は絶叫ムードの最中、一人目の実演者が舞台に立った。黄金色の肌に赤色の服を着た特徴的な外見をしていたが、実力を隠し持った雰囲気もあった。
美しい外見を持ち合わせながら奇妙な恰好を舞台で披露する者はあの魔術師ガリオン。
絶妙なツッコミとキレで同僚を困らせることが趣味な魔術師ガリオンは絶対神ソルニトゥスを信仰している。
絶対神ソルニトゥスは天界でも1位2位を争う上位神の一角で、神々からは恐れられている。
天界にソルニトゥスに逆らうことが出来る神はほとんどいない。唯一反抗できるのは究極神カリッフォスである。
ソルニトゥスとカリッフォス。天界はこれらの神によって秩序が保たれている。ソルニトゥスの勢力とカリッフォスの勢力で二分されている。
秩序を維持するためにはある程度の工夫が必要だ。地下世界でも地上世界でもなく、天界であったとしても創意工夫によりある一定の秩序が保たれているのである。
神々と人間は違うように見えて表裏一体の側面も兼ね備えている。人間が存在しているから神も存在している。
人間側から自覚できる神々のみが、人間から神として認定され、その解釈に基づいて神々の基礎が勝手につくられる。
よってとある国では神々の存在が認められている場合もあるが、とある国では認められていない場合も多い。解釈は適当性を持ち合わせている。
二つの勢力に分けられている天界なのだが、争いを好まない神々は勢力争いをすることは絶対にない。
たとえ天界が崩壊することがあっても、神々同士で争いなど醜いだけで何も生みださないことがわかっているのだ。それにまた新たに天界を創造することもソルニトゥスとカリッフォスは一からすべてを創造する能力を持っている。
絶対神ソルニトゥスは地上世界の秩序を守る役割を果たしている。反乱が起きれば人間の姿に化けて地上に降り立つものも現れる。
神々の地上世界での干渉を許してはいけないというルールが破られた場合、他の勢力から大きくバッシングされることがある。
当然バッシングを受けたいとの物好きな神も中にはいるのだろうが、大多数はバッシングをされれば落ち込んでしまう。
そのため地上世界に降り立った後でも、外野から見物するだけで殆ど役目を果たせなかった神々は後を絶たない。
確かに、人間と何ら関係のない者が余計な干渉を繰り返すと、それは逆効果に現れるだろう。しかし人間にも時の都合というものもあり助けてほしいとも考える。
だが他の勢力もそれを認めないし、何より神という存在と地上世界の者との差が文字通り天と地ほど開いているので、神々にとっては小さなことであったとしても人間にとってはとても大きなことである場合もある。
世の中のバランスが崩れると元に戻るまでは非常に難しい。どれだけ大きな力が働いていたのかで難しさは刻刻と増していく。
人間だけの力で作り上げたものだったらまだしも、神々の力でつくられたものが根底にある場合はコントロールすることが人間には困難になる。
秩序を維持することはそれほどまでに難しいこのなのである。だから地上世界を維持する役割を持つ神々が他勢力に対してはこれほどまでに厳しくするのかもしれない。
魔術師ガリオンは実は神々と交信している。秘密裏にこういったことが行われていることは珍しくない。
他にも魔族ともゆかりのある彼は魔術師としてふさわしくない人物なのかもしれないが、世間に知れ渡っていなければ彼の評価が落ちることは万が一にもない。
神とも魔族ともつながりのある魔術師は滅多におらず、最近では見なくなった。まさに魔術師ガリオンが3つの仲介柱なのである。
神と魔族は一般的に関係はない。人間の敵である魔族は神々からは嫌われているはずなのだが、実は案外気にしていない。
地下世界は天界とは全く無縁の世界なのだから、たとえ気にしても仕方がないと考えているのである。
ところが地上世界に危機が迫った時にはうってかわる。
神は何と身勝手なのだろうか。この世に完璧な者は存在しないとでも言いたいのだろうか。
しかしガリオンのような神々とも魔族とも繋がっている者はこれらの分断の懸け橋になるのかもしれない。
魔族が出現するとわかっていたら神々にその状況を逐一伝達することが出来るし、魔族にスパイを送り込み内部の情報を入手するというのもある。
表舞台では魔術師ガリオンの評価はとても高い。しかし裏ではありえないようなことでも取り扱っているようないわば爆弾だ。
ガリオンの身に何か変化が生じれば警戒すべきなのだが、彼は誰にもそのことについては伝えておらず、彼のみ知っている。
区別することは時には正解となり、時には不正解となる。一度区別すると問題を解決したような気になったとしても、先送りにしているだけという考え方もある。
天界と地上世界と地下世界。これらの分断が全体に何を引き起こすのかは誰にもわからない。
「1人目の上演者はあの魔術師ガリオンです。世界を駆け回り魔族を狩るエキスパート!」
「ふー」
彼は左の掌を前に突き出し集中する。
「はあっ」
「ブババババババババッ」
水しぶきは散乱し、舞台の上にパラパラと粒上になって離散した。
「ドシュー―――ンッ」
その後右手を前に、一直線に豪快な水しぶきを実演し、会場を盛り上げた。手を上に向け、水しぶきは噴水のように散らばった。
「ああっとガリオン、水属性の上位魔法を繰り出しました」
「すげーな」
「いとも簡単に上位魔法をつかっちゃったあのおっさん」
「しかも水属性だぜ。水属性の上位魔法ってもしかして珍しいんじゃないか?」
水属性の上位魔法は才覚があることを意味する。魔術師ガリオンは才覚のある魔術師として名を挙げた。
「はあっ!」
半分やる気がなさそうに先ほどあげた水しぶきの上に申し訳なさそうにのり上げた。
「ああっとガリオン、先ほど発射した水砲の上にのっかった!」
「ふん!」
彼の変顔と共に、彼の渾身のギャグが炸裂した。
「ああっと、ん?」
「あぐら、を、している、のでしょうか......」
ガリオンは怖い顔をしていて普通に接してほしい気持ちが人一倍強く、渾身のネタを披露すればきっと心を開いてくれるだろうと期待して、このようなギャグを計画していた。
「シーン......」
期待は空しく、まったく結果には現れなかった。
「アラヨット」
「タッ」
ガリオンは空しさと同時に、自分のやれることはやり切ったとの思いで胸はいっぱいだった。
「ガリオンさんの演舞は終了しました。2番の方、お願いします!」
怪しげな雰囲気を身にまとった人物がそこに現れた。
「3学年の5組の教師を務めさせてもらっています、ジョルーナロです」
「えっあの学校一番のクラス3年5組?」
「おおっ!」
マキュール魔術学校の3学年5組はカルバーテル全体の魔術学校及び魔法学校でよく知られているほど有名だ。
特にあのカリフォルトの名は魔術師志望の同世代で全国で知らない者はいないとも言われている。
「あのカリフォルトさんも所属しているクラスじゃない」
「首席のカリフォルトを抱えているクラスだから絶対にすごい教師だよ」
「5組といったらクラス対抗戦でも昨年一位だったからな。今回も一位をかっさらうだろうぜ」
カリフォルトのファンらが褒めちぎっているのに疑問を呈す者が現れた。
「順調に行けばな」




