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人間を襲う理由

「例えばどんなことするんだよ?」

「はじめはまあ普通の教師が魔法を実演するどこでも見れるやつだけど、その次の大会が面白いんだよ」

「マキュール魔術学校のエリート在校生が、年に2回たった5つの席をめぐって競い合うんだってよ」

「見合わせるだけでつまらない行事だと思ってたけど後に面白いこと、控えてるんだなー」

「さすがだぜー」

リーダー格の人の話に頷く下っ端格の人。

「ここの学校に有名人っているの?」

「マキュールのエース、カリフォルトさんは有名だよな」

「俺知ってる。あの、学生で魔術師試験合格者の」

「魔術師試験合格なんて、夢のまた夢なのに学生にして!?」

「カリフォルトさんに勝つ人なんて万一にもいないと思うけど、いたらすごいよなー」

「まさか、いるわけないでしょ」

「最後にカリフォルトさんとあの天才魔術師イーレットが手合わせするらしいよ」

「まあカリフォルトさんが優勝したらだけど」

カリフォルトの噂は学校中に広がっている。誰もが羨む魔術師試験に学生ながらに合格した大秀才であり、天才とも呼べる。

「魔術師試験合格者で中級魔術師並みの実力を持っているというカリフォルトが負ける試合もあってもいいんじゃないか」

「それが魔術師試験の醍醐味さ。誰も知らない無名の新人が仮にも実力者を負かした場合すごいと思わないか?」

「確かにな」

「言われてみれば」

リーダー格の人物の発言は止まることを知らない。

「何も大会ってバトルだけではないぜ。技の完成度、洗練度、美しさを競うコンテストも開催されるんだぜ」

「イーレットのバーンフレイムを生で一度だけ見たかったんだけどなー」

部下気質の下っ端はぶっちゃける。

「バカ。あんな危険な魔法こんな街中で使えるか!」

リーダー格の人物は必死に否定する。部下の発言を正そうとした。

「使ったら最後、半径100メートルは一瞬で火の海だ」

「へーそんな強力な魔法使えるのかあの先生」

「へー」

俺は知らないとの態度に不安を募らせるリーダー的人物。

「まさか知らなかったのか?」

「外見はとてもピュアなかわいい女性だもん。もし知り合いなら一瞬で口説き落とす」

「そんな野蛮な真似はやめろ!」

部下的な人物の発言はモラルというものを通り越していた。リーダーは責任感を感じ、その人物を叱った。

「イーレットさんはそういう行為が究極に嫌いだからだ」

「え!」

「まさか俺が変な事言ったら......」

「一瞬で消炭にされるだろうよ」

「でも俺ならかわせるもん!」

しかし部下は余裕のよっちゃんいかはまだいけるらしい。

「甘い!」

「イーレットは国内屈指の魔術師で国内で肩を並べるものが5人程度だと言われているんだ」

「やば」

ようやくその人物は事の重大さにきづいた。

「だろ!」

「だから気をつけろ。ちゃんと敬語を使えよ」

「おう」

「魔術師試験合格ってそんなすごいものなのか?」

他の部下気質な人物が問いかけた。

「俺そこんとこわからなくてよ」

「当たり前だ。魔術師は何も理解していない一般人とはけた違いの経験値なのだ。何もかもが違う、違い過ぎるのだ」

「例えると機関車と飛行機の差はけた違いだろ?」

「それたとえでもとても埋まらない差と思ってもいい」

例えが絶妙にへたくそなリーダーの話を聞き、頼りなさを感じた部下。

「へー。でも魔術師試験が難しい理由っていう訳ではないでしょう。いくら一般人と魔術師が桁違いだからといって、試験が難しいっていう理由にはならない」

「あのな、受験者のレベルが高くなればなるほど難易度が上がるに決まってるだろ。それに魔術師は国家資格で易々と渡していい資格ではないんだよ」

「あーそうなんだ」

部下は納得した。

「とにかく、イーレットさんだけはバカにするなよ」

「へーへーわかりましたよ」

「本当にわかってるのか、こいつ」

「俺は信じてる。カリフォルトさんがイーレットさんに勝つところを」

一人目の部下的人間はイーレットを完全に舐めている。

「あれ、魔術師イーレットのこと好きじゃなかったっけ」

「そんなわけないじゃないか!」

「生徒が先生に勝つところ見たいとかないのかよ!?」

その人物はとにかくイーレットが辛い目にあっているのを見たいらしい。

「そういうやつね。てっきりイーレットが倒れてるところに興味があるのかと・・」

「俺だってそんなに性格捻くれていないよ!」

お茶を濁す彼。

「ならいいのだが」

「お前そんなにカリフォルトさんが好きなんだったら話しかけてきたら?」

その言葉で満面の笑みを浮かばながらも反抗する。

「そんなわけないだろ!」

「そんなわけ......」

「ふっ」

その人物はモラルというのが少し欠けている。身近な者から叱られてしまった。

「出たーお前の悪いところ」

「いいだろ別に」

しかし開き直っているようだ。

マキュール魔術学校は圧倒的な戦績を持つマキュール騎士団の騎士の排出数ナンバーワンを誇る。

マキュール騎士団とは村や町などの魔物の襲撃に最も早く駆けつけ撃退するプロフェッショナル的な存在であり、同時に高い戦力を保持する騎士団でもある。

そのため、入団基準は他のものよりも頭一つ抜けており、マキュール魔術学校の生徒でさえ、入ることは困難だ。

マキュール騎士団はマキュール魔術学校の位置するマキュール地方の子供たちの栄光の的であり、街の象徴的なシンボルでもある。

それほど列島国カルバーテルは魔族の侵攻が高頻度だと暗喩しているとも解釈できるのだが。

高い戦力然り、精神的にも優れているものが積極的に採用されており、何よりも重視されるのが人柄だ。

騎士団の秩序が乱れようものなら国が乱れるのと同義。団長は国が混沌化していってもせめて騎士団だけは秩序を維持しようと考えている。

カルバーテルは面積がとても大きく、比例して人口も多い。そのため世界への影響力が比較的高い。

故に我がマキュール騎士団の崩壊はマキュール地方の崩壊。それはカルバーテルの首都マキュールの崩壊。それによる国全体の混乱。

いくら強力な魔術師で構成されるマキュール騎士団であっても、魔族の侵攻は容易に想像を超えてくる。

過去に見られなかった魔族もたびたび出現し、そのたびに国は混乱した。

魔族は人間を取り込み巨大化し、そして戦力は何倍にも膨れ上がる。

あらかじめ強力な人間に負の感情を棲み処とし負の感情を食い、自身の戦力を膨らませつつもその人間を操ることで数々の英雄も葬られた。

英雄には天才魔術師イーレットに及ぶ者も確かにいた。イレギュラーな魔族の出現でマキュール地方は崩壊寸前にまで追い込まれたこともあった。

人間の負の感情は魔族の御馳走であり栄養剤でもある。食べれば食べるほど満足し、強くなる。

人は負の感情に支配されると己の意志のコントロールを外れ、これまでのコントロールされた事実を否定するかのように暴れまわる。

それは止まることのない欲の濁流であり、1度流されてしまえば最後。何処までも流され続ける人は多い。

たまに類まれなる鋼鉄の意志を持つ者も現れる。しかしその者こそが上位魔族の上級悪魔の餌食にされてしまう。

人の意志こそ魔族にとっての御馳走なのだ。意志が強ければ強いほど魔族はそれを喰らう。

鋼の意志を持つ者は魔族からのコントロールを拒むが、上級悪魔はそれを軽々と突破してしまう。

多少どころか頑丈な鋼のような意志で構成されたフィルターを作り出したとしても、それは無意味に終わる。

その時、フィルターは粉々に破壊され、少しづつ心を侵食していくのである。数ヶ月で完全に支配が完了する。

後はいつでも上級悪魔化して暴れまわれるのだが、行くべき時期に行くのが悪魔の本当に怖いところなのである。

彼らは時期を選び、確実に獲物を仕留める。獲物は寄生された者とそれに攻撃されて滅びる者。両者は表裏一体なのである。

上級悪魔は美しい自然と人間の豊かな生活を憎み、完全に破壊するまでやめることはない。

魔族の中にも平和を望むものももちろんいる。人間やエルフ同様、魔族にも平和的解決を望むものもいるし、その逆もしかりである。

とある平和的解決を望む魔族の例を一つ紹介しよう。彼の名はセルフラント。魔族は天界から神に見張られているので地下深くに住居を構えている。

セルフラントは人間やエルフと仲良く暮らしたいと考えているのだが、なにぶん魔族の大多数がそれを否定している。

魔族は人間の心が全くないわけではなく、いい例が彼女セルフラントの存在だ。元々人間だった魂が腐敗した体で悪魔化する場合もあり、人間の魂が残っていることも多い。

そのため魔族、もっというと上級悪魔にもそのような平和的、対話的解決の線もないわけではなく、平和自体を否定しているわけではない。

魔族には特性がある。一つ目に人間を犠牲に強さを得ることが出来る。それ故に魔族間での地位を相対的に高めることが出来るのだ。

二つ目に人を支配する事が出来る。上級悪魔やそれ以上の悪魔は人の魂を簡単に乗っ取ることが出来る。そのため実力者が悪魔化し都市が一つ壊滅した例も数多く存在する。

三つ目に人間の生活圏が広がるとともに狂暴化し、力を大きく増す。尋常のない恨みが魔族の感情に芽生え始める。

以上3つの点が魔族が人間を襲う理由だ。魔族は人間を愛しているわけでもなく、知っているわけでもない。人間も同様、お互いに何も知らないのだ。

人間は平和であればあるほど生活圏を増し、やがて世界を事実上支配のような体制をとる。

そうなれば長い時間を待たず悪魔の恨みが無条件に高まる。中には人間を恨むあまり襲うことだってある。

魔族の住む地下世界は地上世界と変わらず広大だ。人間の十分の一ほどの数が住んでいるともいわれている。

魔族同士、広い地下世界で共同生活を営む場合が多い。同族ではどんな種族でも一応は協力するものだ。

地下世界には掟がある。上級悪魔とそれ以外の魔族では力関係の差が歴然に示されている。

上級悪魔は圧倒的な戦力を持っており、他の悪魔を威圧することが可能だ。上級悪魔を従えることが出来るものは数少ない。

掟其の一、他の悪魔の生命を絶つ場合は必ず自らの力にすること。魔族は生命力を触媒に力を高めていく。

掟其の弐、上級悪魔の命令には逆らわないこと。もし仮に他の魔族が上級悪魔に逆らうものなら地下世界には上級悪魔だけが残ることになる。

其の参、悪魔の人間狩りに干渉しないこと。悪魔は長い時間をかけて獲物を選ぶ。獲物がかぶってしまえばパニックになりかねない。

掟其の四、魔王復活のために月に一度生命力を分け与えること。生命力の弱いものはたった月に一度の生命力の減少が命取りになる場合がある。

魔王は地下世界に存在する究極の絶対的象徴であり、魔族であれば誰もが尊敬している。

魔王復活はいわば、地下世界の王者が目の前に現れることを意味する。尊敬する唯一のお方が眼前に姿を現すのだから、それを嫌うものはない。

つい3年前、魔王復活に値するエネルギーを取り込み、魔王が復活した。魔族は魔王復活を大いに喜んだ。

これまで蓄えてきたエネルギーが、魔王復活により地下世界に降り注がれ、魔族は大幅に力を得た。

えてして誰でも力を得てしまえばことを急ぎ過ぎてしまう。魔族の中には戦的交渉を望むものもおり、人間を襲う者もいる。

結局、魔族は戦いを望んでいるわけではないのに結局人間やエルフと争ってしまうことになる。

魔王は地下世界の唯一の絶対的存在でどんな上級悪魔やそれ以上のものでも決して逆らうことが出来ない。

魔族はもしかすれば、魔王という存在に地上世界の人間やエルフを止めてもらいたいと思っているのかもしれない。

戦的交渉を望むものは決して線のない解答なのだろうが、誰もが望むものではない。魔族は全体の総意でなぜか結果的に地上世界に進出し、人間を喰らう。

人間が美しいのだ。奇麗なのだ。食べてしまいたくなるほどおいしそうで魔族の私の舌をさりげなく触れていく人間。

存在自体が尊く魔族の御馳走。食べても食べても食い足りない。もっと食べなければ。

地上世界にいかなければ。そしてもっと人間を支配しもっと取り込んで強力になればもっと私は喰らうことが出来る。

中にはこのような異常な精神状態をさりげなく表すものも数少ないが存在する。

我々ももし朝から何も食べておらず、疲れ果てたへとへとの状態で眼前に大好物が置かれてその食欲に抗うことが出来る者がいるのだろうか。

中には1日食事を抜くなんて訳ないといったような容易に食欲に抗うものもいうだろうが、全員がそうではない。

誰しも欲に勝てる者はいないのだ。問題は程度の問題でどこをどの程度補えばいいのかが大事なのだ。

現実世界に存在する様々な巧妙な罠。決して魔族だけではないことをここで強調しておきたい。

魔族にとっては生命力こそが生命なのだから。


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