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イーレットの過去

受話器からの声はミズのものであった。

「あの、メリーさん。ネヨちゃんに探偵団希望のことを伝えてくれた?」

「いいえまだなんだ」

ミズに申し訳なさを感じているメリー。

「まだ!?」

ミズは早くしてというような口調で返事をする。

「探偵団に入りたくてうずうずしてるから早くお願いね」

「わかった」

メリーはなるべく早くネヨにお願いしなければという気持ちになった。

「じゃあね」

「プッ」

メリーは受話器を戻し再びネヨに話しかけた。

「ネヨちゃん?」

「何?」

「ミズさんが探偵団に入りたいって」

メリーの求めも空しく、ネヨの承諾には一歩及ばなかった。

「ダメ」

予想していた返事がネヨから帰ってきたのを聞いたメリーは少し落ち込んだ。

「何で?」

ここで理由を求めなければ決してネヨは明かさないと思い、必死に理由を懇願するメリーであった。

「あの人、探偵団にふさわしくない」

確かにミズの能力はネヨやメリーと比べたら劣るのかもしれない。だがそれだけが理由ではないはずだ。

「えー。絶対に入ったら面白くなると思うけどなー」

メリーはもう一押しと懇願していく。

「だったら条件ある。メリーが探偵団の催しに必ず参加してくれるんだったら」

「それとミズの実力がないから、もうちょっと強くなってから」

ここまでミズをネヨの探偵団に入れたくない理由がハッキリした。危険であるからだ。

「探偵団危険なとこたくさんある」

探偵団にも危険はつきものであるが、危険と強調すべきほど危険なのであろうか。メリーは頭を悩ませる。

「わかった。約束する」

メリーはネヨの要求を飲んだ。

「決定。契約を結ぼう」

「契約?」

「そう。探偵団は固い絆で結ばれてないといけない」

「結構お堅いところもあるのね」

「やわらかいところもある」

このような冗談めかした言動も彼女の特性である。

「わかった。ちょっと面白そうだし。ネヨちゃんのこと好きになっちゃったかも」

「変な事言わないで」

ネヨは冗談が嫌いである。

「契約。探偵団条項一ノ一、仲間の詮索はしないこと。一ノ二、大事な秘密は外に漏らさないこと、一ノ三、仲間を守ること、一ノ四、......」

「二ノ」

「四ノ」

「十ノ」

ネヨの終わらない契約儀式にメリーが異論をていした。

「これいつまで続くの?」

「あと一時間」

ネヨの言葉は時には刃となる。メリーはそれに直撃してしまった。

「そんなに!?」

「これで終わり」

やっと終わったとメリーは喜びの声を上げる。今日の出来事をミズにも起こるのだろうと考えるといてもたってもいられない。

「この契約ってミズさんにもするの?」

「うん」

(あちゃーミズさん)

しかしメリーは自身が身をもって体験した長時間の儀式をミズが体験することを聞いて少し穏やかな気持ちが姿を現した。

「明日のバンパイアの炒め物は楽しみにしておいてよね。朝捕まえた新鮮なヤツだから」

しかし申し訳のない気持ちも同時に姿を現していた。どちらを優先すべきなのか交錯した気持ちが巡る。

(ネヨちゃんのつくる料理って一癖も二癖もするんだよな)

「じゃあ」

ネヨは儀式を終え、自分のいるべき場所まで戻る。

(よかった、ネヨちゃん怒ってなくて。心配して損した)

(でも次からは気を付けないといけないよね)

メリーは本当にネヨが自分に怒っていると思い込んでいた。もし怒っていなくても怖がっていたとは考えていた。

しかしネヨは案外気にしない態度を取っていたので安心した。

「よーし頑張るぞー!」

これまで頭の中を席巻していた悩みがとれ、メリーは一歩を踏み出す勇気を得た。

「って張りきっているけど何すればいいんだろ」

メリーのネヨに対する誤解も解け、一安心かと思ったら後日、イーレットに??られたメリーだった。

メリーはそれに怯む様子はなく、必ず自分の名を校内に轟かせないという考えを貫き通す方針は変えていない。これからも変える様子にないように見える。

絶対的な実力を持った彼女が校内で一躍有名になれば、彼女の達成すべきスローライフを実現できなくなる。

皆はいう、才覚に溢れた人間は羨ましいと。皆はいう、優れた才能があるなら皆のために使えと

皆はいう、劇場のエルフはどこにいるのかと。学校や国は劇場のエルフがマキュール魔術学校にいるという所在は知っていない

ところが学校で有名になれば、その所在が世界中に広がることになる。メリーからすればそれは大問題だ。何としても阻止しなければならない。

相棒のライスだけが彼女の理解者なのかもしれない。実力を持つ者同士、お互いに敬意を払っている。

必ずしも所在がバレたからと言って、劇場のエルフだ真の魔法使いだなどと言われ、世界中からファンが押し寄せてくることはないとは思うが、現実は不可解である。

得も知らぬところから襲ってくるファンもいないとは言えない。エルフはそもそも人気なのだから、劇場のエルフともなれば、エルフを何回も掛け合わせても決して誕生することのない輝きを見せてくれるのだろうと期待して、大勢が襲ってくるのかもしれない。

国やマキュール魔術学校はそれを拒否する。学校は生徒を守る場所である。生徒が危険にさらされるなんてあってはならない。

メリー自身もそれは当然理解している。だからバレないように計らうのだ。しかし魔術師イーレットは皆にこの事実をばらそうとしている。

学校中に彼女の名が知れ渡ったとしたら、校内だけでなく街中にも噂が瞬く間に広がる危険性をイーレットは当然理解している。

しかし、魔術師イーレットの名に懸けて、メリーを一流の魔術師に仕立て上げたいとの願望がイーレットを衝動的に半ば脅迫的に誘導する。

その結果、メリーを不本意にも追い込むことになったのかもしれない。彼女の魔術師に対する思いと信念は、誰にもはかり知ることはできない。

絶望的な状況がもし訪れたとしたら、私だけでこの学校の生徒を全員一人欠かさず守り抜くことが出来るのだろうか。

魔術師の名に懸けて、絶対に生徒や市民を守り抜きたい。彼女の信念は昔魔術師を志望した時と何ら変わっていない。

世間の魔術師に対する過度な期待がメリーを追い込むことになるとイーレットは考える。しかし止めどなく降り注ぐ才能への過度な期待を自ら赦している。

目の前に確かに感じる祝福を全く見て見ぬふりをすることは彼女にはできなかった。魔術師として、魔術師イーレットとしてメリーを一人前にしたいと願った。

メリーには悪いと思っている。勝手な理由で彼女を危険な目に合わせるのかもしれないと思うと彼女の胸は痛む。

秀逸な才覚を幼げに発揮したのは何もメリーだけではない。イーレットにも逸脱した才能を幼年期に開花させた。

彼女は逸脱した能力とは裏腹に、貧乏な家庭で生まれ育った。決して裕福ではなかったが、両親から受け継がれたのかは分からないが、周囲を威圧するだけの才能を持って生まれてきた。

イーレットは赤ん坊の頃、両親は普通の子供だと思っていたのだが、周囲を驚かせ始めたのは2歳の頃。

通常、魔法というのは数年学校で勉強や実践を繰り返して初歩の初歩を身に着けられる可能性があるくらい難しい。だから魔術師は重宝される。

下級魔法でさえ、学校で身に着けたものは極少数。大体は毎日死に物狂いで勉強や実践を繰り返し、家庭教師や魔法知識のある両親に教えてもらい身につくことが多い。

イーレットは2歳で魔法の初歩を両親に実演した。当然両親は大喜びで子供の成長を喜んだ。

しかし彼女の成長は留まることを知らず、早すぎる成長はむしろ両親を不快にさせた。

わずか7歳で下級魔法を両親に見せた時、彼らは無の境地に至っていた。決して我々では辿り着くことのないところだと思っていた。

それを独学でやってのけた彼女には他人に比べけた違いの自身を持っていた。しかしイーレット家族の暮らしていた村に一報が届いた。

緊急! 近隣の村に魔族が出現しました。応援をお願いします。

    人数10名ほど。魔術師免許所持者歓迎。

イーレットの両親はその助けを受け、近隣の村へ走った。後で戻ってくる。決してこの村を動くな、と。

待てど待てど彼女の両親が帰ってくることはなかった。近隣の村からの知らせを受けた時に彼女は絶望した。

彼女は当時8歳。下級魔法をやっと習得した頃で魔族には決して届かなかっただろう。でも私にやれることはあるはずだ、と。そして魔族を許さない、と。

彼女の魔術師に対する責任は絶望感を振り払うために魔術師を志した。絶対に魔族を許さない。魔族からこれ以上犠牲を出してたまるか、と。

リックと同様、彼らは魔術師に対するこだわりや責任感が人並み以上に強い。絶望や怒りが、人を良くも悪くも伸ばす要因になっているのかもしれない。

「あら、メリーさん」

イーレットがまるで出迎えてくれていたようにメリーに話しかける。

「イーレット先生、遅れてすいません」

メリーにも後ろめたい気持ちもあり今日の出来事について謝罪をした。

「悪いのは私ですよ、変なこと言ってごめんなさい」

イーレットはメリーの返事に心を躍らせていた。だいぶ嬉しかったようだ。

「全然ですよ、せんせー」

イーレットから言葉が聞けたので気持ちが晴れた気分で自席につく。

「魔法の基礎について一度おさらいします。魔法というのは・・・」

「メリー」

「ネヨ!?」

再びネヨがテレパシーを使用した。

「テレパシーをそんなに使って魔力は減らないの?」

「平気。メリーの為なら無尽蔵にあふれてくる」

ここまでのネヨの行動はメリーへの愛の裏返しといっても過言ではなかった。ネヨはメリーを愛していて、彼女の為なら何でもすると言っているのだ。

「そうなんだ」

メリーは頷く。

「これ、授業内容のメモ」

ネヨが何やらメモを送ってきた。しかし今度はあの奇妙な音は聞こえなかった。

「いいよ、他の人に借りるし」

「遠慮するな。探偵団は秘密を共有する」

ネヨはメリーに遠慮をさせたくない。ひたすらにメリーの気持ちを汲んだ。

「私の気持ち、受け取ってくれないの?」

メリーは断り知らずなので、ネヨの気持ちを受け取った。

「受け取ります受け取ります」

「どうぞ」

「えー!!」

そのメモはメリーの創造をはるかに超えていてほんの数時間では記入できないほどの量がまとめられていた。

「これ先生の言動全部まとめてるけど!」

「一言一句大事。必要な情報は漏らさない」

メリーは一瞬疑ったがネヨのことだからと半分信じた。

「ちょっと狂気な念を感じる・・」

「何?」

ネヨはメリーからの心ない言葉で本音を察そうとした。

「いいえなんでも」

「うん。気持ち受け取った?」

「そうね、うん」

「よかった。じゃあいくね」

「プッ」

ネヨの声は頭の中からさっぱりと消え去った。

(じゃあさっき私を呼びに行ったときはどうやってメモしていたのかな?)

(やっぱりネヨちゃんって秘密も多いのかな)

(ちょっとワクワクしてきたー!!)

イーレットの授業も終盤に差し掛かり、彼女の黒板の筆は速くなっていく。

「コッコッコッ」

筆からはジェットエンジンの回転数と類似した音が室内に響き渡った。

「キンコンカンコン」

やがて授業のチャイムが鳴った。

「はい授業は終わりです」

「ガラッ」

「終わったなー」

これはとある学生らの会話の一部始終だ。

「明日開かれる新入生と在校生の顔合わせに伴って大会が開かれること知ってる?」

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