配達のお仕事と飛んでいく箱
配達の仕事をしていると、大変だ。
なにせ、荷物から目を離すと、ひとりでにどっかにいってしまうからな。
箱が飛んでしまうんだ。
やつら、配達された後は、自分が用済みになるって分かってるんだな。
ほら、中身とったらダンボールとかあんまり要らないだろ?
だから、配達先につくと、一目散に逃げだそうとする。
そんな事になったら大変だから、新人が入ってきたら、必ず言い聞かせるようみしてるんだ。
「荷物からは決して目を話すな」って。
「箱は飛ぶぞ」って。
荷物に逃げられた後は大変だからな。
お客様は受け取れないし、俺達も仕事を終えられない。
お巡りさんのところに行って、「箱が行方不明です」って報告しなくちゃならないんだから。
だから決して目を離しちゃだめなんだ。
でも、毎年必ず「心が痛いです」っていう優しい新人が一人はいるもんだ。
そういうやつには、「感謝を忘れないようにすればいい」って伝えるよ。
「毎年ある箱の供養をきちんと行えばいい」って。
この世はみんな、ハッピーになれるほど甘くはないからな。
どうしても、つらい思いをしちまうんだ、誰かが。
いつか、箱が逃げ出すことのない日が来るといいよな。