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ワールズダスト ~砂の海と星屑の記憶~  作者: Hekuto


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第69話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





 ここはサンザバールの首都であるバザール。スタールを襲った巨大な地震、それは首都であるバザールも当然襲っていた。しかしその被害はスタールとは全く異なる形で表れていた。


「いったい、なにが……」


 巨大な地震がバザールを襲った時、領主バシールは執務室に居た。しかし現在彼が立っているのは城塞として造られ、後に改築された館の屋上。今も城塞としての機能を持つ館の屋上で、彼は眼下に広がるバザールの街を見下ろす。


 何故彼がそんな場所で立ち尽くしているのか、それは執務室の窓から見えた光景を確認する為、自らの目を疑い真実を求めた結果、彼は最も見晴らしの良い屋上に駆け上り、予想以上の被害に立ち尽くしているのだ。


「バシール様! 避難をお急ぎください!」


「……どこに逃げよと申すか」


 息を切らせ追いかけて来たのは執事の男性、彼の言葉にゆっくり振り返るバシールは蒼白となった顔で問いかける。


 どこに逃げればいいのかと、


「そ、それは……」


 バシールに歩み寄った執事は自身の目でバザールの街を見渡す。


 執事の耳には屋上へと駆け上がる足音が聞こえていた。それは鎧を着た兵士達の足音、走り出したバシールと身軽な執事を心配して追いかけて来たのだ。しかしそんな音など気にならないほどに、街からの悲鳴が耳に刺さり、まるでこびり付く様に鼓膜へと纏わりつく。あとから来た兵士も今の光景を目にする事だろう、そして自分と同様に絶望するだろう、そう考えながらも彼は目の前の光景から目が離せない。


 彼らが見渡すバザールの街は大量の水に飲まれ大半の民家が水底に沈んでいる。バザールは、周辺貴族領の街に比べれば背の高い建物も多く、水に飲まれた人々は必死に手足を動かし高い建物に避難している様だ。


「マリクか」


「研究所が吹き飛んだようです」


 しかし、バザールは浅い盆地の中央に作られた土地ゆえに水嵩が増え続ければ何れどの建物も水没するだろう。唯一水没を免れるとすれば高台の上の領主館のみ、バザール全てを見渡せる領主館の屋上で、バシールは息子の名を呼ぶ。


「息子の事だ、無事ではあろうが……私が甘かったか」


「バシール様……」


 水の出所はマリクが管理する研究所の地下、それは地震とどちらが先だったのか、それとも同時だったのか、研究所の建物を吹き飛ばし現れたのは巨大な水柱、施設すべてを吹き飛ばしても尚余りある巨大な水柱は時間と共に市街地も侵食、大小様々な水柱が現れる頃にはすでにバザールの街は水に飲み込まれていた。


「助けられる者は一人でも多く助けよ、この城は頑強に作られておる。好きに使って構わん」


 研究所の側に建てられていたマリクの館は半壊、しかしまだその全体を水没はさせていない様だ。しかし領主として今優先するべきは息子一人の命ではなく、一人でも多くの領民を救う事、街には偶然立ち寄った貴族などもいる為、下手な行動は貴族生命すら奪ってしまいかねない。


『はい!』


 駆け付けた兵士たちは目の前の光景に震え、しかしバシールの言葉に驚くと表情を引き締めて自らの胸を自らの拳で力強く叩く。


「……ハルシャリラの言っていたことは正しかったか、マリク……やってくれたな」


 兵士達が駆け出し、執事が深く頭を下げ屋上から出て行くと、バシールは振り返りもう一度街に目を向けた。過去に何があったのか、小さく呟き背中を丸めた彼は深く息を吐き、その顔に怒りの表情を浮かべる。彼が見詰める街にはいくつも渦が発生しており、飲み込まれる人々の声、助けに入る者の声が交差する中、ようやく領主館を中心に兵士が動き出す。


 しっかりとその光景を目に焼き付けたバシールは、踵を返すと自らに出来る事を始めるために歩きだすのであった。





 一方、少し時間は遡りここはスタールとバザールを繋ぐ山道、そこは大きく地面が裂けており、山の上から落ちて来たのであろう大小の岩や石が山道全体に散らばっている。


「お、治まったか?」


「班長! 何人か落ちました!」


 暴れる馬を座らせて、その頭を守る様に傍で盾を頭上に構えていた男性は、未だに揺れる体を馬に支えてもらいながら盾を下ろす。どうやらこの場の命令系統のトップであるらしい彼は、班長と呼ばれ振り返る。


「さっさと引き上げろ、次が来るかもしれんぞ」


「ロープ持ってこい!」


「生きてるか!返事しろ!」


「な、なんとかー!」


 どうやら地震が突然発生したことで、山道に出来た亀裂の近くにいた数人がその下へと転がり落ち、一応声の大きさを聞く限り無事ではあるが独力で登って来れるような状況ではない様だ。


 班長の声によって走り出す兵士達は、落石でつぶれた木箱からロープを引っ張りだすと二人がかりでロープを引き摺り運ぶ。


「おし! ロープ降ろせ!」


 数人の兵士が体にロープを巻き付け姿勢を低くしたのを確認すると、ロープが地割れの中に投げ込まれ、亀裂の中では小さな足場にしがみ付く兵士がロープを掴んで腰のベルトに固定する。その姿を地割れの上から確認した兵士は救助者を引き上げる為、一斉にロープを掴んだ腕に力を入れるが、次の瞬間体を硬直させた。


「火球だ! 撤退信号だ!」


 その原因は突然の爆発音。


 スタールの直上高くで起きた爆発は赤い煙を風に棚引かせている。火球、緊急時に使用される狼煙の一種であるその爆発は一定間隔で同じ三連の爆発を繰り返す。


「あれは……撤収! 即時撤収! さっさと引き上げろ! 多少乱暴でも構わん!」


「ええー!?」


 兵士の一人が撤退信号だと声を上げるが、その声に訝し気な表情で振り返った班長は、一気にその顔を険しく歪めると大きな声を張り上げ、怒鳴るような声を聞いた崖下の兵士は悲鳴にも似た驚愕の声を上げる。


「街で何かあったのかもしれん。あとあれは即時撤退だ、撤退とはまた違う」


 一人の兵士が声を上げ、周囲の兵士が慌てた表情でスタールのある方に目を向けた先に出棚引く火球の信号、しかしそれは撤退信号ではなく、即時撤退という別の指示らしい。


「は、はい! すみません!」


「そこ! 即時撤退だ! 荷物は捨ておけ!」


 狼煙の読み間違えは死に直結する為、班長はすぐに間違いを正し、班長が間違いをすぐに正した理由を理解している兵士は蒼い顔で返事を返す。そんなやり取りを見ながら動き出す兵士達は、展開していた荷物を慌てて片付け始めるが、それも大きな声で注意を受ける。


「え?」


「即時撤退時は馬車と人員だけだ! 手に持つ少々の武装以外は置いていけ!」


 キョトンとした表情で手を止める兵士に班長は怒鳴った。撤退命令であればスタールだけでなくどこの街の警備兵でも同様にしっかり荷物は持ち帰るのだが、即時撤退と言う一段階上の緊急時には持ち物など手に持つ程度でそれ以外は極力持ち帰らないことになっている。


 これは迅速な撤退が第一とされるためであり、戦時においては怪我人も捨て置かれるか荷物のように運ばれることもある命令なのだ。悠長に馬車の荷台に荷物の積み込みなんてやっている暇は無い。


『はい!』


「……困ったものだ」


 班長の怒声により動き出す兵士は、まるでそれまでの動きに比べると倍速再生の動画の様で、崖下の兵士も随分と乱暴に引き上げられると、そのまま担がれ馬車に放り込まれる。


 その光景に思わず頭を抱える班長は、鱗馬に頭を鼻先で撫でられると、小さく溜息を洩らしながら馬上に飛び乗り、あっと言う間に準備を整えて行く力だけはありそうな若い兵士達の先頭を走るべく馬を移動させるのであった。





 一方、突然の火球に驚いているのは兵士達だけではなく、スタールで仕事をしていたガスターも突然の爆音に驚き、空に浮かぶ火球による狼煙の詳細を調べるべく職員を走らせていたが、それより早く警備兵の伝令が執務室に飛び込んで来た。


「伝令! 警備隊長及び治療院長の連名! 住民を高台へ避難させよ! 追って説明す! 以上!」


「……わかった。ご苦労だったな、行って良い」


 伝令兵曰く、治療院長と警備隊長の連名によって代官所に避難所設置の要望がなされていると言う。スタールの街においてその運営の長は代官であるが、長会議のメンバーである二人以上の長が連名で要望を出す場合、内容にもよるがほぼ命令と変わらなくなる。


 それほど緊急性が無い場合は連名など行われず個々人で要望がなされ、なされた人数の多さでその要望を通すか決めるのが代官であるが、狼煙の原因はこの後説明してもらえるのだろうと頷くガスターは、僅かに息が整わない兵士を労う。


「失礼します!」


「いろいろ気になるが、代官所に避難所を開け」


「はい!」


 胸に拳を当てる敬礼を見せて駆け出していく伝令の兵士。その後ろ姿にほっと息を吐くガスターは、立ち上がって様子を窺っていた職員に避難所を開く様に指示を出し、執務の為に緩めていた服の帯を締め直す。


「他の高台にも連絡、なるべくスペースを確保しろ」


「はい!」


 駆け出した職員に声を掛けられたのであろう職員が執務室に入ってくると、彼等に目を向け必要な指示を出していくガスターは、元気よく返事を返して駆け出す職員の背中を見送り微笑むと、薄い上着を一枚羽織る。


「何かあるのだろう、あの二人が連名だ……まさか」


 いくつかの魔道具が取り付けられた上着をはためかせ歩くガスターは、妙な二人の連名に嫌な予感を感じつつ、同時にある人物の姿を思い浮かべて冷や汗で背中を濡らす。





 ガスターに冷や汗を流させるのは当然だが魔法使いのユウヒ、彼は警備隊長のセリムと治療院長のアネモネに許可を得てスタールの街を囲む大きな外壁、その中でも少し東寄りの北側外壁へ向かって歩いていた。


「ほん、ほん、ほん」


<!??!!!?>


 周りを取り巻く多数の精霊から話を聞きながら軽い足取りで歩くユウヒは、とてもとてもやる気が、感じられない表情で空を見上げており、時折頷くがその度に顔から覇気が抜け出て行くかの様だ。


「なるほど? でももう少し早めに教えてほしかったなぁ」


<!????!!!!>


 どんな話を聞いているのか、視線を前に戻したユウヒは納得した様に頷くと笑顔を見せるが、もう少し早く言ってくれと笑顔を苦く崩してしまう。その言葉に慌てるのは水の精霊、何も言い訳出来ないがとりあえず言葉を重ねようとする精霊達に、ユウヒは小さく笑う様に息を吐く。


「責めてないから大丈夫だよ、ただ」


<?>


 責めてないと言うユウヒの言葉は本心である。本心であるが故に精霊達もユウヒの言葉に落ち着きを取り戻す。しかしどうにもユウヒの心は優れない様で、その様子に精霊達はユウヒの側で不安そうに瞬く。


「もう少し心の準備がしたかったな」


<…………>


 心の準備が欲しかった。そう呟くユウヒに今度こそ申し訳なさそうに光量を落とす精霊達。


「お仕事一生懸命大事だけど、困った時に頼れる相手がいるなら頼りなさいな」


 水の精霊は精霊の中でも生真面目な気質であり、しっかり最後まで仕事を続けるが、止め時がわからなくなると致命的なところまで突っ切ってしまう。そんな性格だと話していたのは風の精霊、その言葉に既視感を感じていたユウヒは、優しく頼れと声を掛ける。


「まぁ俺はそんなに頼りになるかわからんけど」


<!?>


 自分が過去に経験した後輩の姿と重ねて精霊を見るユウヒに、水の精霊は少し嬉しそうに困惑して見せ、その姿にユウヒ目を細めた。


 以前出会った山脈の向こうの精霊は、無邪気な中にも成熟した考えを持っている者も居たが、この砂の海の精霊は総じて幼く、それ故にユウヒの中の保護欲が擽られてしょうがない。


「話だけでも変わるからさ」


<…………!>


「そうしてくれ、それでこっち側であってる?」


 そんな精霊達からいったいどんな話を聞かされたのか、元気に頷く水の精霊に苦笑を漏らすとユウヒは立ち止まり、前を指さして精霊達に問いかけた。彼が指差す先はすぐに壁、スタールの街を砂や風などの自然から守り、魔物や盗賊と言った脅威を跳ねのける為の外壁である。


<!>


「しっかりとした外壁だけど、耐えられない感じ?」


<!!>


 ユウヒの問いかけに頷く精霊達が指し示す方向からは、現在スタールを滅ぼしかねない脅威、【水】が迫っていた。水の出所については精霊もたくさんと言うばかりでユウヒもわからない様だが、その一つがバザールであることは確かであろう。


 またその水量は目の前の大きく分厚い外壁をもってしても防ぎようがないらしく、ユウヒの問いかけに頷く精霊の様子を見る限りまったく役に立たないとは言わないものの、街に甚大な被害を与えるであろう事は確かなようだ。


「耐えられないのかぁ……よっと!」


 精霊の声に思わず唸る様に呟くユウヒは、周囲を見回すと軽い声と共にビル三階分以上はありそうな外壁の上に跳び上がる。


「水は厄介だよなぁ? ちょこっとなら何ともないけど、津波とか量が増えると人じゃ抵抗できないよね」


 飛び上がった外壁の上もそれなりに広く、ちょっとした運動なら出来るほどに厚みがある壁だ。しかし、そもそもトルソラリス王国で広く用いられる外壁の建築様式は、風と砂から街を守りつつ、照り付ける陽射しで住民が倒れないように一定の通気性を与える作りになっており、そこに水を完全に遮断すると言う機能は無い。むしろ少ない水を効率よく取り入れんとする構造なのだから水に強いわけがない


 さらにそこへ津波と変わらない水が襲来すると言う精霊、彼女達が外壁で止められないと言うのも致し方ないであろう。


「お? 土煙だ」


 そんな水の塊が迫って来ているとは、とてもじゃないが思えない静かな地平線の彼方に目を向けるユウヒは、遠くから近付いてくる土煙を見つける。


「兵士の人たちは間に合ったようだね」


<!!>


 その土煙は山道とは別の街道で地震の復旧作業を行っていたスタール警備兵であった。彼らもまた山道の警備兵たち同様、最低限の武装以外は何も持たず、先行する騎兵の後ろを兵員輸送用の馬車が荒っぽい手綱さばきで追従している。


 ほっと息を吐くユウヒに周囲の精霊達も嬉しそうで、よく見ると馬車の後ろには風の精霊が付いて来て追い風を送っている。


「お願い聞いてもらえてよかったよ、これで何も無かったら……逃げるしかないな」


<!!!>


「それは無いか」


 ただの勘、しかしいつも窮地を救ってくれる自らの勘を信じてのお願い、それを快く承諾してくれたセリムに感謝するユウヒ。しかし何も起きなければただの虚言でしかなく、そのもしもを考えて不安になるが精霊がその心配をより大きな危険の接近で打ち消してしまう。


「水か……アメリカでやった感じで行きたいけど、平地だからダムに出来そうな凹凸が無いんだよなぁ」


 小さく肩を落として精霊に笑いかけるユウヒ。現在接近しているのは地球に帰って遭遇したドームを発端とする事件、その中でもアメリカを襲った未曽有の危機と似たような状況である。


 アメリカのドームが崩壊したことで断片世界を満たしていた水が一気に地球へと流入し、同時に異世界の軍勢を引き込んだ事件。規模こそ多少小さいと思われるも、起きる現象に大した違いはなく、またアメリカは高い山に囲まれダムも作りやすくはあったがスタール周辺は風と砂による風化で平地が多く、トルソラリス王国全体の地形が砂海に向かって緩やかな傾斜となっている為、スタールに到達する頃には街を押し流すのに十分な勢いが付いているというのが精霊達の予測である。


「大量の水か、平地なら受け流すしかないか」


 膨大な量の水も凍りのダムで堰き止めたユウヒ、条件さえそろえば堰き止めも可能であるが、場所が平地となれば守る街から水を逸らすほかはない。


「あとは遊水地とかあると良いよな」


 どれほどの水が流れ込んでくるかは不明であるが、出来る事は全部やろうと考えを巡らせるユウヒは、壁の上からスタール周辺を見渡す。ユウヒが立っている外壁は北北東の辺りに位置し精霊が言うにはその方向から水が迫ってくると言う。


「まだちょっと時間あるよね?」


<……>


 水が見え始めるまでにはまだ少し猶予があるようだが、ユウヒは正面から吹いてくる風に僅かな湿り気を感じてそれほど猶予は長くないことを感じる。


「あの辺は、畑かな?」


<!>


 遊水地とは、川が増水した際に氾濫を抑制する区画や溜池、しかしスタールの周辺には川は無く、スタールを潤す水は全て地下からの湧き水、住民の頭の中に遊水地などと言う考えはない。


 右手側に広がるのは薬草が枯渇した林とその奥に広がる森、その南側にはクサチヘビが大繁殖していた小高い丘を中心とした草原、前方の広く切り開かれた街道は水が流れ込んで来たら川となるだろう。その街道から少し離れた西側にはスタール農耕組合が主導する農地が広がっているが、湧き水はあれど広大な農地を賄えるものではない為、外壁の上から見るとずいぶんこじんまりした印象がある


「どうせ水の中に水没したら駄目になるだろうし、あとでごめんなさいするしかないか」


 その一段低くなった農地に目を付けたユウヒは、手を合わせながら長会議で見かけた小柄な女性を思い浮かべ謝罪の念を送ると、自らの内から魔力を汲み上げ始めた。


<?>


「洪水対策には遊水地かなと思って、流石に地下神殿を作るのは無理だけど大穴くらいならね?」


 不思議そうに瞬く精霊に苦笑いを浮かべるユウヒは、これから街道に面した一帯と農地の一部に巨大な溜池となる大穴を作るつもりの様で、本当なら地表に影響の及ばない地下に大きな空間を作りたいなどと宣う。どうやら大きな危険を前に箍が緩んでいそうなユウヒに、精霊達は少し心配そうである。


「あとは掘り出した土を固めて壁にして、底を土台に氷壁で補強したらいいんじゃないかなぁ?」


 だが、ユウヒも自らの欲求の為だけに大穴を作りたいわけでは無く、スタールを水害から守る明確なビジョンを持っての行動であった。計画は単純、風通しの観点から隙間が多い外壁を囲む様に隙間なく土壁を作り、その壁を土台にして以前にも使ったような氷の壁を生成。津波の様な、それでいて洪水の様な、地球でもちょっと想定しない様な異世界の災害に立ち向かうつもりの様だ。


「流石に初めての事だから何とも言えないけど……そう言えばこの街って外堀無いんだな? ……あれ? 元々外堀自体見てないな」


 頭の中で構想が纏まっていくにしたがって練り上げられた魔力は膨れ上がり、準備が整ってくると心に余裕が生まれて疑問が生じる。そう言えば砂の海と言う地域に来てから一度も堀を見ていないと、水の張ってある堀どころか、空堀も見ていないと不思議そうにこれまでを思い出すユウヒ。


<……!>


「あ、砂で埋まっちゃうから作っても意味無いのね?」


 そんなユウヒに茶色の精霊が飛び上がりその理由を説明する。どうやらこの辺りでは砂と風の影響で堀を掘ってもすぐ埋まってしまう為、昔から堀を用いた防壁は利用されていないらしく、もっと北に行けば堀がある建物も存在するようだ。


<!!>


「へぇ昔からそうなんだね」


 ユウヒの疑問に突然饒舌になる精霊達、彼女達が語る歴史について関心を示すユウヒであるが、その姿がまるで得意分野を語る早口ヲタクの様に見え、何とも言えない親近感を感じているのだが、同時に精霊達にはそう思った事を絶対秘密にしておこうと心の中で固く誓う。


 大抵のヲタクはその事を指摘すると心に傷を負うし、ユウヒ自身わかっていても止められないその衝動、それ故に負った心の古傷が疼くのだから。



 いかがでしたでしょうか?


 乾いた大地で水の気配を感じるユウヒは、スタールの街を守る為に準備を始める。ユウヒは街を守れるのか、次回もお楽しみに。


 それでは、今日はこの辺で、皆さんの反応が貰えたら良いなと思いつつ、ごきげんよー

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