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ワールズダスト ~砂の海と星屑の記憶~  作者: Hekuto


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105/160

第105話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「なんか慌ただしいな」


 原因は大体が貴方です。と誰かに突っ込まれそうなユウヒの呟きは、街の喧騒に消えていく。


<!>


 唯一聞いていた精霊は楽しそうに話す。


 今日の付き添い精霊は風の精霊の様だが、ユウヒが見渡す視界にはちょろちょろと視界に入り込む精霊の姿が見られる。


「そのうちわかる? また何かしやがったのこのスットコドッコイどもめ」


<♪>


 そのうちわかると言われて彼女達の暗躍を感じたユウヒは、伸びてきた髪先を握る精霊を指先でつつき、つつかれる精霊は身じろぎして楽しそうな笑い声を洩らす。


「楽しそうにしちゃって……まぁいいか」


 何をしたのか尋問する為につついたが全く効果がないようで、諦めたユウヒは小さく鼻から息を吐くと、止まっていた足を動かし商店が連なるエリアに入っていく。


 何を売っている店か、看板や文字ではなく直接商品を店先に並べて見せるスタイルの、王都でも職人が良く利用する商店街。ブレンブは朝早くから出かけていた為、メイドにお勧めの商店街を聞いてやって来たユウヒは、広い商店街の石畳をお上りさんの様にきょろきょろしながら歩く。


 色々な物が並ぶ商店街の道は広く、時折荷車に商品を載せた人間がすれ違い挨拶を交わしている。


「ここは鉱石かな? お、水晶もあるな」


 そんな様子に目を向けていたユウヒは、視界の端に入った山積みの鉱石の前で立ち止まると、屈んで商品を物色し始めた。よく見るとユウヒと同じように店先の商品を物色する者は多く、そう言った人達には街の巡回を行う兵士の視線が向けられている。


「うーん、どれがいいかなぁ」


「ん? なんか入用か? 外に置いてあるやつは大したもんじゃねーぞ?」


 店から出て来たのは太マッチョの男性、身長をもっと低くしたらドワーフにも見えそうな彼は顎鬚を掻きながらユウヒに声を掛けた。


 どうやら店先に並べられているのは、見せる用の商品であってあまり品質の良い物では無い様だ。声を掛けたのはユウヒが品定めする姿に職人の雰囲気を感じたからの様で、男性は面白そうに笑って店の中に手招きして見せる。


「そうですか? 面白いものもあると思ったんですけど」


「外に置いてるのはでかくて重い物ばかりだ、盗まれっちまうからな、質が良いのは中だ。入ってみて行きな」


 巡回の兵士による窃盗防止の他に、店もそれなりに店先の商品が盗まれない様に対策はしているようで、店員、いや店主であろう厳つい雰囲気の男性が言う様に店先に並べられている商品はどれも大きな原石で、ちょっとやそっとで持ち運べるようには見えない。


 そのぶん品質もそれほど良いわけではないと言うが、ユウヒには何が見えているのか、金色の瞳を瞬かせて小首を傾げる。


「ありがとうございます」


 トルソラリス王国は国土の半分を砂漠が占めている暑い国である。比較的涼しい北の王都近辺も夏の日本にも負けない陽気。それ故、来店した客に冷えた水を出すのは商人としては最上の持て成しである。


「礼なんていらねぇよ商売だ。良い客は捕まえとくに限るってもんだ」


 素焼きの瓶から汲んだ水を陶器の器に入れて差し出されたユウヒは、一言お礼を口にして受け取ると、良く冷えた水がぬるくなる前に口を付けた。相手の出した水を疑わずに口を付けるユウヒに笑みを浮かべる店主の男性は、おすすめの品を説明する為に瓶に蓋をすると立ち上がる。


 一見何の疑いも見せていない様で、ユウヒはしっかり疑っていた。というより水の安全性は確認していたという方が正しい。旅行先で生水を飲むなとは良く聞く話で、実際に大事な話だからだ。右目で確認して問題なかったから口に付けただけで、ユウヒはこれまでに問題がある水に関してはこっそり合成魔法で無害化していたりする。


<……>


 色々な石や鉱石、インゴットなんかが置いてある店は鉱石系の商品を扱う店。ユウヒが屈んで見比べている石はどちらかと言うと宝石の原石などが多そうだ。


「ふぅん……お、これいいね。不活性にも良い性質がある」


 彼の頭の上でその様子を眺めている風の精霊は、特定の石をユウヒが手に取る度に輝きを増している。どうやら風の精霊にとって相性のいい石もあるようで、天窓から差し込む光に石をかざす度に見える精霊にユウヒは苦笑を浮かべた。


「そいつはちと高いぞ?」


 ユウヒの右目は物体の情報を全て見通す。ただし全て見通す様に使えば、あっという間に視界が塞がり何も読み取れなくなる、ある意味で欠陥品。しかし手加減しても一流の鑑定士の様に素材を見通せているらしく、ユウヒのより分ける姿に店主は感心した様に頷くと、ユウヒが気に入った石は高いと伝える。


「いくらです?」


「小金で9だな」


「うぅん……鉄鉱石もいくつか入れて9にならない?」


 小金9枚、一般人ならふざけるなと言いそうな値段の石だが、見る者が見れば妥当な値段、そして今のユウヒは金持ちである。購入を躊躇する様な金額ではなく、しかし少しでもお得にと思うのは庶民の性であり、この場での交渉は正解なのか店主は鼻髭を持ち上げるような笑みを浮かべた。


「鉄鉱石ならこの先で買った方が安いし質も良いぞ? まぁうちとしては構わんが」


 しかし交渉に上げた鉄鉱石については不満があるらしく、ユウヒの鑑定眼を疑うというよりは、なんでその商品を選ぶんだと不思議そうに首を傾げて見せる。どうやらユウヒの提案は店側にとって有利な取引の様で、フードの奥で笑みを浮かべるユウヒの表情に店主は困った様に肩を竦めた。


 その表情と青と金の目に、何か全て見透かされているような気配を感じたようだ。事実、店主は質の良くない鉄鉱石をつかまされ困っており、ユウヒが指差し、風の精霊が降り立った鉄鉱石は、その問題の品であった。


「送って貰ったり出来たりしません?」


「小金5枚以上ならタダで持ってってやる。どこまでだ? 宿か? 市場か? それとも職人街か?」


 職人も良く利用する市場では当たり前の無料の輸送サービス、これは王都内の渋滞防止などの意味もあって国からも推奨されており、補助金も出るとあってどこでも受けられるサービスだ。


 大荷物を持って帰らなくていいと言う事でほっと息を吐くユウヒに、お上りさんかお使いか、そう思って少しサービスしてやろうと思った店主は、心の中でもう少しサービスすることを決めたのだが、


「貴族街のリステラン伯爵邸まで、ユウヒの荷物と言ってもらえたら大丈夫です」


「はあ!? おま貴族か! ああいやお貴族様でしたか?」


 貴族の名前が出た瞬間、その笑みを強張らせ真っ蒼な顔で腰を低くする。平民にとっての貴族に対する反応としては至極一般的な反応であるが、ユウヒはその劇的な反応に驚き目を瞬かせ、ユウヒの肩に腰を落ち着けた風の精霊は楽しそうに笑う。


「いえ、冒険者です。客として泊っているんですよ」


「あ、あぁそうか……寿命縮んだぜ。敬語使った方が良いか?」


 ユウヒの説明に心底ほっとした様に息を吐く店主は、自分の気持ちを落ち着ける様に顎鬚を何度も扱き、もう一度息を吐くと少しおどおどとした声で問いかける。貴族にかかわりのある人間となれば、社会の低階層である冒険者であろうと話は変わるのだ。


 平民と思った冒険者が実は貴族だったり、なんだったら王族のお忍びだったなんて話は事実としてある話。それで問題が起きて吟遊詩人の歌にもなるくらいには昔から実際にある話で、トルソラリス王国の現国王も似たようなことをやっているので、国民としては洒落にならない話題なのだ。


「いえいえ、普通で良いですよ」


「ふぅ……わかった運んどく」


 言質はとったと言いたげな表情で背筋を伸ばし直す店主は、ユウヒが入店した時よりいくぶん背筋をしっかり伸ばすと運搬を約束し、同時に細心の注意を肝に銘じる。


「ありがとうございます。それじゃこれで」


「金貨かよ……本当に貴族じゃないんだよな?」


 店主が自分の考えが間違ってない事を認識するのにその金貨の輝きは十分であった。


 何故ならただの平民は金貨なんて一生使わなくてもおかしくはない。小金12枚で金貨一枚、しかし小金が何十枚も必要となる会計であっても平民は金貨なんて使わない。なんだったら倍の枚数が必要でも銀貨で払う人間の方が多い。


 それくらいに平民は金貨に縁がない。それを気軽に取り出す時点で只者では無いのだ。


「貴族からの報酬です」


「なぁるほどな……まだ何か買うのか?」


 商人であれば一般人よりは縁がある金貨、しかしそれも平民相手の仕事をしていれば縁はなく、もし手に入れる機会があったら験担ぎにと大事のに保管する物であってただの買い物に使うものではない。そんなものをほいほい使う姿から、まだまだ買いたいものがあるんじゃないかと思う店主。


「ええ、何が売ってあるかわからないんで、フラフラ見て回る感じですかね?」


 その考えは正解であり、暴走精霊の件で創作意欲が沸いているユウヒは、良質な素材を求めて王都の商店街にやって来ているのだ。


 しかし、そうなると平民向けの商店街としては問題がある。


「あー……ちょっと待ってろ、家から手伝いだしてやる」


「え?」


「そんで家からまとめて送ってやるよ、ああ当然無料だ金はとらん」


 そのため店主は機転を利かせてユウヒに手伝いを提案する。しかも無料のサービスだというのだからユウヒは驚く。


「そんな迷惑じゃ」


 相手の迷惑を考える、それは善良な人間の反応であり、店主もその事に笑みを浮かべて見せるが、すぐにため息交じりに肩を落とす。


 店主が店を構えるのは、王都にある商店街であるが、主に平民や職人を相手にする商店街であって貴族が利用する場所ではない。


「今の会話をあっちこっちでしてみろ? その方が騒ぎになるぜ」


「んんん……?」


 そんな場所で貴族の様に金貨をばら撒いて買い物しようものなら、どんなによく考えても絶対に問題が発生する。どんなに客商売と言っても悪い事を考える商人はいて、その辺を理解していないカモは直ぐに餌にされるのだ。


「変な連中にも目を付けられるからな」


「なるほど」


 それ以外にも大金を持ってると分かれば、回りくどい事せずに直接奪おうと考えるものだって現れる。その事を心配してくれたのだと気が付いたユウヒは、納得した様に頷き笑みを浮かべた。


「ここで商売してるんだ。面倒事は勘弁だ」


「ありがとうございます」


 ニコニコと笑みを浮かべて店主と握手するユウヒ。その肩の上で寛ぐ風の精霊は、楽しそうにその光景を見詰め、店主に目を掛ける。


 店主はとてもいい判断をした。彼女には見えているのだ。不用意にユウヒの懐に手を伸ばした人間がどうなるか、どんな被害が出るのか、彼女は精霊だから良くわかる。ユウヒの心を感じられる精霊は、彼の心のやさしさと同じくらいに大きな獰猛さが見えているのだ。


「……あ、でも家のもんに手出したらぶっ殺すからな!」


「ん?」


 精霊は楽しそうに笑う。今日も面白いものが見れたと、そしてこの後も楽しくなりそうだと笑い、良い噂話のネタが出来たと機嫌よく瞬く。





「お兄さん変な物ばかり買うんだね?」


「んーまぁ必要だからね」


 精霊の予想は大当たり、何に使うのか分からない物を次々に購入していく。何を作るつもりなんかまるで想像できないラインナップに、精霊だけでなく手伝いとしてユウヒを案内する店主の娘も不思議そうに首を傾げる。その手にはユウヒがどこで何を買ったかのメモがされた白木の板が握られていた。


「冒険者って言ってたけど技師なんじゃない?」


「なんで?」


 そのメモの内容に視線を落とすのは、高校生手前と言った感じの少女。彼女はその購入内容にユウヒが冒険者であると言う事に疑いを持ち、技師では無いかと思ったようだ。


「魔道具技師が買いそうな物も多かったし、商品見る時の目が職人ぽかったし」


「そうかな?」


「そうだよ」


 ずいぶんと人懐っこい印象のある少女曰く、購入品の内容もユウヒの言動もまるで魔道具技師のようだったと話す。


 技師と言われると職人の中でも一部の職人を差す言葉であり、その中でもユウヒの言動は魔道具技師と言われてもおかしくない様で、そう言われても間違いとは言い切れない。なにせ実際に国宝級の魔道具を作って王家に献上しているのだ。ちゃんとした手続きを踏まえていれば、今頃国から正式な魔道具技師として認められていてもおかしくはない。


「作るのは好きだからね」


「へぇ……私も作るのは好きなんだ」


「それじゃ将来は職人?」


 それでもユウヒにとって物作りは趣味であり、自分のことなんかより今は目の前で楽しそうに話す少女のことの方が気になる様だ。変な意味ではなく、どんな話もユウヒにとっては新鮮な驚きがあるからだ。


 決して疑惑の視線を向ける巡回の兵士が考えているような事は考えていない。


「んーどうかな、職人は男が多いし女は舐められるから」


「そうか、そう言うのはどこでも同じだね」


 そんな話の中にも新鮮じゃない話もあるようで、トルソラリス王国でも男の世界となった場所に女性が入るのは大変なようだ。


「それじゃここまで、荷物はちゃんと送るからね!」


「ありがとう。そうだこれ」


 それから小一時間ほど、商店街を回って鉱石屋に戻って来たユウヒは、たくさんメモを書き込んだ白木の板を抱きしめる少女にある物を手渡す。


「……え? なにこれ」


 手渡された少女はありえない物でも見た様に目を見開き動きを止め、絞り出す様に問いかけるとユウヒを見上げる。


「案内の御駄賃?」


 少女の開いた小さな手に置かれたのは3枚の小金。


「御駄賃に小金出す奴なんていないよ!? やっぱ貴族じゃないの?」


「いや、細かいのが残ったからね」


 困った様に頭を掻くユウヒであるが、少女の言葉は当たり前である。地球の価値に換算してもそんなお駄賃をほいほい渡す人間はいない。いないのだが。今のユウヒはお金持ち、そして使う先はそれほど多くなく、また金貨や小金に対する認識もどこかおかしい。


 それ故、お札を使ってあまった百円玉でガチャを引くような感覚で少女に御駄賃を渡したのだ。それだけで今のユウヒの懐事情がどんなものか分かると言うものである。


「えぇ……あ! そうだはいこれ」


 何より悪意が無いのが質の悪い所だろう。呆れた少女は何か思いつくと、その小金をユウヒの手を包む様に握って返す。


「御駄賃いらなかった?」


「違うよ! そのお金でお兄さんの作品が買いたい。何か作るんでしょ?」


 どうやら現金と言う刺激的すぎる物より、もっと刺激の少ない物にしてほしい様だ。トルソラリス王国でも、贈り物に現金を用いるのはいかにも生々しいとして嫌われる風潮はある。


 しかしその選択は、ユウヒを相手にした場合はあまり正解とは言えない。


「なるほど、良かろう。出来たら持ってくるよ」


「やった! それじゃバイバイお兄さん!」


「ふむ、何を作ろうかな」


 何せこの男、こと物作りにおいては頭がおかしいと定評があるのだ。ユウヒの事を知っている人間からすれば現金で貰った方がまだ平和的だと思っただろう。しかしそんなユウヒの事を良く知る人間などこの世界にはまだ少ない。


<!>


 よく知るのは精霊くらいであろうか? 神くらいであろうか? しかし知っている者もまた、人の理解の外にいる。


「元気な子は良いものだね」


<!!>


 要は止める者がいないのだから、ユウヒの善意はどこまで行くのか、それは誰も知らない。



 いかがでしたでしょうか?


 止める者のいないユウヒの善意はどこまでも膨れ上がり突き進む。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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