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<R15>15歳未満の方は移動してください。

検査台から愛をこめて

作者: jima

 ちょっとだけ変態度が強いため、念のためR15としました。楽しんで読んでいただけたらうれしいです。

 今年もこの季節だ。俺はバリウム検査台に立つ。女性の検査技師がコップを渡してくれた。

「発泡剤です。ゲップをしないでくださいね」

 これがまず第一の関門だ。胃を膨らませるための発泡剤だが、どうしても俺は我慢できずゲップをしてしまう。意識すればするほど、すぐに「ウェップ」と出てしまうのだ。みんな、どうやって我慢してる?

「ゲフ」

 ほら、出た。技師が俺をじっと見る。

「出ちゃいましたね」

 笑顔が怖い。またもう一包、薬と水の入った紙コップを渡された。

「今度は我慢してね」

 よく見ると中々の美人で胸が大きい。俺だって我慢したいのだけれど、なのだけれど。

「グエェェップ」

 また出ちゃった。そんな冷たい眼で俺を見ないでほしい。何かゾクゾクしてきた。あれ、俺って変?

「大丈夫ですよ。もう半分だけ飲みますか」

 発泡剤を半分飲んで、とにかく意識しないように頑張る。俺は技師の胸のあたりをじっと見た。

「ではガラスの向こうの方から指示するので、頑張りましょうね」

 うん、俺頑張る。この試練に打ち勝って、ボインの技師さんに褒めてもらうんだ。ガラスの向こうからマイクで指示する声が聞こえた。

「はい、では左手の方にあるバリウムを一口飲んでください」

 バリウムはX線で胃の形がわかるように飲むドロドロの白い造影剤だ。大きなコップに2杯くらい飲まされていた以前の検査よりはマシだが、それでも中々の試練だ。少しだけ甘い感じがするのが益々嫌だ。でも褒めてもらうために無理矢理一口笑顔で飲む。笑顔で飲むと何か検査にいい影響が出るかというと、勿論ない。

「じゃあ、後に倒します」

 検査台が後方に倒れて俺は仰向けに寝た状態になる。

「一周くるりと回ってみましょう」

 ううん、あのボインの美人技師さんの指示で一周回ったりすると、それはそれでちょっと興奮するな。俺って変か?

「はい、今度は逆に回ってください」

 はあはあ。

「はい、そこで止まって」

 はいはい。ひいひい。

「検査台が少し傾きますよ」

 うあっ。はひはひ。

「元に戻ります」

 うえええっ。

「残りのバリウムを半分飲んでください」

 おうおう。はあはあはあ。

 俺はハヒハヒいいながら指示通り動いていく。またゲップが出る。

「ゲフッ」

 技師がガラスの向こうで俺をにらんだ。

「しっかりしなさい、メッ」

 おおう。わかりました。頑張ります。とにかく懸命に検査をやりとげて褒めてもらうんだ。


「残りのバリウム全部飲んじゃってください」

 うううううううう。ぐぶぶぶ。

「じゃあ、右手の方の牛丼も一口頬張って」

 ムグムグ。

「生卵もかけていいですよ」

 はいはい。パカッ、ドロドロ。

「牛丼、全部食べちゃいましょう。」

 むぐむぐむぐ、もう食べられない。技師の方をチラリと見る。

「食べてください」

 冷たい眼のままもう一度繰り返される。うう。

 もぐもぐ、ハアハアハア。

「はい、またそこで3周まわって、それからワンと鳴きましょう」

 おうおう。おうおう。おうおう。

「ワン」

「台を倒します。完全に逆さになりますから墜ちないようにしっかりレバー持ってくださいね」

 ああああああ。無理だ。ぐぐぐぐ。技師が冷たい眼で叱責する。

「墜ちるな」

 うう。

「墜ちたら、最初からですよ」 

 何ですと。うううううううう。駄目だ。俺は頭から落下した。




 午後の診察室、俺は椅子に座って審判の時を待っていた。俺の前には美人で巨乳で美人で何だかSっ気のある検査技師さんと、美人で眼鏡で泣きぼくろがある女医さんが並んで座っている。検査の結果の資料を二人で肩を寄せ合って眺めながら、時折こちらをチラチラと見る。

「ほら…あの。」「ウフフフ、いやだ」「根性無しだし」「フフ、でもちょっと可愛い」

 コソコソと話しながら、俺を指さしたりする。俺は心細くなって問いかけた。

「あの…結果はどうだったんでしょう」

「勝手に口を開けない!」「黙ってなさい!」

 同時に二人にきつい口調で怒られ、俺は思わず2滴程ちびった。

 ようやく女医さんが口を開く。

「フフフフ、発泡剤を二包半とバリウムを人の2倍、それから牛丼を一杯食べたのね」

 俺は頷く。

「はい、卵もかけました」

 技師が俺のスネをハイヒールで蹴飛ばす。

「ぎゃっ」

「聞かれてないことは言わない!」

 あおう。俺は黙って何回も頷いた。


 女医さんがじっと俺の目を見て微笑みかける。

「よくわかんないけど、お腹は丈夫のようですね。フフフフフフ」

 はああああああん。俺は昇天した。



こんな検査が受けてみたい!…っておかしいですかね?

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