天使の降る町
初めに天使が降り立った時。
人々は愛を捧げ慈しんだ。
やがて天使が天上に帰った後に。
天使は人間の愛を天上へ触れ回った。
次に天使が降り立った時。
人々は愛を捧げ慈しんだ。
やがて天使が天上へ帰る際に。
人間に小さな羽根を与えた。
人間はそれを大切に扱ったが。
ある日、羽根が傷つき光を零した。
零れた光を浴びた王様は病が治り喜んだ。
しかし傷ついた羽根はその後光を失った。
三度目に天使が降り立った時。
人々は愛を捧げ慈しんだ。
やがて天使が天上へ帰ろうとした時に。
人間は羽根を求め訴えた。
太陽は廃墟を照らしかつての狂乱を明らかにした。
磔にされた謎の骸骨。
町中で発見出来る小さな羽根。
そして自殺したかつての住民たち。
子供は言った。
「天使さんは羽根をあげたくなかったのかな」
彼は言った。
「もはや語る者はいないよ」
住民たちは全員が遺書を残していた。
内容は皆同じ。
『私は許されない罪を犯した』
子供は言った。
「後悔したから死んじゃったの?」
彼は言った。
「どうやらそのようだ」
「天使さんは皆と仲良くしたかっただけなのに」
子供の声が虚しく響く。
羽根に込められた光は天使の心。
住民たちは天使の心を受け取ったのだ。