09.敵意がむき出しです
ラヴィーニアの属性が光属性に変わった事を手紙で報告すると、すぐに返信が送られてきた。
風魔法は便利である。
そしてミーアにメイク、ヘアセット、そして煌びやかなドレスを着せられたラヴィーニアは放心状態……されるがままである。
あれよあれよという間に馬車に詰め込まれ、家族と共に王城に招待されて国王の前に立って居た。
「……顔を良く見せてくれ。名は」
「ラヴィーニア・ロンバルディと申します」
「ディエ、説明を」
「はっ……陛下」
ディエが目配せすると、静かに頷いたフィンは耳を後ろから塞ぐ。
(何も聞こえない……)
突然のフィンの行動に戸惑っていた。
何か意味があるのだろうか。
「ラヴィーニアは自らの"呪い"の事を聞くと倒れてしまうのです。何かを思い出させないように掛けられたもののようです」
「ふむ、呪いか。解呪は出来そうか……?」
「ルドヴィカに見せたところ……複雑すぎてとても解けないそうで」
「何……?本当か、緑の魔女よ」
「はい、陛下……あまりにも複雑なので解呪出来るかどうか。それに禁術の類かもしれません」
「それ程までに強い呪いを一体誰が……。しかし呪いが解ければ光属性の魔法は無くなるのか?」
「それは何とも言えません……故にラヴィーニアの前では魔法と呼ばせて頂きます」
「理由は分かった。手を離してやれ」
「はっ……!」
フィンが耳元から手を離して、さっとその場から離れる。
「???」
「……ラヴィーニアに婚約者は居たか?」
「赤の魔女……コスタ家の次男、アルノルドと婚約しております」
「ほう……ではラヴィーニアに問おう。婚約者であるアルノルドを好いておるか?」
「えっ……?」
「ラヴィーニアが良ければ、王家に嫁がぬか?」
「……!!」
「陛下…………!」
周囲がザワザワと騒ぎ出す。
突然の申し出に驚いたのは自分だけではなかった。
国王直々のお誘いに固まるしかなかった。
困った……頼まれたら断れない。
押し切られたら、もっと無理である。
「俺はお断りだ……こんな氷みたいな女は」
「ステファノ……口が過ぎるぞ」
「はっ……父上はこの女の性格を知らないんですよ。アルノルドも言っていたぞ?ラヴィーニア嬢とは合わないとな」
「黙れ、ステファノ…………次に勝手に口を開いたら、この場から退出しろ」
「ふん……」
このラヴィーニアに敵意を剥き出している男こそ、攻略キャラクター達の中で、堂々のセンターを飾る、第一王子であるステファノ・リッチ・ヨーリナンドである。
顔面偏差値はトップクラスなのだが、性格が俺様ドS枠だった為、蜜柑の時には断トツで苦手だった。
何故ならば、この手の男は此方が断れない性格なのを知ると、色々と命令して都合の良いように使うのだ。
関わってはいけないランキング第一位である。
故に、このダイアモンドルートだけは絶対にプレイしないと決めていた。
というよりもクリア出来る自信が無い。
しかし、キャラクター人気投票で圧倒的一位だったステファノ。
ちなみにラヴィーニアは七位だった。
かなり不服である。
(こんな俺様野郎がなんで一番人気なんだろう……)
その理由はプレイしていないので、判らずじまいである。
「お言葉ですが殿下、魔法の影響で少々性格が変わっておりまして……」
「何だと……!?そんな呪「ゴフン、ゲフンッ……!」
ステファノの言葉に合わせてディエが、すかさず咳き込んだ。
「……。そんな魔法は聞いた事ないぞ?」
「我々も驚いております……」
先程から値踏みするような視線が、そこら中から降り注ぐ。
それをヘラリと躱しながら、心の中で叫んでいた。
(帰りたい……!!)