06.また会いましょう
「この子達がわたくし達の世界に行ったのよね……」
「……えぇ」
「大丈夫かしら」
「申し訳ない事をしてしまったわ、こんな自由な世界から、あんな窮屈な世界に……」
「本当……魔法に縛られた世界なんて詰まらないでしょうね」
「それに、あのエレナって女に何もされなければいいけど」
マリンはビアンカに、蜜柑はラヴィーニアになっている筈なのだ。
そしてエレナはビアンカとラヴィーニアが変わったとしても同じように動くのだろう。
何も知らない二人が、縛られた物語を根底から壊してくれると信じて。
「属性落ちしてないかしら……元々魔法が無い世界の人達でしょう?」
「この世界は魔力が無いものね。可能性は高いわ」
蜜柑とマリンは眉を寄せた。
まだ少ししか此処に居ないが、こんなに素晴らしい世界で暮らしていた二人が、ヨーリナンド王国に行って無事に過ごせているのだろうか。
「……でもラヴィーニアが"ラヴィーニア"でいる限り、エレナは好き放題してしまう」
「わたくしが"ビアンカ"でも同じ事が起き続けるのよね」
「これは歯車を壊す"呪い"よ。あの女が戻す時間を強制的に動かせるように」
「…………」
「悔しがる顔が見られないのだけが残念ね」
「ディーゴ、大丈夫かしら……」
「……フィンも心配だわ」
「……」
「……」
「信じましょう……!この子達は必ず止まった時間を動かしてくれるわ」
「……幸せになって欲しいわ」
「そうね」
『魂を別の世界の人間と入れ替える』
そんな御伽噺のような術が成功するなんて思っていなかった。
万全な準備をしたものの、どこかで失敗してしまうのではないかと不安だった。
でも後戻りは出来なかった。
例え自分が消えたとしても、これ以上大切な人達の人生を歪めて欲しくなかったのだ。
「蜜柑ッ!!」
「…………千紘」
千紘が焦った様子で此方に走ってくる。
「もう良い男見つけたの?」
「……幼馴染よ」
「あら、この世界でも幼馴染に恵まれているのね」
「残念ながらそうみたいね……浮気症かは分からないけど女性にモテモテみたいなの」
「ふふ、そんなとこまで似てるの?」
「幼馴染には、あまりいい思い出がないわ」
「なら、わたくしと一緒に良い男を見つけましょう?」
「それは素敵な提案ね」
千紘が蜜柑を自分の腕に抱き込んでから、マリンを思いきり睨みつける。
この千紘という男は、本当に蜜柑のことが好きなのだろう。
例え中身が別人だと分かっても、こうして守ろうとする。
「結構一途そうじゃない?」
「そうかしら?ちーちゃん、マリンは私の友達なの」
「友達……?蜜柑にそんな友達はいない」
千紘は不思議そうにマリンを見ている。
すると、遠くからマリンを呼ぶ声がする。
「マリン……!こんなところに居たのかっ!」
「……お兄ちゃん」
「今日は学校を早めに切り上げるって言っただろうが!」
「そうだったかしら?」
「お前は本当に……!あんなにケーゴとの撮影を楽しみにしてただろう?」
「ケーゴ……?」
「俺の友達のケーゴだよ……マリン、本当に大丈夫か?朝から変だぞ??それにスッピンで学校に行くなんて初めてじゃないか?」
「……大丈夫よ」
「その子、マリンの友達か?」
「そう、蜜柑よ」
「へぇ……マリンにしては珍しいタイプだな」
マリンの兄は千紘と蜜柑を不思議そうに見ていた。
千紘は別として、先程のマリンの友達に比べたら蜜柑は地味な部類になるのだろう。
蜜柑とマリンは、互いの連絡先を交換する為にポケットからスマートフォンを出した。
記憶を頼りに画面を動かして操作していく。
「今日の夜、電話しましょう」
「そうね」
「毎日が楽しくなりそうね」
「えぇ……とっても」
「さよなら、マリン」
「さよなら、蜜柑」
「「また会いましょう」」
二人の声が揃う。
そして一度強く抱き合ってから笑い合った。
end
番外編以上になります!
ここまでお付き合いしてくださった方々、本当にありがとうございました




