真っ直ぐな幸せ(ステファノend)
ラヴィーニアは光属性を失った。
そして元々持っていた風属性も戻ることはなかった。
この国の貴族で属性落ちした人物の道筋は決まっていた。
「ラヴィーニアが望むなら、何でも用意しよう」
「何でも……」
「勿論、王妃の座でも構わぬ。それだけの功績を残したのだ」
しかし、ラヴィーニアは戸惑った様子を見せた。
「いいえ、陛下……私は「ッ、待ってください!」
ラヴィーニアは大きく目を見開いた。
部屋に響くような、大きな声で話す。
「私はラヴィーニア嬢を王家で受け入れたいと思っております」
「え……?」
「勿論、良いだろう」
「……そんな、私は」
「ラヴィーニアが望めばな。どうなのだ、ステファノ」
国王が確認するようにチラリと此方を見た。
迷わずラヴィーニアの元へと歩いていく。
そして彼女の手を取り跪いた。
手の甲に唇を寄せると、ラヴィーニアの頬が赤く染まった。
「……ッ!?」
「目覚めたばかりで申し訳ないが……俺との未来を前向きに考えてくれないだろうか」
「ス、ステファノ殿下……!?」
「父上、私に一年下さい」
「一年で何が出来る?」
「ラヴィーニア嬢を振り向かせてみせます!!」
「!?」
「無理な願いなのは分かっております」
「……もし、それが叶わなかった時はどうする?」
「全て……父上の仰せのままに」
「よろしい。ラヴィーニア嬢如何かな?」
「わ、私は……」
「お願いだ、ラヴィーニア。一年だけ、一年だけでいい!俺に時間をくれ!!」
ステファノが必死に此方に訴える。
握られている手から伝わる熱……。
自分が王妃になるなど考えられないし、絶対に無理だ。
そう思っているのに、ステファノは「絶対に大丈夫。俺を信じて全て任せてくれ」と言った。
力強く言われてしまえば、頷くしか無かった。
ステファノは人目を憚らず嬉しそうに抱きついた。
「ありがとう……!」
一年後ーーー
ステファノと手を繋ぎながら、窓の外を見ていた。
「ラヴィーニア、体調はどうだ?」
「とても良いですよ」
「そうか、良かった」
「ステファノ殿下は心配性ですね」
安心させるようにニコリと微笑んだ。
白く染まった髪を愛おしそうに撫でながら、ステファノの体温を感じていた。
毎日、ステファノから貰った小花の髪飾りを付けていた。
その髪飾りをステファノがスルリと外す。
「ステファノ殿下……?」
「なぁ……ラヴィーニア」
「はい」
「今日で約束の一年になる」
「…………そう、なんですね」
"属性落ち"したラヴィーニアを王妃に据えるのか。
それは大きな問題となった。
ステファノはラヴィーニアを王妃として据える為に必死で動いていた。
「私は平民として暮らしていきたい」そうステファノに伝えても「一年だけは我慢してくれ……必ず幸せにする」そう言って聞かなかった。
殆どの日々を王城で過ごしていた。
一応、王妃教育を受ける事になった。
以前のラヴィーニアは相当な勉強家だったのだろう。
知識もダンスも全て体と頭が覚えていた為、王妃教育は難なく進んでいった。
一番の問題であるラヴィーニアの断れない性格を中心に、厳しく指導された。
学園で"ラヴィーニア"として過ごしてきたお陰で、何とか上辺だけは毅然と対応する事は出来る様になった。
ステファノは忙しいながらも、懸命に自分の気持ちを伝えてくれた。
その真っ直ぐで熱い気持ちは徐々に伝わり、自然と気持ちは傾いていった。
以前のステファノとは、まるで別人のような彼の姿に周囲も驚いていた。
しかし頑張っているステファノには申し訳ないが自ら身を引くつもりでいた。
「ラヴィーニア、よく聞いてくれ」
「はい」
「まだ、ラヴィーニアを王妃になる事に反対している人もいる」
子供が無属性を継ぐことが出来るのか、それが一番の問題だった。
王族から万が一、無属性以外の子供が産まれるのは避けたい。
魔法が重視される世界だからこその問題だった。
「それは……仕方ない事です」
「でも、俺は……!」
「ステファノ殿下をこれ以上苦しめたくないんです!だから私は今からでも……っ」
「俺は、お前を諦めるつもりはない!ラヴィーニアと結ばれなければ、ジューリオに王位を譲ってもいいと、父上には伝えた」
「……!」
「後は、お前の気持ちだけなんだ」
「え……?」
「俺は、お前と共に歩みたい。どうかこれを受け取ってくれ」
そう言ったステファノから渡されたのは、ダイアモンドの指輪だった。
「……これは」
「俺と結婚して下さい……どんな道でもいい。ラヴィーニアと共に歩みたい」
「…………」
「一年経った。返事を聞かせてくれ」
「……ッ」
「君を心から愛している……」
「……っ、私もです」
「ありがとうっ!!!」
*
ヨーリナンド王国には白髪の美しい王妃と、立派に国を収める国王がおりました。
国王は王妃を深く愛しており、いつも共に手を取り合って過ごしていました。
子供は四人……無属性の第一王子と第三王子、そして第一王女と第二王子は光属性を持って生まれたのでした。
皆で助け合いながら、幸せに幸せに暮らしましたとさ……。
end




