最終話 私の幸せ(ラヴィーニアend)
あの日から、光属性を失った。
そして元々持っていた風属性も戻ることはなかった。
ジューリオの作戦は上手くいったが、ラヴィーニアの魔法が使えなくなる事だけは予想外だった。
ジューリオは真剣な顔で、此方に深々と頭を下げた。
いくら気にしなくても良いと言っても、ジューリオは納得出来ないようだった。
"属性落ち"してしまったのだ。
この国の貴族で、属性落ちした者の道筋は決まっていた。
ジューリオは責任を取ると言ったが「その必要はない」と静かに首を振ったのだった。
「ラヴィーニアが望むものなら、何でも用意しよう」
「何でも……」
「勿論、王妃の座でも構わぬ……それだけの功績を残したのだ」
「私もラヴィーニア嬢を受け入れます」
ステファノが此方を見つめてハッキリと宣言する。
しかし、首を横に振った。
「いいえ、陛下……私は王妃の座は望んでおりません」
「そうか。ではロンバルディ家にずっと籍を置いても構わぬ」
「それは有り難いのですが……」
口籠った後に、スッと視線を逸らす。
もじもじしながら何か言いたげに口を開いてから閉じる事を繰り返す。
「何でも良い、申してみよ」
「……はい」
シン……と静まり返る謁見の間。
ほんのり頬が赤く染まっていく。
「……っ、をください」
「「「???」」」
「ッ、お金をください……っ!」
ラヴィーニアは恥ずかしそうに叫んだ。
予想外のおねだりに周囲はポカンとしていた。
「……金?」
「はい!」
「他には……」
「他には何も要りません!お金をお願いします」
「…………」
「…………」
ラヴィーニアは満面の笑みを浮かべながら言った。
「それが私が思う"ラヴィーニア"の幸せなんです!」
周囲や国王は困惑していたが、ビアンカは「ラヴィーニアらしいわ」と微笑んだ。
*
結局、蜜柑はラヴィーニアになってもシナリオ通り振る舞う事は出来なかった。
光属性を得てから物語はぐちゃぐちゃになってしまったけれど、自分の事は以前よりも好きになれた気がした。
そして闇魔法を打ち払う事が出来たものの、属性落ちをして平民になった。
乙女ゲームの結末としては悪役令嬢らしい道筋を辿ったといえるだろう。
けれど幸せだった。
元々魔法がない世界で暮らしていた為か、平民の暮らしは悠々自適で自由で、とても楽しかった。
けして優雅な暮らしでは無いけれど街でラーメン屋を経営しながら忙しく暮らしていた。
ヨーリナンド王国にない食べ物である"ラーメン"は街中で大ヒットしたのだった。
ビアンカと試行錯誤した結果、元の世界のラーメンの味を再現することが出来たのだ。
初めてラーメンが完成した日、ビアンカと麺を啜りながら懐かしさに涙したのだった。
あの日、食べようとして食べられなかったプレミアムプリンは、お持ち帰りのお土産として販売している。
卵にこだわり、生クリームも添えた自信作である。
プリンの美味しさが広まり、今ではラーメン同様、プリンも看板商品である。
時には食い逃げされたり、お皿を割ってしまったり、注文を間違えてお客さんに怒られたこともあった。
泣きたい日もあったけれど、へこたれず毎日懸命に向き合った。
顔が怖い人とも目を見て話せるようになった。
お店には沢山の常連客がついた。
そして相変わらず、ステファノは暇なのか頻繁にラヴィーニアとノアに会いに来る。
ディーゴは任務が終わると必ずラーメンを食べに来て、影達のお土産としてプリンを買っていってくれる。
ジューリオはピンヒールと札束を持って殴られに来る。
ビアンカはメリーとお忍びで来てくれるし、フィンはいつもラヴィーニアの様子を見に来るついでに、お店も手伝ってくれる為、全然寂しくなかった。
看板犬のノアがワンと吠える。
今日も笑顔で溢れていた。
「ーーーいらっしゃいませ!」
end
ここまでお付き合いして下さった皆様、ありがとうございました!
勢いだけで書き始めた為、物語も荒削りで誤字も沢山あったかと思います。
この後の番外編はステファノ、ジューリオ、ディーゴのルートに分岐しています。
あとはラヴィーニアが蜜柑になったバージョンのお話となります!
楽しんで頂けたら幸いです




