71.真実を暴きます
「もしかして……何か不都合でもあるのか?」
「ーーッ」
「人払を頼む」
その言葉を聞いたエレナが小さく肩を揺らす。
どうやら思った展開とは違ったようだ。
ジューリオは、生徒に扮している影達に指示を出す。
そして、ラヴィーニアをストーカーしやすいようにと新しく開発した魔法で、エレナの様子を映し出して国王やビアンカに繋いでいた。
エレナの表情を伺いながら、次の台詞をステファノに伝えたりと全体のブレーンとして裏で動いていた。
「ま、待ってください‥……!!」
「何か?」
「そんな大事にしなくても、私は大丈夫ですからッ」
エレナは必死で笑顔を浮かべていた。
その間にもクラスメイトは影によって外に出されて、その場にいるのはラヴィーニア、エレナ、エミリー、ステファノ、フィンの五人となった。
先程の騒がしかった教室とは一転、辺りは静まり返っていた。
恐らくラヴィーニアを孤立させて、隙を見て以前のように闇に引き摺り込み、逃げ場のない状態で話を聞きつつも、口を塞ぎたかったエレナにとってはいい展開では無い筈だ。
ステファノに頼った事は大失敗だといえるだろう。
そんなエレナに追い討ちをかけるようにステファノが更に言葉を続けた。
「大事に決まっているだろう?」
「……え?」
「ラヴィーニア・ロンバルディは俺の婚約者だからな」
「ッ!!?」
エレナが驚き、目を見開いた。
言葉も出ないのか口をパクパクと動かしている。
「未来の王妃が、学園で問題を起こしたとしたら大事だろう?」
「で、でも、そんな……っ!?そんな事一言もッ!!」
「ラヴィーニアはアルノルドと婚約破棄したばかりだったからな……事が落ち着くまで隠しておいたのだ。学園を卒業する頃には発表しようと思っていたがな」
「そんな訳ないわ!そんなの嘘に決まってるッ……こんなシナリオありえない」
どうして時が戻らないの?
こんな展開無かったのに……と、ブツブツと呟いている。
「さて、二人とも向き合ってくれ」
「はい、殿下」
「……ッ」
「早くしてくれないか、エレナ嬢」
エレナは逃げようか、どうしようか迷っているようにも見えた。
「逃げれば、その時点で悪とみなす」
「!!」
ステファノがエレナを追い詰めるように言うと渋々、向き合うように立った。
黒い忍者のような服を着て、目元しか見えないディーゴが二人の間に立ち、静かに頷いた。
「王家に仕える影だ。いくつか質問をする」
「ぁ……」
「二人とも、"はい"が"いいえ"かで答えろ」
「ま、待ってください!!」
「どうした?エレナ嬢……まさか嘘をついているとは言うまいな?」
「い、いいえ……失礼、しました」
「そうか、ならいい」
ステファノの鋭い視線がエレナに刺さる。
ディーゴの能力を知っているから慌てているのだろうか。
ディーゴは嘘を見破る事が出来る。
目を合わせれば人の考えを読み取れる。
エレナはディーゴだと気づいたのか、目を合わせないように必死に視線を逸らしていた。
ディーゴに静かに手を差し出した。
そしてエレナは震える手をディーゴの前に出すと、ディーゴは強く手首を掴んだ。
エレナは目を開いた。
「さぁ、嘘をつけば神経毒が流れるからな……くれぐれも気をつけてくれ」
「……っ!そんなの聞いてないわ!!」
「何を言っているんだ?嘘をつかねば良いのだ」
「そんな……」
「王家でもよく使われる方法だ……真実を確かめる為にな」
ステファノはフッと鼻で笑うとディーゴに合図する。
「さぁ、質問は三つだ。まず一つ目から……」
ステファノの顔がまるで悪人のようである。
ディーゴがゆっくりと口を開いた。