70.悪役令嬢になりました!
一方で「ラヴィーニア様はそんな事をしないわ」とラヴィーニアを擁護する声もチラホラ見られた。
それはラヴィーニアが無意識に助けていた人達だった。
双方の意見が混じり合い、教室は混乱していた。
「でも私を守る為にっ、エミリーがぁ……っ!!」
エレナの啜り泣く声が響く。
一見するとラヴィーニアが本当にエミリーとエレナを虐めているような状況に、戸惑う声がチラホラと聞こえた。
どうやらエレナはまず"ラヴィーニア"を孤立させようと動いたようだ。
反論する事もなく、ただ黙ってエレナを見ていた。
それに気を良くしたのかエレナが畳み掛けるように言葉を発する。
「ごめんなさいっ、エミリー!私が弱いせいで、貴女をっ守れなくて……!」
皆の視線が一斉にエミリーへと集まる。
「エレナちゃん……」
エミリーがエレナの名前を呼ぶ。
これはもう、何処からどう見てもラヴィーニアが悪役である。
「守れなくて、本当にごめんなさい……っ」
泣き崩れたエレナを数人のクラスメイトが励ますように駆け寄る。
その中にはフィンの姿もあった。
「エレナ……大丈夫?」
「……フィン様ぁ、私っ」
「どうして、こんなひどい事を……」
「私が、悪いんです……!エミリーを助けられなかったから」
フィンはエレナを庇うように優しく抱きしめた。
そしてフィンはエレナに見えないように静かに頷き、教室の外に向かって合図を出す。
「一体、何の騒ぎだ」
「ステファノ殿下……!」
「ステファノ殿下よ」
ステファノの登場により、重たかった空気がガラリと変わる。
「たまたま通り掛かったら、騒ぎが聞こえてな」
「……クラスメイト同士の揉め事です」
「ほう……誰と誰のだ?」
「エレナ嬢と我が姉、ラヴィーニア・ロンバルディです」
フィンがステファノの前で静かに報告する。
ステファノは威圧感たっぷりにエレナと此方へと歩いてくる。
そして涙を流すエレナを見てステファノが口を開く。
「エレナ嬢……何があったのか説明できるか?」
一瞬、手のひらの隙間から見えたエレナの唇が弧を描いた。
「はい、殿下……っ!」
「……」
「私、ずっと、ずっとラヴィーニア様に嫌がらせを受けていたんです!」
「…………ほう」
「庇ってくれたエミリーも助けられなくてッ!それでエミリーは私を守る為に、心に傷を負って学園を休んでしまったんです」
「エレナちゃん、それは違うわ……!」
「いいの、エミリー!無理しないで」
「……っ」
「なるほどな……ラヴィーニア嬢、何かエレナ嬢に言う事はあるか?」
「いいえ、何もありませんわ」
ラヴィーニアの言葉を聞いてザワザワと周囲が騒ぎ出す。
味方をしていた生徒達は、どうすればいいのか分からないようだった。
明らかにエレナが優勢である。
「そうか、エレナ嬢が言ったことが事実だとして、ラヴィーニア嬢に何を望む?罰か?」
それを聞いたエレナの目がギラリと光る。
「いいえ……罰なんて、そんな酷い事なんて望みません!ラヴィーニア様も何か理由があったんじゃないかって思うんです」
「…………」
「だからラヴィーニア様とも、またやり直せると思うんです……!」
「やり直す?」
「まだ……話し合えば分かり合えると思うんです」
「つまり、ラヴィーニア嬢と話し合いたいという事だな?」
「はい、殿下……!その通りです」
「なら話し合いの場を設けよう。今ここで俺が立ち合いの元、三人で話し合えばいい」
「えっ……?」
「もし虐めが真実ならば、当事者同士のみの話し合いは危険だろう?」
「あの、でも……ッ」
ステファノはエレナを見て、ニコリと微笑んだ。




