69.罠ですか……?
その話し合いから暫く経った後、光魔法の魔力が込められた魔石のネックレスが配られた。
万が一の時、闇魔法から身を守ってくれるお守りだ。
そしてビアンカを眠らせた闇魔法使いの存在が明らかにされ、大々的に闇魔法の存在が広がった。
見つけたものには褒美を、闇魔法使いには処刑を。
そんな国王の表明は、学園にも広く広まったのであった。
何も変わらない元の日常が戻ってきたように見えるが、その一方で……。
「知ってる……?ビアンカ王女が闇魔法使いに襲われて、眠り続けているそうだよ」
「国王陛下が相当お怒りだそうだ……見つけ次第、即処刑だって」
「それはそうだろう?国王陛下がビアンカ王女を溺愛しているのは有名な話だ」
「処刑で済めば幸せだな。ビアンカ王女が目覚めなければどうなるか分からないぜ……?」
「もしかして、この学園にいるんじゃない?」
「おぉ……怖」
学園での噂はビアンカのことで持ちきりだった。
そんな中、エミリーは久しぶりに学園に登校した。
そして教室に入ると、驚くエレナの横を通り過ぎて自分の席に腰掛ける。
それを見た周囲はエミリーの行動に疑問を持つ。
コソコソと話し声が聞こえる。
あんなに仲睦まじかったはずのエレナとエミリーが、一言も会話を交わさずに離れたからだ。
そんなエレナは教室でポツンと一人座っていた。
クラスメイトはそんな様子を伺っているようにも見えた。
フィンにも、いつも通りに振る舞ってもらう。
エレナをチラリと確認する。
焦っている様子はないが、何か考えているようだった。
ラヴィーニア同様、軽く忠告するつもりだったビアンカが、倒れて目が覚めなかったのは、きっと計算外だ。
そしてビアンカは王女だ。
闇魔法が使える事がバレれば重い罪が科せられる。
それにエミリーが正気に戻って、学園に舞い戻ってきた事も追い討ちになるだろう。
エレナは恐らく、エミリーは狂って使えなくなったと思っていた筈なのだから。
いくら闇魔法が使える事を隠せると言っても、味方もいない状態で、尚且つ自分の前で自分が闇魔法を使える事を暴露している。
闇魔法が使える事を隠せるとしても、もし……と考えれば居ても立っても居られないだろう。
不安に思う筈だ。
どこまでバレているのか
いつ自分が問い詰められるのか
早く手を打たなければ自分が危ない。
そうなればエレナは短慮な行動を取るだろう……と。
ラヴィーニアの周りに常に人がいるが、今日に限ってはディーゴもおらず一人で本を読んでいる。
この状況をエレナはチャンスと捉えるか。
将又、罠と読むか……。
ラヴィーニアの心臓がドクドクと音を立てて動いていた。
(もし、エレナが動かなかったら?上手く逃げてしまったら……)
そんな不安を抱えつつ、エレナが仕掛けてくる事を今か今かと待っていた。
「…………ねぇ、エミリー」
そしてエレナは、動いた。
「エミリー、本当にごめんなさい……私、貴女に辛い思いをさせてしまって」
「何のこと?」
エミリーはエレナに問いかける。
何も知らないフリをして……。
「だって、エミリーはラヴィーニア様に虐められている私を庇って酷い目にあったんでしょう?」
ザワザワとクラスメイトが騒ぎ出す。
エレナの女優のような演技に心の中で驚きつつ、ただ真っ直ぐにエレナを見つめていた。
「私、わたしっ、ラヴィーニア様に嫌がらせされてて……でも、いつもエミリーが私を助けてくれたんですっ!」
「……」
周囲から「ああ、確かに……」と納得する声が聴こえてくる。
エレナが教室で何度か大々的にラヴィーニアを悪として、泣きながらアピールをしていた事が功をそうしたようだ。




