68.皆を守りたいんです
「この力は、光属性が持つ守護の力だろう……魔石に込めたら光属性の魔法が発動するかもしれぬ」
「なるほど……!ラヴィーニア様、魔石に力を込めてください。それが万が一、エレナの闇魔法が暴走した場合、皆を守る事に繋がるかもしれません」
「はい!!」
ディーゴが魔石を用意するように影に声をかける。
ジューリオはニヤリと笑い、国王を見据える。
「方向性が決まった所で父上、仕事ですよ?」
「なんじゃ……」
「この作戦において、一番大切な役目があるんですから……父上にしか出来ませんから宜しくお願いしますね」
「申してみよ」
ジューリオが各々に作戦内容と役割を話していく。
その時の彼の目は爛々と輝きとても楽しそうだった。
「と、いう事で皆さん頑張りましょうね」
「もし、万が一失敗したらどうするんだ……!闇魔法が暴走したら全員が巻き込まれるかもしれないんだぞ!?」
「兄上……えぇ、その通りです。皆様に危険が伴います」
「……!」
「絶対安全とは言い切れません。闇魔法が私達にどう影響するのかは分かりませんが、これ以上野放しにしているのは、もっと危険です」
「……確かに」
「多少リスクはあるかもしれませんが、確実な方法なんです。保険としてラヴィーニア様の守護の力と、直ぐに逃げられるように各々気をつけましょう……!」
「ジューリオ……」
「もしもの失敗をなくす為にも、父上や影に協力してもらうんでしょう?」
ジューリオは珍しく真剣な顔をして言った。
まるで獲物を追い詰める捕食者のようだと思った。
「害虫は駆除しなくちゃね……」
国王がジューリオを見て溜息を吐いた。
そして、彼は何故かエレナの性格や行動パターンを詳しく知っていた。
ディーゴに理由を聞いてみたが「知らない方がいい」と教えてはくれなかった。
その理由はラヴィーニアをずっとストーカーしていたからだとは言えないディーゴであった。
「あの……っ!」
「どうしたの、姉上?」
「ラヴィーニア?」
「ラヴィーニア様……どうなさいましたか?」
胸元で手を握り、一人一人の顔を見回した。
「絶対に……絶対に怪我をしたり無理をしないって、約束して下さい!お守りも精一杯の力を込めて作ります!だから……っ」
祈るように目を閉じて、手を合わせた。
(もう、誰も傷つく姿を見たくない……!)
ジューリオの作戦は上手くいけば確実に闇魔法は引き摺り出せる。
けれど、皆が闇魔法の影響を受けたらと思うと居ても立っても居られないのだ。
「この作戦で、一番危険なのは姉上なんだよ……?」
フィンがそっと手を握る。
「そうよ!!わたくしは貴女と一緒に戦ってあげる事も出来ないなんて」
ビアンカが此方を見て悲しそうに眉を寄せた。
「私の作戦は上手くいけば確実に仕留められますから。ラヴィーニア様は言われた通りに演じてください。まぁ、多少の失敗は軌道修正がききますから安心して下さい」
「……ジューリオ殿下」
「だから、この件が片付いたら私と結婚ッ……グハッ!」
手を撫で回しながら、プロポーズしているジューリオの顔をディーゴが殴り飛ばした。
「俺も出来る限りサポートする」
「私も……皆様から、ラヴィーニア様から受けた恩に報いる為にもエレナちゃんを止めてみせます!!頑張りますっ」
エミリーが強く頷いた。
涙を拭きながら気合を入れる為に頬をペチンと叩く。
「私も、セリフを噛まないように頑張ります……っ!!」