64.無事で良かったです
城に戻ってもビアンカは目覚めなかった。
次の日も、また次の日も眠り続けた。
医師に診せても何も原因は見つからない。
ただ、仮死状態に近いのだと……。
魔法師も静かに首を振りながら、エミリーの時と同様で闇魔法の気配がすると静かに言った。
そこで、ラヴィーニアが光魔法で治療をする事になった。
国王はラヴィーニアに何度も何度も頭を下げて「娘を救ってくれ」と頼んだ。
そこには恐ろしい国王の姿はなく、一人の父親として心配しているように思えた。
エミリーの時のように倒れてしまわないよう、魔法師の立ち合いの元、少しずつ調整しながら行われた。
ビアンカに手をかざして、力を込めた。
エミリーとアルノルドの時には、何かが暴れ回っていたのを落ち着かせる感じだった。
けれどビアンカは、黒く分厚い壁に阻まれて魔法が通らないのだ。
それを徐々に溶かしていくイメージで意識を集中していた。
学園が終わると、毎日ビアンカの元へと向かった。
闇魔法の気配がある以上、エレナが関与しているはずだ。
何故、自分には忠告しただけだったのに、ビアンカは眠らせられてしまったのだろうか。
(お願い……神様、ビアンカを助けて!)
国王と魔法師が部屋から出た後、ビアンカの手を握って祈っていた。
どのくらい祈っていたのだろうか。
ビアンカの指がピクリと動く。
「……?」
「ら、び……?」
「ッ、ビアンカっ!良かったぁ……目が覚めたのね?」
「あなたが、助けて……くれたの?」
小さく頷くと、ビアンカの目からは涙が流れた。
「…………ありがとう」
「ビアンカ……」
「ゴホッ、こほ……」
「今、国王様やお医者様を呼んでくるわ!」
「待って、ラヴィーニア」
「え……?」
首を横に振るビアンカを不思議に思いながらも立ち止まる。
咳き込むビアンカにサイドテーブルにあった水を渡す。
それを一気に飲み干したビアンカはガンッと音を立てながら、コップを置いた。
「話をしましょう……!」
「でも……!」
「今、貴女と話さなくちゃいけない気がするの!」
「……分かったわ」
「エレナは闇魔法を使って、わたくしを暗闇に引き摺り込んだわ!」
「……やっぱり!」
「ラヴィーニアも?」
「私もエレナ様から忠告を受けたの」
「そうなのね……途中までは覚えているんだけど、そこから気分がすごく悪くなって、その後は意識が遠くなってしまったの‥だから、ほとんど話を聞けなかった」
「ほんと……?私は何も感じなかったのに」
「ラヴィーニアは光魔法があるから大丈夫だったのかもしれないわ」
「!!」
「それにエレナに言いたい事が山程あったのに……!!」
ビアンカの顔が怒りに歪む。
あまりの迫力にビクリと肩を揺らした。
「ラヴィーニアはどんな話をしたの!?」
ビアンカは勢いよく此方に詰め寄った。
エレナとの会話の内容を話した。
「なるほど……私も邪魔をするなと忠告を受けたけど、でもエレナは一体何を焦っているのかしら」
「焦ってる……?エレナ様が?」
ビアンカは静かに頷いた。
エレナが恐ろしすぎて、表情までは確認出来なかったが、冷静なビアンカは目の付け所が違うようだ。
「それにフィンルートの通常エンドは達成しているみたい」
「通常エンド……?」
「そう……フィン様と友達でいようって言われるのよ」
「え…………?」
夢の内容を思い出す。
ディーゴのバッドエンドの時もハッピーエンドの時も、エンディングを迎えれば地面が揺れて、時が巻き戻るのでは無かったのではないだろうか。
その事をビアンカに伝えようとした時だった。




