63.夢、ですか……?
「え……?」
(今のは夢……?)
意識がはっきりした瞬間、穴に吸い込まれる前に居た場所に立っていた。
鏡の前では自分の顔が写っている。
足元にはラヴィーニアが落としたハンカチがあった。
暫く呆然としていると、ドアの外からディーゴの声が聞こえる。
早く"大丈夫だ"と伝えなくてはいけないのに、足も手も震えて動かなかった。
今見たのは、以前のラヴィーニアの記憶。
それは蜜柑がラヴィーニアになる前のラヴィーニア。
禁術を使った影響で蜜柑がラヴィーニアになった。
そして予測が正しければラヴィーニアが蜜柑になっているのだろう。
ビアンカにも同様の事が起こっているに違いない。
それにやはりエレナは、隠しキャラのジューリオを目的に全キャラクターを攻略するつもりでいる。
(……エレナが闇魔法を)
それに忠告だと言っていた。
『アルノルドやエミリーみたいになりたくなきゃ、大人しくしてなさいよ』
『もし、このままフィンと上手くいかなくてもフィンを操れば一気にハッピーエンドよ』
今のラヴィーニアとビアンカが邪魔した事で、まだフィンは攻略されていない。
エレナは明らかに苛立ちを見せている。
それに、もしフィンがエレナと結ばれなくても、闇魔法で操り強制的なハッピーエンドを作り出すのだろうか。
エレナがこれからどう動くのか……今まで以上に注視しなければ、フィンを闇魔法から守れないかもしれない。
エレナは『貴女が騒いだ所で何も変わらないわ』と言っていた。
相当自信が無ければ、自分が闇魔法を使える事を明かしたりしないだろう。
エミリーの一件で、影達や国家魔法師によって周辺は全て調べられた筈だが、闇魔法を持つ者は見つかっていない。
エミリーの一番近くにいるエレナが、真っ先に疑われてもおかしくないのに闇魔法を使える事を完全に隠している。
それに恐らくエレナはとても大きな力を持っている。
今、ラヴィーニアが光属性を持っているという事はバレていないようだが、もしバレたら直ぐにでも消されそうな勢いである。
謎は深まるばかりで何も分からない。
これ以上は頭がパンクしそうである。
(兎に角、ビアンカと話したい……!)
女子トイレのドアを叩いているディーゴの腕を掴み、ビアンカの元へと急いだ。
*
教室に戻り、ビアンカの姿を探す。
けれど、いつも居るはずの席に彼女の姿は見当たらない。
珍しく一人で居るメリーが、酷く焦った様子でディーゴの元へと駆け寄ってくる。
「ビアンカ様が急に消えてしまって……!」
「あのビアンカがメリーに黙って何処かへ行くなんて考えられない」
「今までこんな事は一度も無かったのに!!」
メリーはディーゴと話している間、クルリと教室を見渡した。
(まだエレナも戻ってきていない)
もしかして、ビアンカもエレナに忠告を受けているのだろうか。
エレナはビアンカに対しても、怒りの感情を持っていた。
ラヴィーニアが頑張って頭を働かせている時だった。
「……ビアンカ王女がッ!!」
教室に飛び込んできた令息が焦った様子で声を上げた。
メリーが令息が指をさす方へと、すぐに駆け出した。
廊下に倒れ込んでいるビアンカを見て、ラヴィーニアは口元を押さえた。
「ビアンカ……ッ!ビアンカ!」
「ビアンカ様っ!」
メリーとディーゴがビアンカの容体を確認する。
ビアンカは外傷は無いものの、意識を失ったまま目を覚さない。
王女が倒れたとあって学園は騒然となっていた。
ビアンカは直ぐに王城へと運ばれた。




