59.自信があるようです
「攻略したら、どうなってしまうの……?」
「……は?巻き戻るのよ」
「巻き、戻る……?」
「貴女もアルノルドルートを何度もプレイしていたのなら分かるでしょう?クリアしたら全て元に戻るのよ」
やはりエレナは、ゲームのようにこの時間を何度も繰り返しているようだ。
「本命のジューリオに辿り着くまで、時間を進める気は無いわ」
「エレナ様の記憶は……」
「そのままあるわよ?当たり前じゃない」
「……!!」
エレナは記憶を引き継いでいるようだが、ラヴィーニアやビアンカは?
記憶を引き継いで、また元に戻るのだろうか?
ノアは?アルノルドとはまた婚約している状態に戻ってしまうのだろうか?
今まで積み上げてきた幸せな記憶が全て、消えてしまうのだとしたら……エレナが平然と言っていることが恐ろしく感じた。
そして思い出したように呟いた。
「……あぁ、でも前のラヴィーニアとビアンカだけは違っていたわ。私と同じで記憶があったみたい」
「前のラヴィーニア!?」
「そう……前のラヴィーニア。あの二人も必死に未来を変えようとしていたみたいだけど無理だった」
「未来を変えようと……」
「貴女みたいに阿呆じゃなかった分、とても大変だったけど、本当に悪役令嬢と戦っているみたいで面白かった」
「…………!」
「今回は何故か転生者になってるけど、前のラヴィーニアとビアンカはバグで消されたのかしら?」
「……え?」
「フフッ、そしたら笑えるわね」
「!?」
「一回、ビアンカとラヴィーニアの邪魔が入ってバッドエンドになった事があるの」
「バッド、エンド……?」
「ディーゴが死んじゃったのよ。ディーゴルートってジューリオルートの次に攻略が難しいでしょう?ビアンカなんて、自分で邪魔したくせに泣き喚いて……本当、馬鹿みたい」
エレナの言葉を一生懸命、頭の中で噛み砕いて理解しようとするけれど動揺してしまい、上手く飲み込めなかった。
今のビアンカの前という事は、ゲームに出てくる我儘王女のビアンカの事だろうか。
「でも、また何事もなく初めから始まったの」
「そ、それって……」
「オープニングに戻ったって事よ」
「!!」
(一体、何が起こっているの……?)
エレナはジューリオルートをプレイする為に、他のキャラクターを攻略していて、攻略が終われば元に戻ることを知っていた。
元々入れ替わる前のラヴィーニアとビアンカは、時が戻っていた事に気が付いて、ディーゴルートでエレナとディーゴの仲を裂いたらバッドエンドになってしまった。
けれどエレナは、また何事もなくプレイを初めから始めることが出来た。
「……今回は忠告しにきたの。アルノルドやエミリーみたいになりたくなきゃ、大人しくしてなさいよ」
「どうしてそんな酷い事を……ッ!!」
「はぁ?」
「こんな事を繰り返したら、いつか必ずバレて……」
「貴女が騒いだ所で何も変わらないわ」
「……そんな!」
「うふふ……じゃあ頑張ってみたら?無駄だと思うけど。いい事を思いついたわ!貴女を使ってビアンカを襲わせようかしら」
「ッ!?」
「あの女、目障りなのよッ!絶対に許さないわ」
「……!」
「まぁ、いいわ。あんな女なんて私の敵じゃないから……もし、このままフィンと上手くいかなくてもフィンを操れば一気にハッピーエンドよ」
「フィンに手を出すつもり!?」
「最終手段はね……アハハハッ」
「……エレナ様」
「これ以上邪魔したら、許さないわよ?」
エレナは此方に向かって、威嚇するように吐き捨てると暗闇の奥に歩いていった。




