56.責められています
周囲が真っ黒で何も見えない。
手を伸ばしてワタワタしながら辺りを確認する。
(ホラー映画みたいにゾンビが出てきたらどうしよう……!)
そんな風に思いつつ、周囲を見渡す。
「だ、誰かいませんかぁ……?だれかあぁ!」
「……うるさい女」
そんな声と共に、薄っすらと灯が灯る。
「ひっ、ぎゃああああぁーー!!」
声がする方を振り向けば、見覚えのある金色の髪に可愛らしい顔立ち。
何度もアルノルドと結ばれるのを見届けてきたヒロインであるエレナが鬱陶しそうに耳を塞ぎ、仁王立ちしながらラヴィーニアの前に立っていた。
「うるさいって言ってんのよ!!」
「…………」
「……聞いてんのッ!?」
「ひゃい……」
「思っていたよりも相当阿呆みたいね……それとも計算なのかしら?」
現実が上手く飲み込めなかった。
そんな様子にエレナから喝が入る。
目の前にはキレまくるエレナが居た。
「あんた……ほんっとに邪魔ッ!!!」
「エ、レナ様……?」
教室ではフワフワの兎のようなエレナが、今は般若のように顔を歪めてラヴィーニアを睨みつけている。
「ごめんなさい……」と上目遣いで言う姿は、同性の自分ですら可愛いと思ってしまう程なのに。
「此処が乙女ゲームの中だと言うことは分かっているでしょう!!?何のルートをプレイした事があるのか今すぐ教えなさいッ」
「……は、ひ」
「それにッ、悪役令嬢が出しゃばるんじゃないわよ……!!お陰で計画がめちゃくちゃじゃない!!」
「……あっ、あの」
「あとはフィンルートだけなのに!!」
そもそもフィンルートのラヴィーニアはハッピーエンドの場合はどうなるのだろう?バッドエンドの時は……?
こんな事ならビアンカに聞いておけば良かったと後悔した。
エレナに言われて改めて気が付いたのだが、シナリオはめちゃくちゃになっているようだ。
そして乙女ゲーム、悪役令嬢……会話の内容からしてエレナは間違いなく転生者である。
そんなエレナの凄まじい圧に怯んでしまう。
エレナは質問をしながらも、此方の話を全く聞こうとはしない。
自分の気持ちを吐き出すように怒鳴り声を上げる。
「……黙ってないで何とか言いなさいよッ!!」
「私は、アルノルドルートしか……知らなくて」
「はぁ……?じゃあ、なんで勝手に婚約破棄してんのよ!?」
「それは流れで、仕方なかっ……」
「アルノルドと婚約破棄して一体誰が目的なのよ!!答えなさいッ」
話す前にエレナが割り込んでくる為に話す隙もない。
次々と畳み掛けるような質問にパニックである。
それに人の話を全く聞かない怒り方がエミリーに似ているので、もしかしたらエレナも闇魔法の被害あっているのだろうか?
だからこんなに荒々しいのかもしれない。
一通り満足したのか、エレナはハァ……と気怠そうに息を吐き出して此方を睨みつけている。
「あぁ……分かったわ。誰か好きなキャラが居るからシナリオを引っかき回してる訳?」
「えっ……?」
「……誰を狙ってんのって聞いてんのよ」
「だ、だれも……」
「ーーー嘘よッ!!ステファノと隠しキャラのジューリオの親密度が上がった時に貰えるアイテムを持っているじゃない!」
「……へ??」
「ディーゴに貰えるお守りのネックレスも!!」
「???」
「難攻不落のジューリオですら貴女に夢中なんて……同時に何人もの攻略対象者を誑かして何を考えているの!?」
親密度が上がった時に貰えるアイテムは確かに存在するが、アルノルドルートのアイテムしか知らない。
アルノルドルートではチョーカーが貰えるのだ。




