55.暗闇に飲み込まれました
(…………変な夢)
ゆっくりと瞼を開いた。
曖昧な夢の内容を思い出そうとするが、ハッキリと思い出せずに悶々としていた。
(ラヴィーニアが出てきて……それで?)
ボンヤリとした頭で考え込んでいた。
もう少しで思い出せるかもしれない。
そんな時、勢いよく扉が開いた。
「ラヴィちゃん、起きたのねッ!?」
「お母様……?」
「良かった……!!心配したんだぞ!?」
「……お父様」
ルドヴィカとディエが手を握る。
「私は……何を?」
「フィンから倒れたって聞いた時、本当にびっくりしたんだから」
ルドヴィカの豊満な胸が顔を覆い尽くす。
息苦しさに手をバタバタ振ると、そんな様子に気が付いたのか、ルドヴィカが急いで手を離す。
(窒息するかと思った……)
あの後、気絶するように意識を失い眠り続けたそうだ。
このまま闇魔法が広がり力を使い続けたとしてもとても対応しきれないだろう。
エミリーやアルノルドの周りは影達によって隅々まで調べられたが、闇魔法を持つ者は見つかっていない。
そして、ラヴィーニアは三日も眠っていたようだ。
「国王陛下や王女殿下が大変心配していらしたわ」
「え……?」
「無茶をしてっ!目が覚めて本当に良かった」
どうやらエミリーの治療の為に魔力を使いすぎて倒れてしまったようだ。
光属性の魔法を使える人間が自分以外に居ないため、治療は出来ずに自然に回復するのを待つしかなかった。
「話を聞いたわ……!大変だったわね」
「お母様、お父様……ッエミリー様は大丈夫ですか!?また元に戻ったりしてないですよね‥?」
「えぇ、でも元に戻ってからずっと後悔しているみたいで……部屋で泣いているんですって」
「エミリー様の元へ行きたいです!!」
「ラヴィーちゃん!待って!今は貴女が元気にならなくちゃ」
「エミリーは暫く学園を休むそうだよ。酷く落ち込んでいるみたいだから」
「……お父様」
「幸い、国王陛下もエミリーに対して寛大な処置をしてくれた」
「!!」
「どうしてもエミリーを助けたいという、ラヴィーニアの意思を汲んでくれたそうだ」
「……はい」
それから魔力回復の為に、王城で暫く療養をする事になった。
フィンやビアンカ、アルノルドやステファノ、ジューリオがお見舞いに来てくれた。
ディーゴは忙しい日々を過ごしており、顔を合わせない日が続いた。
傷も良くなった頃、ロンバルディ家に戻り、ジョセフィーヌとノアとゆっくり過ごした後、再び学園に行けることになった。
なるべくディーゴと共にいること。
一人にならない事が義務付けられていた。
何処かに勝手に行こうものならフィンに怒られて、俺から離れるなとディーゴにも怒られ、危機感を持つようにとビアンカに怒られて、少しだけ息苦しい日々を送っていた。
(今日のお菓子は何かしら……)
不自由な生活は、ずっと続くと辛いものである。
最近の楽しみといえば、お茶の時間の甘いものくらいだ。
暫くは変装して街へ行くのも禁止されており、息抜きが出来ていない。
(ケーキ……いや、マドレーヌもいいなぁ)
お手洗いの後、ボーっと手を洗っていると鏡に現れる謎の黒い丸。
「…………?」
暫く見ていると、どんどんと大きくなる黒い丸に思わず目を擦った。
鏡が汚れているだけかもしれないと、確認しようと手を伸ばした瞬間だった。
「ーーーきゃああぁ!!」
一瞬にして黒い丸に吸い込まれて、驚き声を上げた。
ハラリと持っていたハンカチが落ちた。




