表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/84

54.後悔しています



「エミリー様がいつからこうなっていったのか、教えて欲しいわ」


「……私がっ、覚えている限りの事をお話しします」



エミリーが体を震わせながら、今までの記憶がある部分を話してくれた。

ラヴィーニアに対しての憎しみで頭がいっぱいになっていった事。

黒いものが徐々に自分自身を締め上げていくような感覚がして、苦しくてたまらなかった事。


学園でラヴィーニアに風魔法を使った事は断片的にしか覚えておらず、もう一人の自分が勝手に動いているような感覚がして、止めようとしても止まらなかった事。


そこから意識が途切れて、気付いた時には王城で拘束されてラヴィーニアに治療を受けていたのだという。


それ以前もアルノルドと同じで、何度か記憶が曖昧になった事があるようだ。



「っ、言い訳に聞こえるかもしれません!!こんな事をした後です!!私の言う事なんて何も信じてもらえないかもしれません……でも、私っ、こんな事……望んでなかったッ」


「……エミリー様」


「本当に、ごめんなさいっ!!」



そう言ってエミリーは深く深く頭を下げる。

そんな彼女の肩に手を置いた。



「大丈夫……?」


「ラヴィーニア、様ッ……ごめん、なさい」


「私は……エミリー様の言葉を信じてます」


「……っ、ぅわぁぁっ」



泣き崩れるエミリーの背をさする。

周囲の魔法師が呆気に取られる中、静かにエミリーを抱きしめていた。

二人の周囲にはキラキラと淡い光が降り注ぐ。

どこからか「聖女だ……」と声が聞こえた。


エミリーは泣き疲れて腕の中で眠ってしまった。

その顔は安心しているように思えた。


まだ取り調べが必要との事で部屋から出た。

部屋の外で心配そうに待っていたフィンとビアンカの姿を見て、思いきり抱きついた。



「姉上……」


「フィン……エミリー様が」


「……うん」


「ッ何でこんな事に……可哀想で見ていられないわ」


「……ラヴィーニア」



望んで傷つけようとしているとは思えなかった。

エミリーの苦しい気持ちは痛いほど伝わって来たからだ。

涙を拭い、王城に来てから見ていないディーゴの姿を探す。



「ディーゴは大丈夫だったのかしら?ちゃんと私を守ってくれたわ」


「うん、姉上の要望はキチンと伝えられたから、ディーゴはあまり怒られなかったって」


「本当……?」


「本当よ!メリーが貴女にとても感謝していたわ。ディーゴを守ってくれてありがとうございます……って」


「良、かった……」



エミリーやディーゴの助けになれたら、これ以上嬉しい事はない。

安心してゆっくりと息を吐き出した瞬間に、視界がぐにゃりと歪んだ。



「姉上ッ!?」


「……ラヴィーニア!!」



体が重くなり、その場に倒れ込んだ。









『一つ忠告しておくわ……貴女達に出来る事なんて何もないのよ?』


『……何を言っているの?』


『何をしても無駄なのよ』


『は……?』


『…………いい加減気づいたら?』


『……』


『此処は乙女ゲームの世界だもの』


『……ゲーム?』


『あははっ!貴女がどう動いても私の思い通りになるのよ?本当、抵抗して馬鹿みたい……貴女一人で何も出来る訳ないのに』


『…………』


『我儘王女のビアンカもね……さっさとディーゴルートを攻略しなくちゃ。精々足掻けば?』


『…………』


『邪魔だけはしないでよ……まぁ、無駄だと思うけど』


『……調子に乗ってんじゃないわよ』



(これってラヴィーニア……?けれどラヴィーニアって私で、それにラヴィーニアと話をしている、もう一人って……まさか!?)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ