53.暴れた訳はなんですか?
「でも、ディーゴが……!」
何とか怒られない方法を必死に探すラヴィーニアに、思わず額を押さえた。
「俺のことなんて別にいいから……」
「……良くないわ!」
穏やかなラヴィーニアが大きな声を出した事に驚いていた。
「ディーゴは、ディーゴは私の大切な友達だもの……!」
「…………」
「それに、いつも私を助けてくれて……っ、あと優しいし、お菓子くれるし……私だってディーゴを守りたいもの!!」
最初はラヴィーニアが何を言っているのか分からなかった。
そのくらい彼女の言葉が衝撃的だったのだ。
自分の身は自分で守るのが当たり前だった。
誰かに守ってもらうなど考えた事もなかった。
(ほんと、変なやつ……)
「……ありがとう」
「え……?」
「その気持ちだけで十分だ」
「でも……!」
「良いんだよ……それと、これを受け取ってくれ」
「お守り……?」
「あぁ」
「いいの?」
金色のチェーンにディーゴの瞳と同じ色の石が付いている。
とても綺麗なネックレスだった。
ネックレスを付けたのを見たディーゴは複雑そうな表情を浮かべて微笑んだ。
「……ディーゴ?」
「よく似合ってる」
「ありがとう……」
思い出を振り払うように、そっと目を伏せた。
そして、ラヴィーニアと共に急いで王城へと向かった。
*
王城で手当てしていると、皆が心配して、お見舞いに来てくれた。
幸い傷は浅いものが多く、跡が残らないと医師が言ったのを聞いて、一安心したのだった。
けれど、顔や目立つ場所にも切り傷はあるので暫く学園を休まなければならなくなった。
魔法師と共に実験して分かった事だが、ラヴィーニアの光魔法は自分自身には効かない。
故に自分が負った怪我は自然に治るのを待つしかないのだ。
そしてエミリーは闇魔法の影響なのか、アルノルド同様……それ以上に攻撃的だった。
その表情は以前のエミリーとかけ離れており、狂気に満ちているように感じた。
ひどく暴れてしまうので、拘束しながら何度か質問をしてみても何も答えることはない。
エミリーの家族が城に呼ばれたが、あまりの変貌ぶりに悲しみ、驚いているようだった。
そしてエミリーの母親が「昔から穏やかで優しい子だったのに……」と泣き崩れるのを見て、ラヴィーニアはアルノルドのように元に戻す事が出来るかもしれないと思った。
周囲の反対を押し切る形で、エミリーの元へ向かった。
「ッ、お前を、許さない……!!」
「……!」
「壊れろッ」
エミリーは髪を振り乱しながら暴れていた。
目の下には隈があり、拘束具で肌は擦り切れていた。
唇に血が滲んでも暴言を吐きながら叫んでいた。
自分に傷が付いても、ひたすら暴れているエミリーの痛々しい姿に思わず顔を背けたくなった。
魔法師がエミリーの中に闇魔法が強く根付いている為、アルノルドのように正気に戻す事は難しいと言った。
けれどエミリーを治す為に、懸命に光魔法で治療を続けた。
やっとエミリーの意識がハッキリと戻ってきた頃には、涙を流しながら謝り続けていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
「……エミリー様?」
「わ、私、あんなに酷いことを!!」
「……!」
「あ、っ……嫌ぁ!」
取り乱すエミリーの元へ行き、ゆっくりと抱きしめた。
「私は大丈夫……大丈夫だから落ち着いて」
「ごめんなさいッ……!!ラヴィーニア様、ごめんなさい」
謝りながら慟哭するエミリーの背を撫でる。
彼女が人を傷つけようと望んでやったとは思えなかった。
何故エミリーがこうなってしまったのか……原因を絶対に突き止めたかった。




