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52.心が痛みます


その能力のお陰で、この世界で生き残れているのもあるが、それを知ってもラヴィーニアはヘラヘラと笑っていられるだろうか。


(今更……嫌われたくないなんておかしな話だ)


ディーゴの能力を知っているのは、ごく僅かな人だけだ。

人の思考を読めるなど、畏怖の対象にしかならない。



「ディーゴはすごいのね!」


「は…………?」


「トランプに絶対勝てるでしょう?あとは悪い人を捕まられるもの!だからディーゴは影をしているのね」


「……!」


「まるでヒーローみたい!」



ヘラリと笑ったラヴィーニアに恐怖の感情は見えない。

それに嘘もついている様子はない。


(なんで、こんな……)


ラヴィーニアの思考回路は、やはり自分には絶対に理解出来そうになかった。

けれど、それが何よりも嬉しい事は確かだった。 

諦めていた事を、こうして平然と受け入れてくれる。


グッと手を握り込んだ。

捨てたはずの感情を分け与えてくれるラヴィーニアが愛おしくもあり、同時に憎らしかった。


そんな彼女は腰が抜けたらしく、擦り傷だらけの肌とボサボサの髪でペタリと座り込んでいた。



「すぐに手当てしよう」


「え……!?きゃっ!」



ボロボロの制服を隠すように上着をかけて、軽々とラヴィーニアを抱き抱える。


初めはバタバタと暴れていたが「落とすぞ?」と言うとピタリと大人しくなった。

恥ずかしいのか、顔を覆っている。



「ディーゴ……お、重いからっ!自分で歩ける」


「別に重くない」



唸るラヴィーニアを無視して歩き出す。

そして誰にもバレないように、馬車へと乗り込んだ。







「お前にこんな怪我をさせて、懲罰もんだな……」



ガタガタと揺れる馬車の中、ポツリと本音が溢れた。


自分が居ない時に必ず起こる嫌がらせ。

光魔法を持つラヴィーニアを狙って動いているのは分かっていたが、証拠も掴めないし痕跡も辿れない。


全て煙のように消えてしまう。


目の前にある筈なのに追えない闇魔法に成す術もなかった。

なかなか尻尾を出さない為、わざと護衛から外れていた。


(だから反対だったんだ……ラヴィーニアを囮にするなんて)


少しでも遅れてしまえば、こうなる事は分かっていた。

しかし上からの命令でラヴィーニアを囮に使ったのだ。


目を光らせてはいたが、完全に後手に回ってしまい怪我を負わせてしまった。

命令に逆らえない自分が嫌になる。


けれど、アルノルドよりも酷い症状のエミリーを引っ張り出すことが出来たのは、作戦の成功と言えるだろう。


恐らく、アルノルドの場合は闇魔法を無意識のうちにラヴィーニアの光魔法が浄化した。


今回のエミリーの場合は、ラヴィーニアは触れておらず、光魔法で浄化もしていない。

という事は、闇魔法の痕跡は残ったままだ。

詳しく調べれば大本を引っ張り出せるかもしれない。


けれど、その為に犠牲にしてしまったラヴィーニアに捨てた筈の心が痛んだ。



「ごめん……本当に」


「え……?」


「…………俺のミスだ」


「ディーゴ、怒られるの?あの怖い国王様に……」


「まぁ……そうかもな」



ラヴィーニアに怪我を負わせたのは事実なので、果たして何を言われるのか。

上の理不尽さには、もう慣れてはいるが嫌味の一つや二つで済むことはないだろう。



「私……自分が転んだって言おうか!?」


「はぁ!?」


「それか突風が吹いてきて、それで……小さな葉っぱが沢山飛んできたとか!」


「あのなぁ……そんな怪我で言い訳出来る訳ないだろう。どう見ても風の魔法の痕跡がある。城の魔法師が見たら一発で嘘がバレるぞ」


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