49.強制的なプレゼントです
四人で出掛けた次の日、フィンのアドバイスによりステファノに貰った髪留めをつけて学園へ登校した。
それを見たステファノはとても嬉しそうに、顔を綻ばせていた。
そしてジューリオはモサッとした前髪と分厚い眼鏡をしていても分かるほどに不機嫌だった。
そのまた次の日、ジューリオはプレゼントを持ってきた。
受け取る理由が無いと断っても、ジューリオは絶対に引かなかった。
そのまま押し切られる形で箱を開けると、薔薇の花のブレスレットが入っていた。
薔薇には宝石が嵌め込まれており、とても……とても高級そうである。
ジューリオが手首にブレスレットをつけてくれたのはいいが、そのまま手の甲をペロリと舐められて、全身に鳥肌が立つ。
「ひ……きゃああああ!!」
反射的にジューリオの頬をスパーーンと引っ叩いた。
勿論、無意識である。
ブンブンと腕を振り回していると頬を押さえながら恍惚とした表情で見ているジューリオ。
思わずブレスレットを外そうとするが……なんと、ブレスレットは外れない。
「あはは!それ、外れないんですよ……私の新しい発明です」
「っ!?」
「ラヴィーニア様の為だけに作ったんです……すごいでしょう?」
と、嬉しそうに笑うジューリオから逃げるように部屋から出る。
フィンやビアンカに助けを求める為に、早歩きで廊下を歩いていた時だった。
ーーーーーベシャ
「…………ッ!?」
どうやら何かに躓いたようだ。
そのまま起き上がろうとすると、パタパタと走り去っていく足音。
(誰かに足を引っ掛けられた……?いや、まさか)
盛大に転んだラヴィーニアは訳もわからないまま、ぶつけた額を押さえていた。
起き上がり周囲を見渡しても誰もいなかった。
そして次の日、筆記用具が無くなり
そしてまた次の週、下駄箱に泥が詰められて
そしてまたまた次の週、五回も転んだ
「ちょっとラヴィーニア……!貴女、びしょ濡れじゃない!?」
「ビアンカ……」
「どうしたの!?」
「上から水が降ってきただけよ……気にしないで頂戴」
「……!」
「着替えてくるわ」
キリッとした言い方をしているが、ラヴィーニアはびしょ濡れである。
何事も無かったように教室を出て行った。
颯爽と去っていくラヴィーニアの後をフィンが追いかけようと立ち上がると、タイミングを見計ったようにエレナがフィンに声を掛ける。
エレナは魔法学で分からないところがあると、可愛らしく首を傾げた。
フィンは困惑した様子を見せたが、すぐに笑顔を浮かべた。
周囲の目もある為、断ることは出来なかったようだ。
ビアンカもラヴィーニアの後を追いかけようとするが、メリーに制止されてしまう。
(ラヴィーニア……大丈夫かしら)
メリーにラヴィーニアを追いかけるように頼むが、メリーは静かに首を振る。
それに他の影が付いているから大丈夫だろうと。
そして明日からディーゴがまた毎日付くことになる……というメリーの言葉に渋々頷いたのだった。
そしてフィンやビアンカも、なるべくラヴィーニアと一緒に居るように心がけてはいるが、フィン達の目を掻い潜り地味な嫌がらせは続く。
そしてディーゴが帰ってくると嫌がらせがピタリとなくなるのだ。
今は、どうしてもディーゴしか出来ない任務があり、ラヴィーニアの側には他の影がついている筈なのに、何故何もしないのだろうか。
(お父様も、何を考えてるの……!報告は行っているはずなのに、こんな時にディーゴをラヴィーニアから離すなんて)