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47.恋に落ちる瞬間を見てしまいました

不服ではあるが、ディーゴのお陰で上手くいっているため、反論することも出来ずに溜息を吐いた。


紅茶を飲みながらボンヤリとしていると、ラヴィーニアから声が掛かる。



「……あの、ステファノ殿下」


「…………?」



ゆっくりと視線を流すとラヴィーニアはタルトに乗っていた苺をフォークで刺して、ステファノの前に差し出した。



「苺、食べれますか?」


「あぁ……」


「はい、どうぞ!」


「???」



戸惑いつつも、パクリと苺を口に入れると嬉しそうに笑っている。



「嫌いなフルーツはありますか?」


「いや……特には無いが」


「分かりました」


「???」



ラヴィーニアはフルーツタルトのフルーツを次々と口の中へと入れていく。

そして訳もわからず食べるというやり取りが何度か続いた。



「はい、終わりです」


「……?」


「美味しかったですか?」


「……あぁ、美味しかった」


「ふふ、良かったです」



ラヴィーニアはフルーツが無くなったタルトを美味しそうに食べている。

頭にハテナを浮かべながら、助けを求める為にディーゴの方をチラリと見る。


するとディーゴはまるでゴミを見るような瞳で此方を見ていた。


サラサラと何かを書き込んでいるディーゴを見ていると、赤い血文字で『 カ ス 』 『 ク ズ 王 子 』と掲げられている。

ラヴィーニアが食べ終わるまで悪口は書き続けられた。


苛々が募っていた時にディーゴから『 褒めろ 』と指示が飛ぶ。



「ラヴィーニアは……その、随分と雰囲気が柔らかくなったな」


「え……?」


「……昔よりも、変わったというか」


「私は前の性格が好きなんです。自分の意見がハッキリ言えて、かっこよくて」


「……!!」


「以前の性格に、戻りたいくらいです……」



落ち込んだ様子を見せるラヴィーニアにギョっとする。


ディーゴは氷のような視線で此方を見ていた。

挽回しなければと必死で頭を働かせる。



「……俺は、今のお前も良いと思う」


「ステファノ殿下……?」


「優しくて、温かくて……一緒に居ると安心する」


「でも……」


「もっと自分に自信を持て!俺は今のお前が好きだ。まぁ……少し阿呆だがな」


「……!」


「も、勿論、変な意味じゃないからな……!」


「ふふ、分かっています。でも、ステファノ殿下に、そう言ってもらえて嬉しいです」


「……!」


「とても元気がでました……ありがとうございます!」



ディーゴはホッと息を吐き出した。

照れるように笑うラヴィーニアを見つめたまま、動かなくなるステファノ。

なんとか良い雰囲気まで持っていったのは良かったが……。


(人が恋に落ちる瞬間を見てしまった……)


しかも、小さな頃から世話をしてきたステファノの初恋の始まりである。

そんな事も知らないラヴィーニアはご機嫌で紅茶を飲んでいる。


ステファノは此方の存在すら忘れているのだろう。

ラヴィーニアを熱い瞳で見つめたまま固まっている。


溜息を吐きながら、冷めた紅茶を飲み込んだ。


次の行先をフリップボードに書き込みながら、ステファノとラヴィーニアの距離を縮めるという自分の任務を達成出来たことに安心したのだった。







「……あれ?フィン、もうビアンカとの話はいいの?」


「えぇ……まぁ、そうですね」


「……」


「ビアンカ、大変!顔が赤いわ……熱でもあるの?」


「い、いえ……ちょっと暑くて!そっ、それよりもラヴィーニアは何を選んでいるのかしら」



ディーゴがメリーを見ると真顔でグッドサインを送っている。

どうやら色恋事は自分よりもメリーの方が上のようだ。


今度はラヴィーニアとステファノのポンコツコンビのデートのサポートを、お願いしようと心に決めたディーゴであった。


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