43.挽回の兆しはありますか?
あの後、アルノルドはすぐに王城へと向かった。
ディーゴが報告していたお陰で、数人の国家魔法師達がアルノルドを隅から隅まで調べ上げ闇魔法の存在を確認した。
闇魔法は光魔法と同じくらい珍しい魔法だ。
そして、光魔法の使い手が現れると必ずといっていいほど闇魔法の使い手が現れる。
そして闇魔法を使う者は、光魔法の使い手を消そうとするのだと記されている。
「ディーゴ……お前ともあろう者が何をしている」
「陛下、申し訳ございません」
「お前が居ない間、ラヴィーニアに護衛は?」
「二人程、影を付けていたのですが……何故か誰も気付かなかったと言っています」
「そうか。もしかしたら闇魔法の影響かもしれぬな」
「……はい」
「まぁ、よい……今回は上手くやられたが次は逃さぬ」
自分が居ない間にはラヴィーニアの側には、いつも影を二人も付けていた。
それなのに二人の目を掻い潜った上に、ラヴィーニアが連れ去られた事にすら気付かなかったなど、最初に聞いた時は信じられなかった。
「必ず正体を突き止めよ……そして生捕にしろ」
「……はっ!」
「どんな方法でもよい……多少ならば過激な方法でもな。分かっておるな?ディーゴ」
「…………。かしこまりました」
「生温い事をして取り逃すなど、あってはならぬぞ」
「陛下の御心のままに」
ラヴィーニアを傷付けないようにしながらも、闇魔法を使う者を炙り出す為に上手く使えという事だろう。
まるで確認をとるような、ビリビリとした圧を感じて頭を下げる事しか出来なかった。
国王は満足そうに頷いてから、声のトーンを和らげて話し始めた。
「話は変わるが……ディーゴ」
「……なんでしょう」
「ラヴィーニアは、ステファノと良い関係を作れているのか?ロンバルディ家に頻繁に出入りしていると聞いてはいたが」
「……」
「何か問題があるのか?」
「やはり、謁見時のステファノ殿下の言動が引っ掛かり、ステファノ殿下に嫌われていると思い込んでいるようでした」
「なんだと……!?」
「故に恋愛感情は皆無です」
「挽回の兆しは?」
「今の所、期待は出来ないかと……」
その言葉に国王は考え込んでいた。
銀色の髭を指で遊びながら腕を組む。
「ならば、ジューリオはどうだ?」
「……」
「表向きはまともに見えたぞ!ラヴィーニアと二人で何度も出かけているそうじゃないか……!」
「陛下……諦めて下さい。それにラヴィーニア様と一番仲が良いのは王女殿下かもしれません」
「ほう……ビアンカは本当に良くできた子だ」
「……そうですね」
国王はビアンカを溺愛している。
ビアンカに関しては、いつもの人に恐怖を与える威圧感も無くなり、子供を可愛がる父親の顔を見せる。
表情が和らいだのを確認して意を決して口を開いた。
「……それと王女殿下は、ラヴィーニア様の弟君のフィン・ロンバルディに想いを寄せているとメリーから報告を受けております」
「な、なんだと!?!?」
わなわなと震えながら国王が立ち上がる。
メリーとビアンカから、フィンとの距離を縮める為に一肌脱いで欲しいと言われ、この恐ろしい国王の前に立ち地雷を踏み抜いている。
そのうち胃が捻れてしまうのではないだろうか。
けれど、妹のように可愛い二人の頼みを断る訳にもいかなかった。
「可愛い可愛いビアンカが……あんなナヨナヨした男に!!」
確かにフィンは顔も綺麗で男性にしては中性的である。
しかし性格は誰よりも男らしく、魔法の腕も確かだ。
三属性持ちは国家魔法師でも数人しか居ない貴重な存在である。
ビアンカが降嫁するのにも、申し分のない相手だろう。