37.味方が増えました
攻略対象者達がこぞってラヴィーニアの周囲を固めていたが、彼女の元婚約者であるアルノルドだけは、一度も姿を見せなかった。
徐々に以前のラヴィーニアと別人であることが判明した。
フィンルートでの違和感のある動き方を見て、シナリオを知らない転生者ではないかと思ったのだ。
エレナの馬鹿な行動の数々にもビックリだが、ラヴィーニアの飛び抜けたお人好し振りにも驚いていた。
そしてラヴィーニアがエレナの邪魔をしている訳ではなく、フィンとエレナを応援していたというのは、さすがに予想外だった。
「私もアルノルドルートしか知らなくて……」
「……ラヴィーニアが好きって言っていたけど、それならどうしてフィンルートはプレイしなかったの?」
「アルノルドルートのラヴィーニアが好きで……!フィンルートも後々はやろうと思っていたんですけど」
「では何故、アルノルドと婚約破棄を?」
「それは……」
「内情は伏せられてるでしょう?」
「えっ!?そうなんですか??」
「…………」
「フィンが、色々とやってくれたみたいなのは知っているんですけど……」
「そう、フィン様が…………やっぱりお父様が、お兄様かジューリオと貴女を結婚させたいと思ってるからかしら?」
「えっと……実はシナリオ通りに頑張ろうって思っていたんですけど、国王陛下に言われてステファノ殿下とジューリオ殿下と、アルノルド様とフィンと話し合ったんです」
「……」
「アルノルド様が色んな女性と遊んでいたのが、フィンにバレてしまって。そのまま流れで婚約破棄に……」
「……なるほどね。フィン様は筋金入りのシスコンですもんね」
「ッ、フィンはシスコンなんですか!?」
「えっ!?」
「え……?」
「まさか気付いてないの……?なら、貴女の秘密を守り、護衛をする為にディーゴが貴女についてる事は勿論知ってるわよね?」
「ハッ……そういえばそんな事を言っていたような」
「もしかして忘れてたの?」
「…………はい」
「貴女……頭大丈夫?」
「たぶん、大丈夫です!!」
(…………この子、本当に大丈夫かしら?)
何となく……いや、かなり頼りなさそうである。
何も考えていないどころの話ではない。
しかし、シナリオ外でフィンに近づく為には、今のラヴィーニアに好かれる事は必須だろう。
ラヴィーニアとフィンが仲が良ければ尚更だ。
それに同じ転生者同士、安心できる部分も多い。
この世界に転生した以上、この世界に適応して上手くやっていくしかないのだ。
元の世界に帰る方法が無いかと探した時期もあったが、何の手掛かりもなかった。
ならばもう、この場所で幸せを掴むしかない。
「えっと……まぁ、私は貴女の味方よ、お互い協力しましょうね!」
「ビ、ビアンカ様ッ!」
「ビアンカでいいわ、わたくしもラヴィーニアって呼ぶから」
ラヴィーニアはキラキラとした瞳で此方を見ていた。
純粋なラヴィーニアを見ていると邪な気持ちで彼女に近付いた事に引け目を感じてしまう。
ブンブンと首が千切れそうな程に縦に振る姿を見て、ビアンカは小さく吹き出した。
「友達になりましょう?」
「ばいぃぃ!!」
「…………どうして泣くのよ?」
「フィンに、バレちゃうからラヴィーニアを演じてる間は友達を作らない方がいいって言われててッ」
「そうなのね」
「っ、でも、やっぱり寂しいじゃないですかぁ」
「まぁ、確かに貴女には辛いかもね……」
「ビアンカが友達になってくれるのがうれじぐでぇ」
抱きついて鼻水を垂らしながら、ワンワン泣くラヴィーニアの頭を撫でる。
なんとなく、フィンやディーゴの気持ちが分かるような気がした。