35.予想外の言葉に驚いています
「ビ、ビアンカ王女殿下……話とは」
「…………」
「あのぅ……」
「ラヴィーニア様」
「はい!!」
ビアンカの大きな声にピクリと肩を揺らす。
冷静な態度を崩さないビアンカの銀色の瞳が、しっかりと此方を見据えていた。
空き教室に入り、ビアンカの後ろに付いていた女子生徒が頭を下げる。
「あぁ……彼女は私の影で護衛よ」
「…………影」
「ステファノお兄様やジューリオにも、影が付いているでしょう?貴女にもね……ドアの外で待っていて頂戴」
「はっ……!」
サッ……と忍者のように去っていった女子生徒を見て、生唾を飲み込んだ。
ディーゴと同じで影は忍者のような身のこなしである。
椅子に腰掛けたビアンカは座るように促す。
ビクビクしながら椅子に座った。
心臓はバクバクと音を立てていた。
暫くの沈黙の後、ビアンカが口を開いた。
「貴女…………転生者でしょう?」
「……!??」
衝撃的な発言に、ポカンと口を開いたまま動けなくなってしまった。
驚いているのを肯定と取ったのか、ビアンカはそのまま話を続けた。
「情報交換しましょう……?」
「…………」
「聞いてるの?」
「あ…………はい」
「貴女、転生者なんでしょう?」
「はい……」
「…………わたくしの情報は余り役に立たないかもしれないけれど、貴女にあげられるものはあげる」
「……本当ですか!?」
ラヴィーニアは立ち上がり、ビアンカの手を取った。
是非フィンルートのラヴィーニアの動きを教えて欲しいものである。
「狙っている男が被らなければだけど、ね……」
「ひぃ……!?」
ビアンカからの圧がすごい。
「わっ、私は誰も狙ってないんです……!」
「本当……?」
「ずっと、ラヴィーニアに憧れていて」
「憧れ……?ラヴィーニアに?」
「そうなんですっ!!ラヴィーニアの事が凄く好きで」
「貴女は憧れのラヴィーニアになれて良かったわね」
「それが………なかなか上手くいかなくて」
「ふふ、そうみたいね」
ビアンカは静かに笑った。
淡々と話す彼女は一見すると冷たく見えるが、どうやら敵意は無いようだ。
「色々見ていたけど、貴女はア……天然よね」
「……天然ですか?言われた事ないですけど」
「…………。本当にラヴィーニアとは似ても似つかないわね」
「ビアンカ王女こそ、性格全然違います!すごく落ち着いていて……も、勿論良い意味ですよ?」
「そう……?そうかもね」
ビアンカは王女であり、色々な貴族から求められるが故に我儘で傲慢な性格なのだ。
それに兄であるステファノが大好きで、そのステファノに仕えるディーゴにベタ惚れであったのだが‥。
「ビアンカ王女は誰を……ステファノ殿下ではないですよね?」
「えぇ、勿論。ディーゴでも無いわよ?」
「はっ……!もしかしてアルノルド‥」
「有り得ないわね」
しっとりとしながらも、バサっと切る感じが、憧れのラヴィーニアと似ていて、ビアンカの事が直ぐに好きになった。
ダイアモンドルートのステファノでも、サファイアルートのディーゴでもなく、ルビールートのアルノルドでもない……残るのはエメラルドルートのフィンだけだ。
ビアンカはフィンと同じクラスなのに、今まで一度もフィンと話していなかった。
となるとフィンは除外されそうだ。
「えっと、もしかして」
「その通りよ、わたくしは……」
「もしかして、隠しキャラですか‥?」
「そうそう…………って違うわよ!やっばり貴女、ア……天然ね」
「???」
素晴らしいノリツッコミである。
「もしかして……もしかしてのフィンですか!?」
「正解よ」
「で、でも全然そんな素振りは……!」
「ヒロインがフィンルートを選んだでしょう?だから様子を見ていたのよ」




