33.まさかの展開です
これは恋愛のきっかけを作る以前の問題である。
下手をすると、人として好きになってもらう所から始まるのではないだろうか。
フィンはステファノの顔を見て吹き出し、ディーゴの背後からは轟々と炎が立ち登る。
ディーゴがステファノを鋭く睨みつける。
そして、どうにかしろと言う視線を込めて、首で"行け"と合図にする。
怒るディーゴを見たステファノは、渋々口を開く。
「…………あれは、その」
「……?」
「嘘だ」
「嘘……?」
「…………あぁ」
「あの、ステファノ殿下……」
ラヴィーニアがステファノを真っ直ぐ見つめる。
抜けているラヴィーニアの事だから「嘘だったんですね~わかりましたぁ」と騙されてくれそうだと思っていたステファノは、ラヴィーニアから発せられる言葉を聞いて愕然とする事になる。
「…………人を傷つける嘘は良くないですよ?」
正論である。
ラヴィーニアは眉を顰めてステファノを見つめていた。
どうやらラヴィーニアの中の、元から少ないステファノへの好感度がガラガラと音を立てて下がったのが分かる。
ディーゴがステファノの足を踏み、軽く舌打ちをする。
「ーーーいっ!」
「ラヴィーニア様、ステファノ殿下はどうやらお疲れのようです」
「そうなの……?」
「今日はお茶菓子はマドレーヌでしたよね、楽しみですね」
「そうね、マドレーヌ……!楽しみだわ」
「紅茶は何にします?」
「もしかして、今日はディーゴも一緒にお茶をしてくれるの?」
「えぇ」
「嬉しい……!ディーゴとお話が出来るなんて」
「楽しみですね」
ディーゴを完全に信頼しているのか、一緒に居れることを喜ぶラヴィーニア。
ステファノは分かりやすい程に落ち込んでる。
そんなステファノに、フィンは憐れみを感じていた。
*
ーーー学園にて
「おい、ストーカー」
「!?」
「様子はどうだ?」
「何だ、ディーゴか……ノックも無しにいきなり現れないで下さいよ」
ディーゴの声に一瞬だけ驚いたジューリオは何事もなかったように双眼鏡に視線を戻す。
その視線の先には勿論、ラヴィーニアが居る訳で……。
本と資料が積み重なった部屋の中、ジューリオは当たり前のように窓辺からラヴィーニアの姿を追いかけていた。
「隣国に行って、ドMは治ったのか?」
「何回も言ってますけど、私はドMじゃないんです。綺麗で気が強い子に罵られるのが好きな健全な男子です」
「…………」
「ディーゴは何か私に用事ですか?ラヴィーニア様の側に居るのが仕事ですよね……何さぼってるんですか」
「あぁ……今はフィンが居るから平気だ」
ラヴィーニアのお守りも、フィンと交代しながら上手くやっていた。
ディーゴも学園にいる間、ラヴィーニアに付きっきりとはいかない。
同時進行で他の仕事もこなさなければならないからだ。
「全く、王家は人使いが荒いよな」
「私は今、とても忙しいので愚痴なら他の人にお願いします」
「…………」
「あっ!汚い手で私の女神に触れるな……チッ」
ジューリオの暴言が部屋に響き渡る。
幼い頃から天才と呼ばれ、頭も顔も良いのに性格に難がありすぎて、問題児扱いされてきた。
自分の好みの女性を見つけると、すぐさま求婚してしまう。
それが平民の娘だろうが侍女だろうが関係ない。
国王が強制的に隣国に送ったのはいいが、ジューリオは何も変わっていない。
そして隣国から帰ってきた後は、国王の命令で失態を犯さないようにと監視が厳しくなった。
そして貴族の御令嬢でジューリオの好みに当てはまるのは、なんとラヴィーニアだけだったのだ。
監視されている今、ラヴィーニアだけがジューリオの最後の砦なのだ。
昔からラヴィーニアの冷めた態度に惚れ込んでおり、実はラヴィーニアに殴り飛ばされていた少年の正体はジューリオだった。




