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26.一生懸命……頑張ってます


それをきっかけに、周囲からは少しずつ話し声が聞こえ始めた。


ラヴィーニアは鞄から本を取り出してペラペラとページを捲る。

静かに過ごす事、それはフィンとの約束であった。


『学園ではラヴィーニアの振りをする』


ラヴィーニアはラヴィーニアを完璧に演じる自信は無く、首を振ると「これは姉上自身を守る為にも必要な事なんです」と強く力説され、押し切られたため頷くしかなかった。


(アルノルドルートなら、いくらでもラヴィーニアを演じられたのに……)


不安になりフィンをチラリと見る。

そんな此方の視線に気がついたフィンは小さく首を振る。

それには思わず涙目である。


(無理ぃ……)


徐々に騒がしくなる教室。

こんな時にラヴィーニアなら「うるさいわ……静かにして」と言いそうだが、今の自分が其れを言えるわけもなく。


(どうしよう……"うるさい"って言った方がラヴィーニアらしい気もするけど……でも、また噛んじゃいそうで怖い)


そう考えていると、斜め前に座っていたヒロインであるエレナが後ろを振り返りながら口を開く。



「……ご、ごめんなさい、煩かったですよね」


「…………?」


「私、貴族のルールってよく分からなくて……」



その言葉を聞いてキョロキョロと辺りを見回していた。

誰かがエレナに注意したのだろうか。

何故か此方と目が合うと、悲しげにさっと逸らされる視線……。



「???」


「……っ、すみませんでした!ラヴィーニア様」


「!!?」


「私、気を付けますので……」



瞳を潤ませているエレナにハッとした。

もしかしてフィンルートでのラヴィーニアの言わなければならない台詞があったのかもしれない。


それを言わなかったからヒロインが困惑してしまったのだろうか。


(ラヴィーニアならこんな時、なんて言うのかしら……「その通りよ」「分かればいいわ!」かしら。「うるさい」って言えば大丈夫そうな気もするけれど……でも今更皆の前でそんな事言えないし、何か言わなきゃシナリオがっ……!!)


考えすぎて、思考停止中である。



「…………」


「……エレナちゃん、気にしなくて平気だよ」


「ありがとう、エミリー」



内心かなり焦っていた。

そして考え込みすぎて何も言えなくなってしまった。

眉をひそめながらエレナに話しかけるエミリーの声に救われたのだった。


(エミリーナイスフォロー!!!貴女は天使よッ!!)


そんなエレナとエミリーを見て、心の中でガッツポーズを取っていた。



「…………ちょっといい?」



すると、フィンが機嫌悪そうに此方に話しかけてくる。



「フィ…………何かしら?」



学園でフィンの名前を呼ぶ事は禁じられている。

ボロが出そうになるのを必死に抑えながらラヴィーニアはフィンを睨み付ける……涙目で。



「……ちょっと話があるから来てくれない?」


「…………」



静かに立ち上がってフィンの後に続いて、教室を出る。

それをニッコリと機嫌よく見つめていたエレナと、静観していたビアンカに気付く事はなかった。








「…………」


「…………」



無言で廊下を歩いていく。

空き教室に入って、フィンが小さく頷くと、すぐにフィンに抱きついた。



「フィン……ッ!!どうしようっ!!上手く出来てた??」


「姉上…………バレるのも時間の問題だよ?」


「へ……っ!?」


「……はぁ」



フィンの溜息に困惑するしかなかった。

オロオロと右往左往しているのを落ち着かせるようにして、椅子に座らせる。



「こ、こんな生活!もう無理よ……!」


「何でエレナ嬢に絡まれたの?」


「エレナ嬢?それってシナ……ゴッホン」


「???」



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