25.王家の影が現れました
何故かディーゴがステファノを叱り始めた。
王家の影であるディーゴはステファノの護衛であり、一般生徒として潜り込んでいるようだ。
「貴方は最近コソコソと……!私に隠れてどこかに行くのも如何なものかと」
「あー分かった分かった。説教は後で聞く」
「そんなことばかり言って!また逃げる気じゃ……」
「ディーゴ、御令嬢の前だ」
「……!」
「そろそろやめてくれないか?」
「これはお見苦しい所を……失礼致しました」
ディーゴが柔らかな笑顔を浮かべたまま腰を折る。
ラヴィーニアはラヴィーニアらしくしなければならないので「大丈夫ですよ~」と言いたいのを必死で我慢する。
ヒクリと口角が動く。
「気をつけて……下さいませ」
「ディーゴ、此方はラヴィーニア・ロンバルディ公爵令嬢だ」
「…………ご機嫌よう」
「そうとは知らずに申し訳ありません。ステファノ殿下の友人のディーゴ・イルムナです」
ディーゴの視線がチクチクとラヴィーニアに突き刺さる。
まるで、なんでステファノと仲の悪い筈のラヴィーニアが一緒に居るんだ?と言いた気な視線である。
真顔を貼り付けながら、ラヴィーニアはフンッ……と視線を逸らすが……
ーーーー心が痛む。
不安になりチラリとディーゴを見るとパチリと視線が合い、慌てて逸らす。
そして、いつの間にか戻ってきたフィンが警戒しながらディーゴを見ていた。
「姉上……この方は」
「ステファノ殿下のご友人のディーゴ・イルムナ様です」
「……」
「先程の御令嬢はいいのですか……?」
「ハンカチを届けただけだよ、早く教室に向かおう」
「えぇ……」
ディーゴとステファノをチラリと見た後、フィンに連れられて歩き出す。
「ステファノ殿下……」
「…………」
「説明……してくれますよね?」
「……何をだ?」
「私が任務に行っていた間に、一体どんな心境の変化があったんですか?」
「別に……」
「ステフ…………俺に隠し事はなしだぞ?」
「はぁ……分かってるよ」
「ジューリオも、そこにいるんだろう?ストーカーしてる場合じゃねぇからな。いいから来い」
すると先程去っていった筈のジューリオが柱の影から出てくる。
首には双眼鏡が掛かっており、ラヴィーニアの後ろ姿を視線で追いかけている。
「言わせてもらいますけど、私は関係ないじゃないですか……!」
「あるんだよ」
「忙しいから邪魔しないで下さい」
「入学早々に仕事を増やすな……お前が、あの御令嬢に求婚してるのは聞いているからな」
「げッ……!何でディーゴが知ってるの!?兄上、何か言ったんですか!?」
「……俺は何も言ってない」
「ジューリオ、王族が適当に求婚するんじゃねぇって何度言ったら分かるんだッ!!」
「今回は適当じゃないですから!ちゃんと婚約者候補の御令嬢を!!いだっ……耳引っ張んないで!」
*
教室に入ると、アルノルドルートの時とはクラスメンバーが違っている。
なんとルートにより、クラスのメンバーが違うのだ。
フィンルートを何も知らないラヴィーニアは、周囲を観察しながら席に着く。
フィンルートではヒロインであるエレナ、ラヴィーニア、飛び級で入学したフィンは同じクラスである。
そして何故か、そこには王女であるビアンカも居る。
(ビアンカ王女はステファノルートとディーゴルートでヒロインと同じになるんじゃ……?)
教室の中はシンと静まり返っている。
王女ビアンカ、公爵令嬢であるラヴィーニア、魔法の天才と呼び声高いフィンが居るからだ。
そしてラヴィーニアとフィンは仲が悪いことで有名な姉と弟。
教室の居心地は、大変悪い。
そんな中、ヒロインであるエレナの隣の席に座っている、お助けキャラとして登場する子爵令嬢であるエミリーと談笑を始めた。




