23.ゲームスタートです
そして月日は流れーーー
今、ジュエルライト魔法学園の門の前に立っていた。
画面の中では感じることの出来ない、大迫力の建物に興奮する気持ちを必死で隠していた。
この学園こそ、乙女ゲームの舞台なのだ。
そしステファノ、ジューリオ、フィンもラヴィーニアと共にいる。
何故一つ下の学年の、ジューリオとフィンが一緒に入学して来たのかというと……。
「私、天才なんで」
「僕、魔法得意だし」
まさかの飛び級である。
しかし、フィンの飛び級も驚いていない。
何故ならば乙女ゲームではヒロインが入学するのと同時に、フィンも学園に居たからだ。
フィンは魔法を三属性も使えるという事で、学園に入学したのだ。
実際はラヴィーニアの側に居たいが為に、ルドヴィカとディエに頼み、学園に入ったという裏事情を全く知らないままであった。
ジューリオは頭が良く、優秀な魔法研究者であり、どうやら隣国に行ったのは性格矯正だけが目的では無かったようだ。
隣国では国の代表として立場は弁えていたらしく、好みの女性を見つけても必死に耐えていたらしい。
故に隠す事だけは上手くなったらしいが、我慢していた分……ラヴィーニアに対して欲望が大爆発している。
今日も、結婚の申し出を断ったばかりだ。
ジューリオは前髪で目元を隠し、もさっとしていて分厚い眼鏡のままでの登校である。
あまりの奇抜な格好に、周囲もジューリオに話しかけるべきか否か迷っているように思えた。
けれど髪を整えたら、どの攻略対象者達よりも一際輝くイケメンなので、実は隠しキャラでしたとか言い出したら大爆笑である。
そしてステファノは新入生を案内する為に此処に居る。
ヒロインであるエレナの攻略キャラは、ステファノ、アルノルド、フィン……今はこの場にはいないが、サファイアルートである王家お抱えの影で、珍しい魔法を使うことが出来るディーゴが居る。
ダイアモンドルート、ステファノのライバルは、ステファノの妹で、ジューリオの姉である第一王女であるビアンカ。
ビアンカは幼い頃から自分が価値のある存在だと教え込まれ、甘やかされて育った為、とても我儘なのだ。
自分の気に入ったものは必ず手に入れるし、自分のものを取られるのが大嫌いである。
また裏表が激しい性格な為、これまた王道のダイアモンドルートに相応しく、ヒロインを徹底的に追い詰めていく……らしい。
サファイアルートの王家お抱えの影であるディーゴのライバルは、同じく王女ビアンカ……彼女は幼い頃からディーゴに想いを寄せており、ディーゴを愛してやまないビアンカの激しい猛攻に耐えるヒロインと、泥沼な展開は最高に面白い……らしい。
そう思うと、ビアンカは典型的な悪役令嬢である。
一方、ラヴィーニアは無表情で冷めた悪役令嬢といった感じだろうか。
エメラルドルートのフィンのライバルはラヴィーニアである。
フィンと仲良くなるにつれて、ロンバルディ家の周囲をウロウロしているヒロインが気に入らないというラヴィーニアがフィンとの仲を邪魔してくる。
上手くラヴィーニアに気に入られると味方になってくれるが、失敗すると容赦なく潰されるという意外と過激な話……らしい。
全て同じゲームをしていた友達に聞いた情報な為、正確にはどんな内容なのかは分からない。
そしてルビールートは、アルノルドの婚約者であるラヴィーニアがヒロインに正々堂々と立ち塞がる。
それでも惹かれ合うアルノルドと主人公に気付いたラヴィーニアは、引き際を見極めて、しっかり慰謝料をブン取って身を引く。
彼女の素晴らしさが最も輝く素晴らしいルートである。