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20/84

20.餌付けされています


ジョセフィーヌを触っているステファノの目は輝いている。

そんな時、フィンが耳打ちする。



「姉上……!!一番の狂犬を誑し込むのはやめてよ……!!」


「おい、フィン……!聞こえてるぞ」


「狂犬……?あはは、フィンたら!ノアはまだ子犬よ」


「前途多難だ……」


「???」



フィンは溜息を吐いている。


ノアを下に下ろすとジョセフィーヌの周りを元気に飛び跳ねる。

クリーム色のふわふわとした毛がボールみたいで、本当に可愛らしい。


それから次の日も、また次の日もステファノはノアの様子を見に現れた。


子犬とジョセフィーヌが遊んでいるのを眺めていると、その横では言い争う声……。



「…………この暇人王子が」


「フィン……!」


「暇人な訳あるか……ノアの様子を見に来たんだ」



フィンの不敬罪とも取れる発言にも慣れたのか、サラリと躱している。

ノアは嬉しそうにステファノと戯れている。


今まで動物に触れられなかったステファノは、その時間を取り戻すように、ノアとジョセフィーヌを可愛がっていた。

学園と政務の合間を縫って、足繁くロンバルディ邸に通うようになっていた。


甘いものを土産に持って……。



「フィン、聞いて!今日はステファノ殿下がとても可愛い形のカップケーキを下さったのよ!後で頂きましょう?」


「……。はい」


「殿下はいつもの紅茶で?」


「ああ、頼む」


「食べるのが楽しみだわ……!」


「…………」



(姉上……本当に甘い物が好きだな)


知らぬ間に完全にステファノに餌付けされているラヴィーニア。

早々に気付いて、ラヴィーニアに忠告しても、何のことやらといった感じで首を傾げていた。

どうやら甘いものには勝てないようで、毎回ステファノが持ってくるお土産を楽しみにしている。


最初の警戒心はどこへやら……。

脇の甘いラヴィーニアに、ハラハラする日々を送っている。


以前、隙の無い完璧な令嬢だった姉は、お人好しで和やかな性格に変わってしまった。


隙だらけだし、断れないし、困った人を放っておけない。

抜けているのに妙な所で変な度胸を発揮する。


そんなラヴィーニアになってから早いもので一カ月。

ルドヴィカも解呪に向けて動いているが、良い知らせは無かった。


過保護なのは自覚しているが、昔から姉は憧れであり、大好きな存在だった。


それなのに突然、冷たく突き放されて、どうすればいいか分からなくなってしまった。

また昔みたいに仲良くなりたくて、自分なりに努力していた時に、ラヴィーニアがこうなってしまった。


もうすぐ学園に通うようになってしまう。

けれどラヴィーニアが心配で仕方なかった。

どうすれば無事に学園生活を過ごせるのか……いつも考えていた。


そうなってくると、第一王子であるステファノが役に立ちそうではあるが、王太子となれば簡単に動く事はできない。


となれば同じ令嬢の仲間が欲しい。

けれど、以前のラヴィーニアは群れない、喋らない、近寄らないである。


故に、友達と呼ばれる令嬢は見た事ないし、家に連れてきた事もない。


かと言って、このままボーッとしている姉を学園に行かせるのは、些かリスクが高いし危険だ。


(……どうしたものか)


ぽや~っとしている姉を横目に考えていた。



「姉上……」


「フィン、どうしたの……?お腹空いた?」


「……空いてない」


「そうなの……?」


「以前の姉上の性格は覚えてるんだよね?」


「えぇ、勿論」


「今から前の姉上を演じてみてよ」



真剣な顔で此方を見るフィンに訳が分からずに、とりあえず頷いた。


ラヴィーニアのセリフは頭に入っている。

それに過去の記憶通りに、やれば良いのだ。

真似をする為に大きく息を吸い込んだ。


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