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18/84

18.罪な組み合わせです

気不味い沈黙が流れる中、意を決してラヴィーニアは口を開いた。



「あっ、あの‥!」


「‥‥なんだ」


「どうか、なさったのですか‥?」



恐る恐る聞けば、ステファノは顔を上げてラヴィーニアに縋るような視線を送る。

不思議に思い首を傾げると、ステファノが静かに口を開いた。



「‥‥犬が」


「‥?」


「子犬が、怪我をしてるんだ‥」


「えっ‥?」


「もしかしたら‥お前なら治せるかもと」


「‥‥!」


「いや、でもいい‥‥忘れろ」


「‥っあの、ステファノ殿下」


「‥‥」


「‥いっ、行きます」


「‥‥!悪い、頼む‥っ」



ステファノの後についていくと、足を怪我している小さな子犬がタオルに包まれて震えていた。



「王城のお医者様は‥?」


「動物を診れる医者はいない‥父は動物が好きじゃないからな」


「‥そうなのですね」



心配そうに子犬を見つめるステファノは、どうすればいいのか分からない様子だった。


苦手なステファノの頼みでも、動物に罪はない。

ラヴィーニアはタオルで包み込むようにして子犬を抱きしめる。



「‥もう大丈夫だからね」



怪我をしている部分に意識を集中させる。

すると淡い光が子犬を包み込み、少しずつではあるが怪我が良くなっていく。



「‥っ」


「ふぅ‥」



ラヴィーニアが顔を上げるのと同時に、むくりと起き上がった子犬がラヴィーニアの頬をペロリと舐める。

ジョセフィーヌの子犬の時のことを思い出して、ラヴィーニアは柔かに微笑んだ。



「ふふ‥可愛い」


「‥‥良かった」


「ほら、ステファノ殿下も触ってみて下さい」


「‥!」


「わんちゃん、元気になりましたよ?」


「俺はいい‥!」


「‥‥?そんな事を言わずに‥はい、どうぞ」



ラヴィーニアがステファノに子犬を渡すと、ステファノは慌てた様子を見せた。

膝の上に子犬が乗ると、恐る恐る子犬に手を伸ばす。



「‥‥小さい」


「小ちゃいですね」


「こ、こんな柔らかいのに生きているのか‥!」


「‥はい」


「温かい‥」


「そうですねぇ‥」



孫を見守るお婆ちゃんの気持ちである。

まるで初めて生き物に触れたような口振りに驚いてしまう。



「こんなに可愛いのに、国王陛下は何故お嫌いなんでしょうね‥」



ラヴィーニアが言うと、ステファノは綻ばせていた顔を難しくした。



「我々、無属性は‥本当に病弱なんだ」


「‥‥!」


「俺達以外にも兄弟が居たらしいんだが、もう2人はこの世に居ない‥」


「え‥?」


「だから、動物にも触れぬようにしている‥幼い頃から厳重に」



ステファノはどこか寂しそうに言った。

自由を知っているラヴィーニアからしてみたら、とても可哀想に思う。

なかなか王族というのも窮屈で大変そうである。


ステファノは子犬を愛おしそうに撫でている。



「動物が、お好きなのですか‥?」


「‥‥好き?まぁ‥ずっと触れてみたいと思っていた」



子犬がぺろぺろとステファノを舐めると、ステファノは一瞬驚いたように肩を震わせた。


イケメンに子犬‥‥なんとも罪な組み合わせである。



「お前に‥‥お願いが、あるんだ」


「‥?」


「‥‥ラヴィーニアは犬を飼っているのだろう?」


「はい、ジョセフィーヌっていう可愛い子がいます」


「この子犬も飼ってもらえないだろうか‥」


「え‥!?」


「王城では、育てるのが難しい‥‥」



銀色の髪がサラリと揺れる。

ステファノはどこか悔しそうに唇を噛み締めていた。



「‥わ、私の一存では」


「分かっている‥!こんな事、頼める義理じゃないことも‥‥でも」



銀色の瞳がラヴィーニアと絡む。

ステファノの視線がお願いだと訴えている。



こ、これ以上言われたら‥!


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