17.行動が謎です
さっきまで熱く語っていたジューリオの熱は、どうやら下がったようだ。
彼は此方から視線を逸らして何かを考え込んでしまった。
それを見て思った。
これ以上、ジューリオと話すことはないので、そろそろ帰っても良いだろうか。
ジューリオは黙り込んだまま動かなくなってしまった。
「ジューリオ殿下……?」
「…………」
「あの……今日は美味しいカフェに連れてきて頂きありがとうございました」
「…………」
「私はこのまま、お土産を買ったらお暇させて……「待ってくださいッ!」
いきなりジューリオが引き止めるように腕を掴んだ。
その行動には首を傾げる
また"ラヴィーニアが変わってしまった"という話だろうか。
「ラヴィーニア様」
「……何でしょう?」
「すみません、私はなんて愚かな事をッ」
「???」
「こんな簡単な事にも気付けないなんて……!!」
「へ…………?」
「これは試練なのですよね!?貴女をどれだけ受け入れられるかという……!」
「試練、ですか……?」
「ッ私は、私は試されているのでしょう!?!?」
ジューリオは何故か恍惚とした表情を見せた。
何をそんなに興奮しているのか分からないが、これは否定した方がいいのだろうか。
「ジューリオ殿下……あの」
「どんな貴女でも必ず受け入れてみせますから……っ」
空気みたいだったり、怒ってみたり、悲しそうだったり……忙しい人である。
「……ラヴィーニア様!」
「は、はい……」
「もし貴女が許して下さるのなら……また私と、一緒にカフェやレストランに行きませんか?」
「……えっ?」
眼鏡に光が反射して、まったく表情は伺い知る事は出来ない。
ただ先程より真剣に此方を見つめているような気がした。
ここは散々暴言を吐かれた故に、断るべきところなのだろうか。
「お願いです……ラヴィーニア様」
そんな風にお願いされると、良心が痛んで断れない。
「……っ」
「どうか…………お願いします」
「は……っ」
「私に、チャンスを下さい!」
「…………は、はい」
「ッ、ありがとうございます!!二度とこのような事がないように気をつけますから!」
ジューリオの謎の言動の意味は良くわからなかったが、元気を取り戻したようなので「ま、いっか」と軽い気持ちで考えていた。
終わりよければ全て良しである。
そして、何故か定期的にジューリオとはお茶をする仲になった。
以前のように文句を言われる事は一度もなく、和やかな雰囲気が流れている。
それから、アルノルドとは一切顔を会わせなくなった。
何故だろうと聞いてみると、怖い笑顔でニコリと笑ったフィンにこれ以上何も聞けなくなったのだった。
そしてロンバルディ家は公爵になった。
*
今、王城の魔法講師の元に通い、光魔法を使いこなせるように指導を受けていた。
ポンコツな自分にも分かりやすく魔法を教えてくれる魔法講師達のお陰で、少しずつ魔法を上手く使いこなせるようになってきたのだ。
「おい、お前……!!」
「ーーヒィッ!!」
そんな帰り道、声を掛けてきたのは威圧感たっぷりのステファノである。
迫り来る圧力にジリジリと後退する。
「こっ、来ないでください……!」
「待って、話を……!!」
「やっ……!」
ステファノに腕を掴まれそうになり、怖くなりギュッと目を瞑り、自分の方に腕を引き寄せる。
ステファノは酷く傷付いた顔をしていた事にも気付かずに、自分の身を守るように体を震わせる。
「……っ」
「…………すまない」
彼の消え入りそうな声に、恐る恐る顔を上げた。