15.恐怖の女子会
「アルノルドもさ、出来のいい兄が居て自分に自信がないのは分かるけど、こんなに可愛い婚約者がいるのに手当たり次第……阿呆よッ!!」
(そうだったのか……)
自分に自信が無いのは蜜柑も同じだ。
アルノルドの気持ちは少しだけ分かるような気がした。
「アルちゃんも昔はあんなに泣き虫で可愛かったのに……今や女遊びする男にねぇ。感慨深いわ」
「こういう馬鹿な事ばっかり隠すのが上手くなってさぁ」
「視野がもっと広ければ別の道もあったのにね。残念だわ」
「若気の至りにしてはやり過ぎよ……当然の結果ね」
「結局悪いことしてたら最後にはバレるのよ」
「どうしてこうなるって気付かないのかしら」
「「馬鹿よねぇ~」」
さすが魔女クラスになると会話にも迫力がある。
紅茶を飲みながら、うんうんと頷いていた。
「アルノルドだって今更後悔しちゃってさ!自分の所為だってのに」
「そうなの?」
「好き過ぎてどうすれば良いか分からなかった……なんて、クソみたいな言い訳しやがるから、ボコボコにしてやったわ!」
「エヴァ……」
「息子だろうが許さないわ!不誠実な態度を反省するまでピーーーしてピーーーしてやる」
「程々にね」
「あら、ルドヴィカだってディエにピーーーーしてピーーしたじゃない」
「だってそれは、あの人がピーーーーだったから仕方なかったのよ……!」
ルドヴィカとエヴァの会話の内容が恐ろしすぎて紅茶を持つ手が震えてしまう。
この二人に囲まれて育ったのなら、ラヴィーニアの性格も納得できるような気がした。
ルドヴィカとエヴァは満足したのか、すっかり黙ってしまった此方に話を振る。
「それにしてもラヴィちゃん、凄い変化よね」
「そうそう、例えるなら女王様から、お花畑に住んでるお姫様になったって感じ」
「……そんなに違いますか?」
「違うわよ、魔力が変質するくらいだもの。根底から違うのよ」
「もう別人ね」
その言葉を誤魔化すようにヘラリと笑う。
「でも、なんかほっとけないのよね……!」
「あはは、そうね!フィンなんて笑えるほどラヴィちゃんにべったりよ!」
「で、でも……私、前の方が!」
「前のラヴィちゃんも可愛かったけど、今のラヴィちゃんも可愛いわよ」
「あっ……でも、あれね!ダメな男に引っかかるタイプ」
「わかるー!やばいタイプの男に付き纏われちゃう感じね」
「あははっ!」
「…………あはは」
その通りである。
「ラヴィーニアはステファノ殿下と婚約するんでしょう……?」
「……でもステファノ殿下は生理的に受け付けなくて」
「あら可愛いもんよ?あのくらいの時期の男ってプライドの塊だから、自分が一番かっこいいとか思ってんのよ!」
「な、なるほど……!」
「女の子に優しくするのが恥ずかしいのよ……!好きな子を虐めちゃったりとかね」
「そうそう!見ていて微笑ましいわ……けど、ラヴィちゃんへの態度は絶対に許せないけどね」
「そんなに酷かったの?」
「あり得ないわよ……うちの可愛い娘に酷い事言いやがって」
「……お母様」
「そういえばラヴィちゃん、ジューリオ殿下からお誘い受けたんでしょう?」
「えぇ……今週末カフェに」
「なかなかの変わり者って聞いたわよ」
「えっ!?」
「でも若い時は危ない男が好きじゃなかった?」
「分かるー!」
クッキーを食べながら、この先の事を考えていた。
*
「よ、よろしくおねがいします……!」
「ラヴィーニア嬢、お手を」
「……はい」
今日はジューリオと約束した日である。
王族ならではの銀色の髪と目。
大抵、属性が髪色や目に現れている事が多いらしい。
ラヴィーニアも風属性の為、綺麗なアイスグリーンの髪である。
黒髪では無いこともそうだが、ラヴィーニアの美しい顔を鏡で見る度に驚いてしまう。