表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/84

14.チョコレートは美味しいです


「とりあえず、チョコでも食べませんか?」



今まで空気だったジューリオが、突然口を開く。

皆の視線が彼に集中する。


ジューリオはギスギスした空気の中、チョコレートを口に放り込み、もぐもぐと食べている。

重たい前髪のせいで顔の表情や、目元が見えないのが気になるところだ。

そして「はい、どうぞ」と、ジューリオからチョコレートを分けて貰い……。


とりあえず、食べたのだった。



「…………むっ!!!」



口の中でチョコレートがとろとろと溶けていく。

味の説明を受けながら、ジューリオから次々に渡されるチョコを食べていた。



「ん~!」


「やっぱりチョコレートは最高ですねぇ」


「ですね~」


「「「…………」」」



先程のギスギスとした空気が嘘のように和やかな雰囲気が流れる。

二人でチョコレートを頬張りながら、暫く幸せに浸かっていた。



「美味しかったですね!では僕は忙しいので、これで失礼します」


「はい、ありがとうございます!ジューリオ殿下」


「あ、ラヴィーニア嬢……美味しいカフェがあるんですが今度ご一緒にいかがですか?」


「わぁ……是非行きたいです」


「分かりました!予約しておきますね」


「「「……」」」



そのまま席を立ち、颯爽と去っていくジューリオを見送った。

圧倒的な一人勝ちである。



「フィン、見て見て!このチョコレートがね、一番美味しいのよ?」


「どれですか?」


「この白いの!でもフィンの口に合うのは……絶対、コレね」


「ありがとうございます、姉上」


「ふふっ!どう??」


「ん……美味しいです」


「でしょう?今度はコッチも食べてみましょう!」



唖然とする二人を置いて、フィンとチョコレートを楽しんだのだった。


その後、部屋に戻って考え込んでいた。


結局、アルノルドに苛々してチョコレートを食べて帰った記憶しか無い。

ジューリオと美味しいカフェに行く約束をしたが、どうでもいい二人はどうでもいい感じに放置してしまった。


(ま、いっか……!)


ふかふかなベッドに寝転んでいると、全てがどうでもよくなってくる。

そのまま何も気にする事なく眠りについたのだった。





そしてフィンの働きにより、アルノルドとの婚約はあっさりと破棄された。


ここで初めて、乙女ゲームの筋道と全く違う道に進んでしまった事に気付いたのであった。

全力で後悔したものの、ゲームと違って時間は戻らない。


(はぁ……なんでこんな大切な事を忘れてしまったのだろう)


本来の目的も果たせずに暫く落ち込んでいた。

考えれば考える程、自分の駄目さに気落ちしてしまう。


そんな中、何故か周囲から集まる同情。

どうやらラヴィーニアが婚約破棄をして、落ち込んでいると思われているようだ。


実際はシナリオから外れてしまった事を悔いているのである。

ヒロインには大変申し訳ないが、アルノルドルートを潰してしまった。


こうなったら慰謝料は諦めて、ラヴィーニアの幸せの為に頑張るしかない、と改めて気合いを入れていた。


そんな中、ロンバルディ家にアルノルドの母親で、赤の魔女であるエヴァが泣きながら謝りにきた。

別にエヴァが悪い訳ではないので「全く気にしてないので、エヴァ様も気にしないで下さい」と言うと、エヴァは思い切り此方を抱きしめて泣き続けたのであった。


そしてルドヴィカと共に激しく嗚咽するエヴァを、逆に励ましていた。



「チッ……馬鹿息子が」



やっと落ち着いたエヴァがペッ……と毒を吐き出したのをキッカケに愚痴大会が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ